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ある転生者の憂鬱

作者: stenn

 俺はどうやら転生したらしい。なんというか前世の記憶がある。気持ち悪がられるかもしれんがそうなのだから仕方ない。


 前世でこんなこと言えば病院に隔離されるか某オカルト誌に出るかだろう。いずれにしても変人の粋を出ない。


 まあ、ここは前いたところではないし……その上気付いた時には俺ボッチだったし。


………。


 どういう事だよ!!なぜ捨てられてんだおれ!なぜ生まれ変わってハードモードをガキの頃から味わなければなんないんだよ!!



 うおおおお!


 何処かの貴族拾ってくれ!



 転生したら大概『いいとこ』の子どもで、すげぇチート機能があってハーレムとかだろ!



 女にモテモテ、どこ行った!?



 なんだよ!



 俺はなんでモンスターにモテモテじゃんかよ!



 理不尽じゃんかよ。


 死ね。爆ぜろ世界。



『まあ、まあ。ご主人。そんなこと言わずに。ボッチったって、仲間がたくさんいらっしゃるじやないてすか』



 そう言ったのは俺の横にいる透明てプニプニしたものだった。小さい黒い点が目らしいがーーよく分からない。だが、可愛いのがムカつく。



 一般的に『モンスター(弱い)』と呼ばれるそれを俺は睨みつけると怯えてたように形を変えた。



「いや、俺は人間の友達が欲しいんだよ!! 何が悲しくてお前らモンスターに好かれなきゃならんのだ!!」


 チート機能?なら一応はある。というか、一種の嫌がらせか。と思うが。


 モンスターとしか喋れないのだ。独りでい過ぎたためかコミ症を患い、殆どモンスターととか喋ってないため人の言葉がほとんど分からない。



 お陰で人間からは魔王扱い。ついにこの間討伐帯が組まれたらしいが……。



 なんども言う。俺は人間だ!



 しかも普通の人間より弱いぞ? コンチクショー!




 あ、あ。涙が出てきた。



『大丈夫ですって、ご主人。きっと人間も解ってくれます。現に主人に会いたいって大軍でここに押しかけてますし』


「いや、それ倒しに来てんだろうがよ? ーー大丈夫なのか? モスの旦那もりりィも。ボロボロだって聞いたぞ?」


 モスは『モスキート』という名前を持つ竜。蚊の様な名前だが、気のいいオッサンで俺の世話を子供の頃からしてくれている。なので今回の人間たちによる進行も『いっちょ捻ってくるわ!』と言って出かけていったが……そんなことすれば益々人間から俺が孤立するだけなんだが……。血の気の多い竜である。



 因みにりりィはそのまんまの名前。一見可愛いがサイクロプスの少女だ……いろいろデカくて可愛い(棒)だ。




 二人共上位のモンスターでかなり強いが、二人がぼろぼろって、人間本気じゃねぇか!



 俺が何したって言うんだよお!!



 北の大地で静かに(引き籠もって)暮らしているだけじゃねえか!


 寒いよ。出たいよ。南下してーよ!


 けど、そんなこと言えば一族郎党引き連れて全面戦争起こしかねないよな。モスとりりィは。



 俺は肩を落とす。



『はいつ! 面接をしなければ合わせられませんから☆』



 スライムーー『ポンタ』とは子供の頃から仲が良いがそうとう思考がずれている。一人ぼっちの俺をモンスター共に紹介しまくったのが奴だ。


 で、何故かモンスターに好かれまくったこの結果。



 ちッ!!


 頑張って作ってもらった小さな家ーー俺んちなので、当然俺もこき使われたが。暖炉の前に二人並んで俺達は座っている。まあ、ポンタは寒さを感じないらしいが。


 ため息ひとつ付いたところでカタカタと北風にきしむ扉にノックが響いた。


『あ。面接に受かった方がいるようですね』


 ぴょんとポンタが跳ね、俺の頭に乗ると扉を開けるように促した。


「……面接ね」


 嫌な予感しかしないんだが。扉を開くとそこはもう吹雪。思わず閉めそうだが、見慣れたオッサンでの姿に息をつく。うん。人間ではありえないほどの薄着と髪が炎って……。人型を取るならまともにと思うがーーとにかくモスの旦那寺は白い歯を見せて軽く手を上げた。


 閉めたいんだが。そう言う前にもポンタが嬉し創に口を開く。


『モス様!! ご主人の友達になるような人は居ましたか?』


「当然だ。ガゼル! 連れてきてやったぞ。ありがたく思えヨ? 人間の友達だ。俺の見る限り骨のあるやつだぞ!」


 片手に持っていたのは獲物ーーいや。人間らしい。麻袋を頭から被せられて入るそれを乱暴に投げると鈍い音ともに小さなうめき声が聞こえた。


「いや、骨ってーーなんのだよ?」


「話せなくても殴り合えば通じる」


 意味不明な理論を言うとモスの旦那は一気にその姿を変える。山の様な巨体。赤い身体派白い雪に浮き立った。


 その翼は雪を吹き飛ばすーーというか、俺んちまで吹き飛ばすのやメロ。マジやめろ。


 抗議が通じたのかそっと羽ばたくと闇色の空に消えていく。俺んち無事。良かった。


 扉を閉めると俺は取り敢えず麻袋を解こうとしたのだが、いきなり現れるのは銀の刀身。それが麻袋を切り裂いていった。


「……」


 うん。少しはきたいしたんだよ。俺だって。ここに来た以上は。美少女と知り合いになれるかも。


 で。


 男かよ!! しかもイケメン。女にモテモテタイプだよなあ。けっ!


