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江角千穂の試験簿

この中に1人、面接官がいる!

作者: 山本正純

プロフィール

江角千穂

血液型 B型


今のところ明かせるのはここまで。では本編スタート。

八月中旬。江角千穂は都内のとある喫茶店に向かっていた。ある就職試験を受験するために。彼女は鞄の中から一次審査通過のお知らせの手紙を取り出す。因みに一次審査は書類審査だった。

『一次審査通過おめでとうございます。早速ですが二次審査のお知らせをいたします。二次審査は面接試験です。試験会場は後ほど連絡いたします。携帯電話を忘れずに携帯してください。携帯しなければ失格とします。退屈な天使たち事務局より』

 

そして面接試験の会場は都内にある某喫茶店だという趣旨のメールが届いた。別に喫茶店で面接試験をすることはおかしくない。ある企業は面接試験の会場として喫茶店を利用するという話を聞いたことがある。

 

 江角千穂は喫茶店の入り口の前で深呼吸をする。退屈な天使たちの就職試験は合格率1%の最難関試験で裏社会では有名なのだ。書類審査の時点で百人以上の就職希望者が落ちるらしい。

 彼女が喫茶店のドアを開けようとすると突然携帯電話が鳴った。携帯電話を開くとメールが届いていた。

『心の準備はいかかでしょうか。では二次審査の課題を発表します。この喫茶店の中に一人だけ面接官がいます。その人を推理してください。特定方法はお任せします。ではお入りください』 

 何という変化球だと江角は思った。そして江角は喫茶店に足を踏み入れる。

 

 彼女は辺りを見渡した。喫茶店の中は三人の男女しかいない。ここは席が十席しかない狭い喫茶店だ。どうやらクーラーが壊れているらしい。

 江角は観察力を駆使して誰が面接官なのかを特定する。一人目は一番奥のテーブル席に座っているアフロでアロハシャツを着た男。クーラーが壊れているからなのか彼は汗を大量に掻いている。二人目はカウンター席に座っている黒いスーツを着た眼鏡の男。彼はこの暑い中熱いコーヒーを飲んでいる。三人目の手前のテーブル席に座っている女を見た江角は顔つきを変えた。その女は江角の顔に瓜二つだったのだ。自分に双子の姉なんているはずがない。もしかしたら生き別れの双子の姉なのかもしれない。江角千穂はこのように考えた。


 一通り容疑者の顔を見た江角は推理を始める。

(一番怪しいのは眼鏡の男。彼は面接にふさわしい服装をしている。だけどこれは退屈な天使たちの試験。彼らがこんな簡単な答えを用意するはずがない。よって彼は白。残る容疑者はアロハシャツの男と生き別れの双子の姉らしき女の二人。二者択一か)

 

 考え込むと後ろからウエイターの男が声を掛けた。

「お客様」

「すみません。人を待っています」


 差し障りのない答えをウエイターに伝えると江角はウエイターの顔を見た。彼は汗をかいていない。江角は去ろうとするウエイターの右腕を掴んだ。

「面接官はあなた。違いますか」


 ウエイターは慌てる。

「何ですか。だいたい証拠はないでしょう」

「面接官はあなたしかいない。この喫茶店のクーラーは壊れている。この場合室温は高くなりあのアロハシャツの男のように大量に汗を掻くのが自然。よって彼は白。マスターと話している眼鏡の男も違う。彼らがここまで分かりやすい面接官を用意するはずがない。残ったのは私の生き別れの双子の姉らしき女のみ。彼女はこの室温の高い喫茶店の中でも汗を掻いていないから彼女が面接官だと思った」


 ウエイターは聞き返す。

「それなら生き別れの双子の姉らしき女が面接官でしょう」

江角は首を横に振る。

「しかしあなたも怪しいと思いました。眼鏡の男はコーヒーを飲んでいるということはウエイターであるあなたが熱いコーヒーを運んだのではないのか。このように考えるとあなたが変装をしているのではないのかという結論に至ったんです」

 

 ウエイターの男はこの推理を聞き拍手した。そして彼はマスクを剥ぎ取る。面接官の名前はラグエル。本名は愛澤春樹だ。

「見事な推理ですね。この試験の合格率は一%ですよ。九〇%の受験者は眼鏡の男が面接官だという推理をして不合格になっているからね。残りの一〇%の受験者は眼鏡の男面接官説を疑います。後は年によって異なるのですが受験者に瓜二つの人物が面接官だという推理をする人が多い傾向です。第四の容疑者の存在に気がつくのはたったの一%しかいません」

 

 江角はこの言葉に謙遜する。

「偶然クーラーが壊れていたから分かっただけだよ」


 愛澤は江角にあることを伝えた。

「では本当の面接試験の会場に案内します」

 江角はこの言葉に驚く。

「この喫茶店で面接をするのでは」

 愛澤は笑う。

「まさかこんな喫茶店で面接をすると思っていましたか。この喫茶店は面接試験を受験する資格があるのかを確認するために用意した場所です」


 江角は愛澤と共に喫茶店を出て行く。喫茶店の前には黒い車が止まっていた。二人はこの車に乗り込み本当の面接会場に向かう。


ラグエル予告編

「そろそろ暗殺したい頃でしょう。」

 混沌とした世界の中でシリーズ 十月一日連載再開。

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