一話
「オーバードライブとは何かを述べよ」
「はい。数千年前に起きた、ある兵器の暴走によって起きた大爆発の事。その後数百年に渡って起きた各地での抗争の総称でもある。語源はそのオーバードライブを引き起こした兵器の名前から来ている」
「正解だ。名倉は相変わらず優秀だな」
「俺なんて……」
「あぁ……名倉の家は優秀だからな……」
「先生、オーバードライブって本当に起きた事なのでしょうか?」
「うむ、それは専門家の中でも大規模な虐殺を伏せる為だとか色々な説があるのだが……過去に行ってみないと判らないな」
「そうですか……」
「オーバードライブに興味があるのか? あれに関わってもロクな事が無いぞ。あれはただの殺戮兵器なのだからな」
「そうですか……」
俺は会話をやめて席に座った。
オーバードライブ通称ODか……本当に半径1キロを吹き飛ばした兵器が存在するのだろうか……現代人には信じられた物じゃ無いな……
「えぇ〜次の問題は……ODが暴走した後、何百年続いた戦争を何と言うか。これは……佐藤、お前が答えろ」
「それは1000年戦争ですね。本当は千年もかかっていませんが、ほとんど千年に近かったので、その名前がついた」
「正解だ」
俺はオーバードライブについて知りたかった。もし、本当にオーバードライブがあるなら、それを弄ってみたかったのだ。
チャイムが鳴って俺は中庭に出てみる。
「はぁ……オーバードライブか……俺の目の前に現れないかなぁ……」
「お兄ちゃん、こんな所にいたの?」
「あぁ……夕紀か」
「何を考えてたの? どうせまたオーバードライブの事でしょう? あんな物存在しなかったんだってぇ〜本当に存在したらまだ、クレーターがどこかに残ってるはずでしょぉ?」
「あるかも知れないだろ。クレーターが」
「そんな半径一キロだよ? 普通に地球衛星が見つけてるに決まってるでしょぉ〜それなのにそんな事も言われないって事は……」
「やっぱり無いのかねぇ……」
「いる訳無いでしょぉ〜」
「お前だって機械好きだろぉ? いたら良いとか思わない?」
俺はベンチに座りながら空を眺めてみた。
「もっと他に良い趣味見つけなよぉ〜」
「趣味ねぇ……たとえば?」
「その……高校生なんだからさ……好きな女の子とか……」
「好きな人……ねぇ」
「そ、好きな人とかいないの?」
「好きな人……いるよ」
「告白とか……したの?」
「告白ねぇ……相手が俺の事を好きかどうか判らんのにしても傷つくだけだからなぁ……やってない」
「それって夕紀の友達だったりする? 聞いてあげようか?」
「余計なお世話だっ」
俺は夕紀の額にデコピンをかました。夕紀が額を押さえてうずくまるのを見て俺は笑った。
「ははは……面白いな」
「うぅ……せっかく親切に……」
「ただの好奇心だろうが……」
「バレたか」
「何年の付き合いやってると思ってるんだよ……もう10年はいるだろぅ? それくらい判るっつーの」
「10年かぁ……」
「長いなぁ……こんなけ長いと……やっぱ壊したく無いよなぁ」
「壊す? 何を壊すの?」
「お前には関係ねぇよ」
「あぁ〜隠し事ぉ?」
「そ、隠し事だ」
「むぅ〜」
「そうだ、俺の好きな人の事を聞いてくれるって言ってくれてありがとよ」
「どういたしまして。感謝してるならお礼として夕紀に教えてくれたって良いんじゃ無いかなぁ?」
「お前だけには絶対に言わねぇよ」
「あぁ〜意地悪ぅ〜」
「悪いな。俺の問題だから俺が自分だけで解決したいんだ」
「ふぅ〜ん。じゃあ夕紀の出る幕は無いね。でも……もし辛くなったら相談してね? 一人じゃ解決しない事でもさ、人に相談すると解決できるって事もあるし……」
「了解」
「でも、お兄ちゃんくらいの人だったら誰に告白しても上手く行くと思うんだけどなぁ……」
「じゃあさ……お前がもしされたらどうするよ?」
「何を?」
「俺に告白」
「冗談は受け付けないタイプだから」
「そっか……じゃあな」
俺がそう言うと夕紀は『じゃあね、オーバードライブの事ばっかり考えてたらダメだよ』と言い残して去って行った。
「夕紀に相談したら解決カモ……か。そりゃあ夕紀に相談したら解決するだろうよ……」
「よっ!」
