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第壱幕 第壱章 第弐節『住民との出会い〜三階編〜』

<あらすじ>

突如として十三の妖怪が住まう館・魔館の主人となった妖怪オタクの僕・怪道 妖一。

朧火さん曰く僕は「館の妖怪を一つにするための新たな主人」と言うことらしい。

僕を支えてくれる九尾の狐・朧火さんと番人・鎧塚さんによって迎えられ、朧火さんの助言もあり、館内と住民を見にいくことに。

最後に三階の様子を見に行くことにした。

<1>

 三階、というだけあって階段の段数も多く、少し疲れてきた。

 それでも朧火さんは息切れもせずに黄金色の尻尾を揺らしながら軽やかに階段を登っていた。

「えーっとね、三階の人たちが一番やばいんだけど、まぁ、気にしないでね」

 と苦笑いし、焦茶色の『衣服室』と看板が架けられた部屋の扉を叩いた。


 焦茶色の扉が軋みながら開く。

「…何か用かしら?」

 扉の先に現れたのは、まさに美という言葉がふさわしい、美しい女性だった。

 髪の毛は艶々で、全体に蜘蛛をあしらった怪しげで不思議な服を身に纏っていた。

 顔はキリッと引き締まっており、鋭い眼が僕らを見ている。


 朧火さんを見るなり、心底嫌そうな顔をし、

「げ、朧火じゃない。閉めるわね」

 と金色のドアノブを握りしめ、扉を閉めようとした。

「そんなことを言わないでくれないかな女郎院。新しいご主人のお披露目だというのに。」

 朧火さんは悲しそうに首を振り、扉を両手でぎりぎりと力ずくで止めていた。

 すると朧火さんと拮抗していた扉を閉めようとする手が止まった。

「ご主人ですって?あの方が見つかったの?」

 そう応える綺麗なお姉さん…女郎院さんの声が少し上ずっていた。

「ああ、でも生まれ変わりとかじゃなさそうでね。中で話をしたいんだ、お邪魔してもいいかな?」

 ニコニコしながら軽く圧をかける。

 すると女郎院さんは舌打ちとため息をつき、僕らを招き入れた。

「チッ、はぁ…まぁ良いわ、入って」

「お邪魔します…」

 また迷惑かけてしまったな…と思いながら、おずおずと部屋に入った。


「うわぁ…!」

 部屋に入り周りを見渡すと、見慣れないものが多く興味が湧いた。

 布を棒に巻いたものが多く棚に収められ、糸も太細様々で沢山の色がある。

 壁一面に貼られた服の原案、ミシンや針山、トルソー(服かける器具)も置かれていた。

 本格的な衣服室だ。


 朧火さんが扉を閉めたところで問いを投げかけてきた。

「ところでこのちびっ子は誰?私、あんまり子供好きじゃないのよね」

 と固く腕組みをし、上から僕のことを警戒心MAXで睨む。

「そう、彼こそが新しいこの館の主人、怪道 妖一くん、さ!」

 と片膝をつき、手でキラキラを表現してオーバーに僕のことを紹介する朧火さん。

「か、怪道 妖一です、よろしくお願いします」

 と一礼した。

 女郎院さんはとても怪訝な顔をしたが、その疑問を祓うように軽く頭を振った。

「このちびっ子が?そう…私はこの館の衣服屋、女郎院よ。

 ここの住人の装飾に創作、作成は全部私がしているの。宜しくお願いするわ」

 と静かに言い捨てた。

 その紹介に僕は驚いて聞いた。

「え、じゃあ、朧火さんの素敵な着物も!?雪花さんのふりふりのエプロンも!?

 あの玄関の綺麗な絨毯とかも!?スゴイ!スゴすぎます!!」

 目をキラキラさせながら一気に捲し立てる僕。

 妖怪たちの衣装や住んでいる館の装飾を作っているのだ、妖怪オタクとしての血が騒ぐ。

 女郎院さんが少し驚いた顔をし、すぐに自信満々にニヤリと笑った。

「…フッ、なぜならこの私が創作したのですもの。美しいに決まってるでしょう?

