捕まったメリーさん
あたしメリーさん。
いろんな要素が絡み合って生まれた都市伝説。
基本的にはあたし(あたしたち)を捨てた人間への恨みを晴らしに行くものなんだけど……。
あたしメリーさん。
今、人間の膝の上でプリン食べてるの。プリンうまー。この滑らかさがたまらないわよね。コンビニでこれが買えるって凄い時代になったと思うわ。
ああ、人形なのにものが食べられるのもいいわね。都市伝説って存在は便利だわ。
餌付け? なんのことかしら。
あたしメリーさん。気がついたら新しいお洋服まで用意されてたの。しかも5着もあったわよ。その上、人間ったら毎日鼻歌歌いながらミシンで新しい服を縫ってるの。
「小さい頃は布を巻き付けるくらいしかできなかったから、メリーさんの洋服作るの夢だったんだー」
そんな事を言いながら、ドドドドドッて凄い早さでミシン動かしてるわ。今着ているピンクの花柄のワンピースも可愛いけど、目の前で作られてる青いドレスも素敵ね。自分はスウェットの上下なくせに、こいつったら私のドレスにはレースを惜しみなく使うのよ。
あたしメリーさん。毎日小さな櫛で丹念に髪の毛をブラッシングされるの。そして綺麗な服を着たあたしを見て、この人間は幸せそうに笑うの。
あたしメリーさん。気づいちゃった。とても懐かしい気持ちだわ。
愛されるのってとっても温かいのね、人形の本懐だわ。
毎日帰ってくると、私に向かって会社であったことを話されるのよ。あたしは適当に相槌を打つだけだけど、昔は言葉を話すこともできなかったから格段の進歩よね。
あたしメリーさん。もう歩き回るのはやめたわ。私は人間に大事にされて、綺麗な顔でにっこりしてるだけで十分すぎる価値があるのよ。
でもずっと黙ってると人間が不安そうになるから、時々はおしゃべりしてあげる。
あたしメリーさん。
今、とっても幸せなの。