「だぁっ! お前は一体どこから現れるんだっ!?」
俺の一番の親友である中森真夜が俺の目の前に急に現れた。
「お前はいっつも忍者みたいな登場しか出来ないのか?」
「はっはっは、こんな文明に侵された時代だからこそ昔の心と言う物は必要なのだよ。忍者とか侍とかだなぁ……」
「お前はどこぞやのエセ外国人か……」
「で、さっきの透弥の妹との会話だけど……お前の好きな人って誰なの?」
「夕紀にも言わなかったんだ……お前に言うはずが無いだろぅ?」
「お前の好きな人ってさぁ……夕紀ちゃんだったりする?」
「なっ! 何をバカな事を……俺が自分の妹を好きになったりするはずなんて……無いだろう」
「でもさぁ〜お前が夕紀ちゃんに隠し事をするなんて珍しいじゃん? それってさぁ……好きな人が夕紀ちゃんにバレたくないって事だよね? =夕紀ちゃんに言ったら困る理由があるって訳だろ?」
「……お前は将来探偵にでもなりやがれ……」
「やっぱりなんだぁ〜俺が夕紀ちゃんに聞いてやろうか?」
「結構だ……アイツは好きって言うに決まっている……兄貴としてな」
「ほぅ……兄貴として好きなのは判っているのだが、男として好きなのかが判らないから困っていると? お前らしくも無い……」
「何っ?」
「お前は本当に名倉透弥か……? いや、今日のお前は偽者だな」
「何を言ってやがる……」
コイツは時々頭がおかしくなりやがる。今回もその類の物なのだろうか。
「これは余談だが……俺の知っている名倉透弥と言う男は……結果などにこだわらずに、まずは自分の信念に基づいて行動する単純野郎だったはずだ……俺の目の前にいる男は結果にこだわっている男だな……」
「お前……励ましてくれてるのか?」
「さぁな……俺はあくまで余談の話をしただけだ……まぁ親友としては『頑張れよ』と言うしかあるまいな」
「サンキュー……そうだな。何か俺らしくも無かったな……」
「やっと俺の知っている名倉透弥になって来たじゃ無いか……」
「ありがとよ」
「時間はどれくらい必要だ? 指定された時間くらいなら教師をごまかす事も出来るが……」
「昼休み終了から一時間……いけるか?」
「俺を誰だと思っている? 余裕だな」
「そうか……なら頼む」
「ふふふ……頑張れよ透弥……」
俺は真夜に言われた事を思い出した。そうだ、俺はいつも結果なんて関係無しに突っ走って来た。だが、今の俺は夕紀との関係の継続にこだわりすぎた……ったく俺らしくもねぇ……
俺はダッシュで夕紀の元にまで向かって行った。
「夕紀〜」
「あ、お兄ちゃん。わざわざ夕紀に会いに来たのぉ? ってそんな訳無いよねぇ〜何か用かなぁ?」
「いや……少し夕紀と話がしたいなぁ〜と思ってさ」
「何の話……? あ、さっきの相談かなぁ?」
「良いから来てくれ」
「あ、そっか。ここじゃ話辛いよね?」
俺は夕紀の手を掴むと夕紀をひっぱって誰もいない、元々俺がいた中庭まで移動した。真夜が潜んでいる可能性はあるが、それを言い出したら真夜のいない可能性のある場所なんて地球上で存在しなくなるのでカットさせてもらおう。
「俺の好きな人って誰か判る?」
「判る訳無いよぉ〜クイズは苦手だよぉ〜? ヒントヒント」
「ヒント……か。俺と趣味が一緒……」
「お兄ちゃんの趣味ぃ? 機械弄りかなぁ……」
そう言った瞬間に夕紀の顔が真っ赤になる。どうやら理解した様だ。
「判る?」
「え、えっと……だ、誰の事だかさっぱり……」
「この学校の一年生なんだ……」
夕紀の顔がどんどん真っ赤になっていく。そして俺はついに答えを言う事にした。
「つまり……お前だよ……」
取りあえず、第一話完成です。一気に最終話まで書いて投稿したので、これを皆様が見る頃にはすでに最終話が完成している訳でして、まぁロボットが好きでオーバードライブと言う『大爆発』と言う意味の単語名をつけてロボットを命名したのですが、大した設定じゃ無く一回きりの捨て名前だったなぁ〜と後悔しております。
この後悔を無駄にしない為に出来たのが機械さん。とっても可愛いのです。もう少ししたら出てくるのでお待ち下さい。
以上、この小説を見てくださった全ての読者様に名倉透弥より感謝の意をささげます。これからもよろしくお願いします。