二十五
堀川は自分の領地内にて暴れる賊の類に手間どられ、大国との国境で足止めされて早3日経っていた。
それが同家臣の林と、お葉の嫁ぎ先、長野の家が仕組んだものとはまだ気づいていない。
大国はまもなく戦となると見えて、援軍を要請してきていた。
「援軍をすぐに出すべし」と返答したのは長野家と林家で、堀川は頑として時期を待つべしと動かない。
なぜなら、この戦、大国は負けるとみているからだ。
時代の流れからして、このまま過去の栄光の上にあぐらをかいていては、いずれ瓦解の時を迎えるのみである。
また堀川は、同盟国の佐渡川から、大国の不穏なうわさを聞いたところだ。
当主がすでに死に、国の現状はがらんどうだというものだ。
どこからの情報かは明かさなかったが、ここまでその噂が来ているという事は、西の強国が知らないはずがなく、この事態を見すごすはずがない。
その上での戦だとすれば、御味方しても一つのうま味もないまま、骨折り損になるだけである。
さらに言えば、その強国に 攻め滅ぼされること間違いないだろう。
堀川は登城し、援軍を出すのは上手くかわし、御味方しないですむ方法を取ってほしいと殿に進言した。
その帰り、早馬で領地内でのもめ事の知らせをうけ、いそぎ国境へと走ったのだ。
屋敷内に残した手勢は少なく、だからやすやすと長野につけ入られた。
堀川の長男広次は城詰めであり、難を逃れていた。
堀川同様、まだこのことは知らない。
なぜなら、屋敷から知らせを出せる「生きている」者がいないからだ。
ーーー
屋敷の納戸から、鈴の子猫がそっと出てきて鳴いた。
餌はまだかと、鳴いていた。
暫くは、猫本来の狩りの習性を思い出し、床下のネズミでも追いかけるしか、餌にありつけないだろう。
子猫は、まだ温かさの残る鈴の床に、暫く丸くなって寝ることにした。