 あなた、なかなか良い感性してるじゃない。認めてやらないこともないわね。よろしくね、若主人。」

 と怪しげに笑った。少しは認めてもらえたようだ。

「さて、話もまとまったことだし。女郎院、これからよろしくね」

「まあいいわ、よろしく」

 口元に手を当て、また怪しげに笑った。

 そのまま外に出て軽く一礼し「お邪魔しましたぁ」と外へ出た。

 扉を閉め朧火さんは

「綺麗な人だったでしょ、まぁ僕の方が上だけどね」

 とさらりと言った。

 もはや清々しい。

「なんだこの人…」


<2>

「とてもとても嫌だけど、行くしかないかぁ」

 と嫌々と駄々をこねながら渋々下に降り、きぬ太くんのお師匠さんが営む『唐傘商店』に向かうことにした。

 道中、三階の他の部屋をノックしてみたが留守だったからだ。

 一階の廊下を歩いていると開けた場所に出た。

 そこは小さなお店だった。

『唐傘商店』と筆で書かれた木の看板が架けられている。

 すると、傘と木の葉の紋章が描かれた暖簾を捲り、人が出てきた。


 鮮やかな着物に荒々しい髪、腰にひょうたん、日本酒の匂いを漂わせている。

 勿論、ここにいる時点で普通の人間ではない。頭に大きなツノを生やした大柄の人物だ。

「お、朧火ぃ。久しぶりだな、元気か?」

 その人は朧火さんを見ると片手をあげ、挨拶をした。

 晴れ晴れとした、明るい笑顔。

 太陽のようだ。

「あぁ、酒呑樂さん、お久しぶりです」

 朧火さんが一礼する。

 久しく話していなかったのだろう、会話が弾んでいる。

 改めてその人をよく見ると、その顔は凛々しく、力強い眼差しを持ち合わせている。

 武闘派なのだろう、筋骨隆々の肉体を持ち合わせている。

 荒々しい風貌も相まって、なぜか大鵺くんを思い出した。

 極め付けの凛々しい、鎧塚さんとは色が違うが、よく似た大きなツノを生やしている。

 そのツノを見て、妖怪オタク()は思わずつぶやいた。

「そのツノ…鎧塚さんそっくりだ…かっこいい…!」

 どうやらそれが聞こえていたようで、僕の方を振り向いた。

「お、ガキンチョ、このツノか?

 オメェ、いいセンスしてんじゃねぇか!」

 とカッカッカと大きな声で笑い、僕と同じ高さの中腰になり、自分のツノを指差す。

「いいだろ!これはな、俺ら鬼族のみに現れるツノなんだぜ、どーだ、すげーだろ!」

 そう言って胸を張る。

「スゴい、かっこいい!

 …触ってみても、良いですか…?」

「お、いいぜ〜!」

 とツノを差し出した。


 おずおずと手を伸ばす。

 ツノのお兄さんはスッと目を閉じる。

 伸ばした指先がツノに触れる。

 強く、太く、力強いツノだ。

 よく見るとツノに模様が書いてある。

 と言うことは彼も妖怪なのだろうと、ふと思う。


 触った後に感謝を述べ、こわごわと手を離した。

「…ありがとうございます、とっても力強かったです!」

「カッカッカ!!面白いやつだな、オメェ!!

 で、朧火、こいつは誰だ。悪そうなヤツじゃなさそうだが」

 突然顔を朧火さんに向け、笑顔でそう聞く。

「話聞いてました?

 まぁいいか…彼は我々の新しい主人として馳せ参ざれた、怪道 妖一様です。」

「怪道 妖一です、よろしくお願いします」

 そう言って会釈した。

「あー、なるほどな、そうか、お前がか…。なるほど、わかった!承知した!

 そういや、まだ名を述べていなかったなぁ。」

 ボリボリと頭をかき、太陽の如く明るい笑顔で名乗った。

「俺は酒呑樂 我楽(しゅてんらく がらく)、鬼族の頭領(とうりょう)でここでは武術家をしてんだ。

 よろしくな、若主人!!」

 と手を差し出した。

「はい、よろしくお願いします!」

 といい、手を握り返す。

 固く握手を交わした。

 とても力強く、骨が軋んだ。

「だが、あれだな、まだヒヨッコだな!カッカッカ!!」

 腰に手を当て天を向いてそう笑う。

「ヒ、ヒョッコ…」

 明るすぎて僕はたじたじになってしまった。

「やれやれ…この人は言葉を全く選ばないんだ。

 まあ、忖度なし、と言うことでもあるね。」

 と顎に手を添えながらそう言い換える朧火さん。

 …人の扱い方が上手いなぁ。

 そう思っていると朧火さんが彼に恒例の情報共有をした。

「酒呑樂殿、彼は後にこの館の主人となられるお方。

 なるべく無礼がないように頼みますよ」

 と真剣な顔でそう伝えると、ツノのお兄さん…酒呑樂さんの顔がさらに笑みが広がった。

「カッカッカ、承知した!!

