花を添えられるものたち①
「ウッド!ゼカが困ってるでしょ!早く離れなさいってば!ゼカはお姉ちゃんと会いたいの!」
「いいや、この森を形成した俺と会いたいはずだ!な?なぁ、ムシュル、俺って“交わらなければ”いい匂いだろ?」
「……ムシュルも自然の使い手だけどね。うん、やっぱ臭い。つまり、ウッドは臭い。ウッドの匂いで、ゼカを染めないで。」
僕の目の前で言い争いをしてるのは、僕の異母兄弟たちだった。
どうやら、僕以外の兄弟は――もう何度も顔を合わせているらしい。
もしかしたら、彼らは「花を添えてもらえる」人たちなのかもしれない。
……父と違って。
「ウッド、ミカナが睨んでる。早く退け。ゼカが混乱するから。」――リーダーシップがあるのは、どう見てもこの人だ。長男、カーシャ。
カーシャ。……名前だけは、さすがに僕でも知ってる。
三年前に話題になった英雄、クレアの婚約者。たしか、クレアとカーシャは共に騎士団長だったはずだ。美男美女で有名で、確かカーシャは短髪だったはず。今はクレアのように髪が長い。しかも、なんでこんなところに?クレアさんは……?
英雄は、やっぱり英雄を産むのか。ろくでなしなら、ろくでなししか産めない?
……じゃあ。父を殺した“悪魔”は、悪魔しか、生まないのか?