 金髪の碧眼。どこの王子だよ。なんのテンプレだよ!! ついでに俺はモンスターからイケメンと言われるぞ?


 虚しいわ!


 そんなことを考えているとポンタが奴の頭に飛び乗った。いや、まずいだろ?仮にも人間だぞ? お前モンスターの中で最弱だってわかってっか?


 なに、その強気。前世、飼ってたチワワに似てる気がするぞ。あ、あれもポンタだったっけか?


 わざとではないけどな。偶然だ。


「ポンタ」


『大丈夫です〜お話聞きましょう?』


 お話って。お前。俺は人間と話せんのだが。取り敢えずお近づきの印に……人間って何が好きなんだ? いや、俺も人間だけど。



 というか、剣を向けるのやめて欲しいのだが。睨むのもやめて。俺案外気が弱いんだよ?



「……魔王か?」




 お、知ってるぞ。その単語。って、喜んでる場合じゃねぇか?




 どうしようか。腕を組んで考えあぐねているとどうやら『余裕』と汲み取ったみたいだ。




 目の前を剣が通り過ぎて俺は悲鳴を上げた。




「に、にゃにすんだよ!!」



 ドクドク。圧迫するように心臓が鳴る。ペタリ座り込む俺の頭にポンタが移動した。



『うーん。これが人間の友愛ですか?』


 何言ってやがる。この野郎。殺されかけたのが分からんのか? 俺はポンタを引っ掴むと懐に入れた。


 とにかくだ。ポンタが一番最初に始末されそうだ。



「ーーか?」


「あ?」


 言っていることがわからん。あ、あ。もう。どーすりゃいいんだよ!!


 俺はこのまま魔王として死んでいくのかよ?


 来世はイージーモード希望。断固きぼう!!


 そんなことを考えてたんだが。男は目をまん丸くして床に座り込んだ。なんなんだよ?


 ピョンとポンタが懐から顔? を出した。


『ご主人様。お話にならないのですか?』


「話すも何も、俺こいつの言っていること分からないしーー」


『では昔、ウイッチのリカちゃんに調整してもらったアレが有るでしょう? それ飲ませては?』


 おお、リカちゃん。忘れてた。魔女のバーー言ったら呪いをかけてあると言われたから言わんがーーだ。リカちゃんが特殊なお茶を調合してくれたんだった。


 俺は取り敢えず。お茶を淹れると男に渡した。


 いきなりズバッと言うのはなしだぞ?


「ど、どうだ? う、旨いか?」


 喉が動いたのを確認すると俺は挙動不審気味に尋ねてみる。男は不思議そうに俺を見たあとで静かに口を開いた。


「北の魔王よ。俺は東の国のイバキだ」


 おお、通じる。理解るぞ、感動だ!! うんうん。東の国のね。知らんが。ついでに俺は世界情勢なんてどうでもいい。ほとんど知らない。


 勉強嫌いだしな。


「ま、魔王じゃねえーし。ガゼルだ。人間だぞ?」


 言うとイバキは笑う。


「ああ。そう思ったよ、さっき。でも、君の為に竜と鬼が戦っているのは事実だろ? 僕達は壊滅仕掛けているよ」


 俺に言わせれば自業自得のような気がするが。勝手に危険認定しやがってこら。俺たちというか、モンスターは基本北で静かにしてるのに。食べ物だって自給自足だぞ? 基本は。特殊な奴らを除いてだけどな。夢喰とか、エロイヤツとか。一年に一回の血の補充とか。たまに肉(人間の)が喰いたいなんて言う奴もいるけどな!


 止はしない。俺が標的になるから。


 自分の命は惜しいだろ?


「ま、僕達が悪いんだけどね。君達を出しに使ってるにしか過ぎないから」


『ご主人と仲良くなってくれるの?』


「いいね、それ、じゃぁ。僕と一緒に世界を支配しよう?」


「ん?」



 なんでそんなことになった? いい笑顔で言うことじゃなくねぇか?


 んで持ってこいつ、本気か?



「いや、俺はここでーー」



 面倒くさいしそんな事には関わりたくなんて無え。死ぬのやだし。これ以上ハードなことを増やしたくはねぇよ。



「あはは。僕、勇者として旅立ったけどね。僕、強い方につきたいんだよね。やるからには世界征服で」



『世界の皆さんと仲良くなれるのですね。良かったですね。ご主人さま!』



 だからどこをどうしたらそうなるのか知りたいんだが。世界平和みたいになってるが真逆だからな。言ってる事。何気に人間としてどうかなみたいな言動だし。


 おまえ、勇者として旅立ったって言ってなかったっけ?


「……断る」


「ええ、やってくれるんですね」


「え?」


 ちょ?


『あした皆に話しますね。楽しみです。ふふふ』


 あ? まてまてまて。


 そんなこと言ったら嬉々として乗るだろうが! 皆が。あいつ等人間嫌いだし血の気だけは多いし。まさかとは思うが俺の名のもとに旗揚げしそうで怖い。『魔王軍』とか。


 ………。何度も言うがそんな人生いらん。が、その首につきつけてる切っ先は何だろうな。イバキ。お前勇者だろ?  



 俺はただの人間だぞ☆


 やるならお前たけで……。



「やりますよね」


 脅しだ。それでいいのか? むしろお前が魔王になれよ!


「……はい」



 押し付けられる剣に俺はそう言うことしかできなかった。




 この後彼らはは全世界を掌握し、歴史上『人類最大の敵』といわれる事になる。歴史書には冷徹の魔王とか言われているみたいだが魔王を知っている者に聞くと生涯城の奥に引き籠もって出てくることはなく、自分の世界に浸ってはブツブツ言っていたとーー。

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