 後で正式に決まった際は盛大に祝おうぜ!!」

 と大きな朱色の盃を取り出して、盛大に笑った。

「あ、僕未成年なんでお酒は無理です…」

 僕は手をブンブン振り、断っておく。

 飲んだら犯罪だ。

「カァー!そっれは残念だ!人生の半分損してるぜー」

 と僕の体に腕を回し、肩を組みながらそう笑った。

 その後、「今日はうまい酒が手に入った!!祝杯を上げてくる!」と言い、去っていった。

 _面白い人だな。


<3>

「さてと。気を取り直して行こうか」

 静かに暖簾をくぐった。

 入ってすぐのカウンターから声をかける。

「店長、いるかい?」

 その声が奥へと響く。

 すると奥から静かに人が出てきた。

 緑の髪に傘のような帽子、糸のように細い目。

 和風なこの館に合う中華スタイルで、和服とチャイナ服を着こなしている。

 商人、というだけあって色々なお札や数珠を身につけている。

 その目に思案は一瞬も写っておらず、幾度として商売の道を突き進んできたのかがわかる。

「あら、朧火殿。どうされました?

 あ、もしかして…新作の情報を嗅ぎつけられました?」

「あ、ごめん今日は違うんだ、また後日教えてくれ」

 営業スマイルボイスで朧火さんに近づくも、さらりと受け流す朧火さん。


 話している間、周りを見渡すと、視界の先には、和菓子屋さんのようなカウンター(中に入ってるものは怪しげな縄や、巻物)、温かい雰囲気(怪しげなお香炊いてた)、風流な壁(扇子とか、謎の仮面とかいっぱいかけられている)が聳えており、一見して、普通の商店に見えた。

 …普通?


 すると彼の視線が不意に僕に向いた。

 チャイナ服の袖からメガネをかけ、僕を凝視する。

「むむ、そこのお坊ちゃんは?

 …まさか、隠し子っ!?」

 顔を引き攣らせ、扇子で顔を覆う。

「やめてくれ、なんでこう、みんな…まあいいや。

 彼はここの新しき主人様となられる怪道 妖一様さ」

「怪道 妖一です、よろしくお願いしま…わ!!」

 すると唐傘さんの顔がニヤリと変わる。

「ほう、新しい主人様、と。ほうほうほーう。なるほどなるほどなーるほど」

 と僕の頭のてっぺんから爪先まで品定めするようによく観たあと、口を開いた。


「そうですか、あなたが新しい主人様、ということですね!

 では初回ということで、まずは紹介の程を。」

 そこまで言うと、一歩下がり恭しく礼をした。

「初めまして。

 私は人知れずに現れる、いつでもなんでもどこのものでも、なんでもかんでも揃う、ハイカラでバンカラな商店、『唐傘商店』の店長です。

 …以後、お見知り置きを。」

 と恭しく手を差し伸べてきた。

「よ、よろしくお願いします。」と手を握り、握手を交わす。

 他の人とは少し違う商人の風貌を感じた。

「うちにはなんでも揃っておりますゆえ、ぜひご贔屓に。

 あ、初回特典で今ならなんと50%引き!!なんと素晴らしい!

 そして本日は素敵な品物が入っておりまして…それはもう是非観ていただきたい!

 それから…」

「すまないけど、今忙しいんだ、また今度頼むよ」

 と朧火さんが止めてくれた。

「えーケチですなぁ。

 朧火殿も一度はパーっと使っちゃえば良いのに〜」

「はいはい、また今度ね、行くよ主人様」

「う、うん、お邪魔しました」

 一礼し、部屋を出る。

 怪しげに微笑んでいたのを、僕は扉が閉まる一瞬、見た。


「さて、終わったことだし、帰ろうか」

「朧火さん、僕の数え間違いじゃなかったら、あと一人足りないと思うんですけど」

朧火さん、鎧塚さん、きぬ太くん、たたみさん、大鵺くん、雪花さん、翡翠川さん、邪太郎さん、流流川さん、女郎院さん、酒呑樂さん、店長さんのことを思い出しながら数えていくと12人しかいない。

 すると顔を曇らせ、応える。

「彼は今、会えないんだ」

「どうして?」

「…とにかく会えないんだ。ごめんね」

 と、詳しく教えてはくれなかった。

 何か深いわけがあるのだろう、それ以上追求しないことにした。


「さて、それじゃあ、この先について話そうか。

 僕らは、君を主人として認める必要があるからね。」

 僕はまだ知らない。

 _僕らに不穏な影が迫っていることを。

<終>

皆様こんばんわ、nofuです。

お久しぶりです、ほんと。

これでほとんどの登場人物たちが登場しましたね。

ここから物語の歯車が動き出します。

進み始める未来。迫る影。

彼らの活躍、乞うご期待ください。

<終>

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