二話
「つまり……お前だよ」
俺がそう言うと夕紀は先程より顔を赤く染めた。
「え、えっと……本気? なの?」
「冗談で言うか? わざわざ呼び出して俺が冗談でお前に告白すると思うか?」
「えと……な、何で夕紀なんかを好きになったのかな?」
「判んねぇ……」
「へ?」
「判らないけど俺はお前が好きなんだ……いつからかは覚えてねぇけど……いつからか俺はお前が好きになっちまった……これだけじゃ……ダメか?」
「強引すぎるよ……」
「悪い……」
「謝らないでよ……その、き……兄妹として……とかは無しだよ? 今更無しだよ?」
「当たり前だ……」
「ちゃんと言って……夕紀が納得する様な言い方で……」
「えぇっ! そ、そんなの判らねぇよ……」
「良いからっ」
強引なのはどっちだよ……と思いながら、俺は今言える範囲で考えた。
「俺は……兄妹としてでなく……一人の女の子として夕紀が好きだ……これは俺の本気の気持ちだ……説明とか苦手だから詳しい事は却下。取り合えず、俺は夕紀に妹じゃ無くて、恋人になって欲しいんだ」
「…………嬉しい」
夕紀がボソリと呟いた。
「え?」
「嬉しいよ……お兄ちゃんが夕紀の事を……」
「そ、そうか?」
「機械以外好きじゃ無いのかと思ってた……」
「あのなぁ……」
「でも……まさかこんな日が来るなんて……」
「俺も嬉しいよ……ちゃんと言える日が来るなんてさ……」
「でも、ちょっとだけ酷いかな……こうゆー事を言われる前はさぁ……ちゃんと心の準備って物が必要なんだよぉ? それなのに……」
「ごめん、でも……一秒でも早く夕紀を俺の物にしたかったんだ……」
「夕紀は物扱いなの?」
「違う違う、俺だけの女の子って意味だ。物と言うよりは者だな……」
文章にしないと意味が伝わりにくい内容の会話である。言葉は文字にしてこそ意味を発する……昔の誰かが言ってたような……
「ゆぅ〜きっ」
「きゃっ! 急に抱きつかないでよぉ〜」
俺は夕紀をギュッと抱きしめた。ギュッとギュッと抱き合えば〜♪
何だか夕紀にかなりの殺意のこもった視線を感じる……俺の気の所為なのか、あるいは一体誰なのだろうか……
俺は今、中庭にいる。中庭の周囲をグルりと見渡しても誰も見当たらない。やはり俺の見当違いなのだろうか……そうだったら嬉しい。
「あぁ〜透弥先輩に抱きついちゃってぇ〜」
「いやいや、あれは透弥の方から抱きついてるね」
「良いのっ!?」
「いやぁ……良いも何も透弥は俺の友達ってだけだから……俺、BLに興味ねぇし……」
「でもっ!」
「でもじゃねぇよ……透弥が夕紀ちゃんと付き合ったってなら別に良いじゃん。俺が手ほどきした様な物だしさぁ〜」
「真夜先輩はそれで良いんですかっ?」
「だ〜から〜別に俺BLじゃ無いから……」
「そうじゃ無くてぇ〜っ! お友達をあんなぶりっ子娘なんかに取られて良いんですかっ!」
「鼎……少し落ち着け……別に透弥が誰と付き合おうが関係無いだろぅ? それとも鼎って透弥の事が好きなのか?」
「わ、私は真夜先輩が……」
「ありがとさん。なら黙って見とけや……良かったなぁ透弥……」
「むぅ〜私は許せませんわ……」
「さっきから何を怒ってるんだよ……」
「私の大好きな透弥先輩を……」
「やっぱり透弥が好きなの?」
「好きにも色々種類があるんですっ!」
「ふぅ〜ん……」
「絶対に許さない……」
「邪魔だけはするんじゃ無いぞぉ〜」
「いいえ、絶対にあの二人のカップルを継続させる訳には……」
