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第六話

 外は本当に雨が降り始めていた。まるで俺の心を写しているかの様に……時刻は朝の10時くらい。それなのに外は夕方の様に薄暗くなっていた。

 俺の心も外も晴れる事は無く時間は流れて行く。

 昼食時になっても俺のノドを飯が通る事は無く、ただ適当に時間を過ごし、放課後になった。

「あ、本を屋上に捨てたままだ……でも雨で……えぇ〜い、放置ってのも可哀想だよな」

 俺が屋上に行って最初に目についたのは本では無く、雨に打たれてボトボトになっていた夕紀の姿だった。

「夕紀っ!?」

「えへへ、来るの遅いよぉ……この本……大切にしてたよね? 雨に濡れたらダメだから……濡れない様に服の中に入れてたんだよ……」

「バカ……校舎に入ったら良いじゃないか……」

「ダメだよ……お兄ちゃんは夕紀の事が嫌いでしょ? 夕紀の事が大嫌いなお兄ちゃんがいる校舎なんて……怖くて入れないよ……」

「バカ野郎……」

「野郎じゃなくて女の子だよ……でも、最後にお兄ちゃんの大切な物を守ってあげられて……満足かなぁ?」

「最後って……何言ってんだよ……早く校舎に入れよ……」

 俺は夕紀を引っ張って校舎に入れようとしたが、夕紀に手を払われた。

「ヤメてっ! 優しくしないでよ……もう、良いの……お兄ちゃんにお情けなんかで優しくされちゃったら……夕紀はますますお兄ちゃんの事を好きになっちゃうから……叶わない恋なんて……つらいだけ……」

「冗談言ってないで早く校舎に入れって……その熱だと死んじまうぞっ!」

「死んだって良いよ……」

「何……言ってやがる」

「夕紀はもう、死んだって良いの……」

「冗談言うなよ……死んでも良いなんて言うのはやめろ」

「どうして? お兄ちゃんにそんな事を言う資格があるのかなぁ? 夕紀は今まで精一杯生きて来た……辛い事も悲しい事も苦しい事も……お兄ちゃんに会えると信じたら全部吹っ飛んでた……それがいつからか恋に変わって……お兄ちゃんだけが夕紀の生きる理由になっていたのに……その生きる希望を奪ったのはお兄ちゃん本人でしょ? そのお兄ちゃんが夕紀に生きろって言えるの?」

「俺は……お前の事を嫌いになんて……」

「ウソ……優しい言葉なんてかけないで……この偽善者……」

「あぁ……別に偽善で結構だ……俺は今、顔を真っ赤にして明らかに熱が出てそうなお前を助けてやりたいんだよ。偽善とか、情けとかどうだって良いんだ」

「夕紀が望んでるのは偽善でも情けでも無い……現実なの。リアルを望んでいるの……現実にお兄ちゃんに愛されたい……好きでいて欲しい……そう思っていたのにっ!」

「夕紀……」

「ほら、この本を持って帰ってよ……帰ってばっ! 夕紀はもう死にたいんだからっ! もうこんな残酷な現実大嫌いっ!」

「嫌だ……」

「え?」

「お前が雨に打たれ続けるなら俺もお前と一緒に雨に打たれ続ける……お前が死ぬって言うんなら……俺も一緒に連れていけよっ!」

「何……言ってるの? そっか、また冗談でしょ? お兄ちゃんがそんな強い精神な訳無いもんね?」

「証拠をお前に見せてやる……」

 俺は工具を取り出して屋上のドアを溶接した。

「これで、ここから出る事は出来ないな……さて、一緒に死ぬか? ほら、どうやって死ぬ? このまま雨に打たれて熱で死ぬか? 飛び降りるって言う手もありだよな?」

「何やってんの? バカじゃないのっ!? 本当に死んじゃうよ?」

「死にたいんだろ? 天国に行ったら今度は二人仲良く暮らそうや……こんな現実にしちゃってごめん……全部俺の所為だな」

「お兄ちゃんっ! 頭おかしくなったの? 本当に死ぬんだよ、判ってるの?」

「判ってるさ……お前が死ぬって言うなら俺もついていく……こんな事くらいでしかお前への愛情を示す方法が考え付かなかったんだよ……バカな兄ちゃんで悪かったな……」

「本当は死にたく無いよ……お兄ちゃんが夕紀の事を好きなら死にたくなんかないよぉ……」

「もう遅いな……」

「誰かドアを開けてよっ! 死にたく無いよ、夕紀の大好きなお兄ちゃんと一緒に生きたいよぉっ! 雨、やんでよぉっ!」

 夕紀は泣いているのか、ただ雨で顔が濡れているだけなのか……

「お兄ちゃん、何とかしてよっ!」

「いや……俺も夕紀と一緒に死ぬ気だったから何も溶接を切り裂く機械は用意してないんだよな……ごめん、まぁ天国で二人仲良く暮らそうや……」

「嫌だっ! 死にたくないよぉー! 誰かぁっ!」

「もう無駄だって……」

 最初の方はずっとドアを叩き続けた夕紀だったが、次第にドアを叩くのをやめた。

「もう良い……疲れた……」

「そうか……死ぬ覚悟できた?」

「うん……そうだ、最後くらい抱きついてても良い……よね?」

「そうだな……」

 夕紀の顔が赤くなった。恥ずかしくて赤いのか、雨で寒くて赤くなっているのかは俺には判らなかった。

さて、とうとう作者の頭がバグり始めた頃です。恋愛小説で死ぬとかそんな展開にして良いのかなと……

まぁ、そう言う展開もアリじゃ無いかと言う事でこんなお話になりました。

 作者としては、透弥くんの『お前が死ぬって言うんなら……俺も一緒に連れて行けよっ』と言うセリフに惚れそうになってしまいましたね。普段は普通なのに言う時は決めちゃうんですねぇ〜

 この作品は実は私の第一作目なのです。

 では、次回も皆様の目に作品が触れます事を祈りつつ、見ていただいた読者の方に感謝の意を述べつつ次回作に取り組みたいと思います。

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