「嫉妬してんの?」
「もち嫉妬ですっ!」
「あらら……一体俺と透弥のどっちが好きなのやら……」
「両方っ!」
「ま、まぁ……そこそこにしとけや……ふぅ、屋上も寒いな……その双眼鏡片付けとけよぉ〜」
「え、私がするのっ!? 何でぇ〜」
「俺は俺でする事があるの」
「私は嫌だっ!」
「判ったな鼎……」
「わ、判った……」
何故か判らないが鼎はいつも真夜に睨まれると逆らえない。別に怖いとかそう言う訳じゃないのに……何だかいう事を聞かないといけない様な気分になってしまうのだった……
「もうっ! 何で私がこんな雑用をっ……名倉夕紀……絶対に許さない」
っとまぁこんな発言を俺も夕紀も気付くはずが無く、俺は適当にすごすハメになった。が、俺と夕紀の知らない所で(俺にいたっては、鼎という少女の存在すら知らない訳で)鼎による俺を取り返す計画が進められていた。
俺は真夜に一時間くらいの時間を頼むと言ったのに、話はすぐに終わって昼休みが終わる前に話が終わった。時間も余っているので、俺は夕紀の教室で残りの時間を過ごす事にしたのだ。
「お兄ちゃん、今日ねお昼ごはん食べた?」
「あ、そう言えば食ってねぇなぁ……夕紀に告白する事ばっか考えて飯の事を考えて無かったよ」
「もう……食欲より夕紀の方が大事なのぉ?」
「そりゃあ……まぁ好きな人なんだからさ……当たり前だろぅ?」
「ちょっと嬉しい……かな?」
「ちょっとだけ?」
「あ、もっとっもっとだよっ! これくらい。あ、もっとこれくらぁ〜い」
夕紀が手を使ってジェスチャーをした。周りの人間の視線が凍りついているのが少し鈍感な俺でも理解できた。
「あ……あぅあぅ……」
「大丈夫だから、泣くのだけは勘弁してくれよ」
俺が夕紀の頭を撫でてやると夕紀は泣く寸前で止まり、すっげぇ可愛い笑顔を俺に見せてくれた。
その様子を面白く無い様な顔で眺めていたのは中森鼎であった。鼎は教室のドアを勢い良く開けると、こう言い放った。
「名倉夕紀っ! ちょっと来てっ」
「あっ鼎ちゃぁ〜ん。夕紀に何の用かなぁ?」
「うぅ……眩しい。騙されちゃダメ……騙されちゃダメ……騙されちゃダメ……この女はこの笑顔で透弥先輩を騙したんだから……」
「何の用なのか言ってくれないと判らないよぉ〜夕紀に何の御用なのぉ?」
「ちょっと話があるからついてきてっ!」
「え、夕紀にお話ぃ? 良いよぉ鼎ちゃんのお話って何かなぁ?」
「大事な……大事なお話」
「良いよぉ〜 お兄ちゃん、待っててねぇ〜」
いやぁ……待っててねと言われてもだな、ここは俺のクラスじゃ無いわけなので、すごく気まずい訳なのである。仕方無いので俺は夕紀の後をこっそりついて行く事にした。
「鼎ちゃん、お話って何かなぁ?」
「単刀直入に言うと……透弥先輩と別れて」
「えっ!?」
俺は衝撃的な事を聞いた。俺が……夕紀と別れる……何故、何故俺がそんな事をしなければならないんだ……
このお話では超嫉妬娘の鼎ちゃんを登場させてみました。この子は本当は夕紀ちゃんラヴです。女の子なのに夕紀ちゃん大好きです。もっとコレをメインに書きたい感じもありますが基本的にメインは名倉透弥、名倉夕紀、機械さん(後に名前がつく)がメインなのでそれはまたの機会にでも書こうかなと。
さて、最後になりましたがこの小説を少しでも読んでいただいた読者の方々には深い感謝の意を送らせていただきます。また次回に後書きが皆様の目に触れる事を祈りながら次回作を投稿します。