第壱幕 第壱章 第弐節『住民との出会い〜二階編〜』
<あらすじ>
突如として十三の妖怪が住まう館・魔館の主人となった妖怪オタクの僕・怪道 妖一。
朧火さん曰く僕は「館の妖怪を一つにするための新たな主人」と言うことらしい。
彼を支える九尾の狐・朧火さんと番人・鎧塚さんによって迎えられ、朧火さんの助言もあり、館内と住民を見にいくことに。
今回は二階の様子を見に行くことにした。
〜1〜
僕は怪道 妖一。妖怪の住まう館『魔館』の新しい主人として迎えられた。
現在僕は朧火さんに屋敷の案内と住人の紹介をしてもらっているところだ。
二階に向かって階段を登っていると、不意に朧火さんが言ったことが脳内に巡る。
『そうだ、気をつけてね、ここの妖怪たち、怖い人はいないけど、変な人ばっかりだから』
さっきの言葉が頭の中で響く。
どう言う意味なのかよくわからないけど、とりあえず返事をした。
よくわからないけど、今まで会ってきた人たち(すぐ斬ろうとする人、すぐ勝負仕掛ける人とか)のことを考えるとまぁ、納得した。
2
二階・図書室。
図書室という名にふさわしい大小さまざまの沢山の本が僕の身長の二倍ほどの高さの本棚に収まっていた。
医学、植物学、体術などの専門的なものから昔話や妖怪に関する物語系、そして奥には拷問学、殺人術という恐ろしいものもある。
「『妖怪全体集』、『異怪物のススメ』…面白そうなのがいっぱいだね」
「うんそうだね。ここは沢山の本が置いてあって、様々な時代、ジャンル、専門的な内容の本があるんだ。
見て回ってみてはどうだい?僕はここの管理人に声をかけてみるよ」
と奥のカウンターに向かっていった。
僕は、本の興味に背中を押され、縦に横に、本棚に沿って縦横無尽に歩き始める。
しばらく歩いていると、人影を見つけた。
ガラス張りの天井から神々しい光がその人物の周りを照らす。まるでスポットライトだ。
よく見ると、そこで二匹の金魚が泳ぐ金魚鉢を眺めている長身の人物がいた。
中性的、といった風貌で、ゆるゆるとした髪を前にかけ、和服を着こなし、腰に筆と冊子を帯に刺している。
足音に気付いたのだろう、ゆらりとこちらを一瞥し、声をかけた。
「おや、やあ朧火。今日も綺麗だね。」
「え」
振り向くと、いつの間にか僕の後ろには朧火さんがいた。
「わ!!い、いつの間に」
驚く僕とそれに応えるような揶揄うような顔で微笑む朧火さん。
「さっきの間に、さ。
ありがとう翡翠川。今日は君に伝えたいことがあってきたんだ」
をし、爽やかな笑顔で人差し指を振りながら、話し出した。
中性的な人…翡翠川さんは扇で顎を叩き、柔らかい笑みを浮かべて僕らを見る。
「へぇ、僕にねぇ。面白いじゃないの。なんだい?
そして、そこの少年は?」
長いまつ毛をもつ三白眼を薄く見開き、ずいっと僕の方に顔を近づけてくる。
「う、ぇ」
恐怖で声が出ない。
変な声を出した、恥ずかしい。
「こらこら、怖がってるでしょ。彼は僕らの新しい主、怪道 妖一くんさ。」
「ほぅ、そうか、君が…」
と頷くと、
「へぇ…ふむ…ほぅ…」
と声を出し、僕をジロジロと見始めた。
癖毛のてっぺんから足まで。右の爪先から左の爪先まで。
「小柄、怖がり、見抜く目、強い心、自己評価低め、寝不足、細かいところまで丁寧。
へぇ…」
僕の体を見て気づいたことを淡々と述べてゆく。
「な、なんですか…?」
僕は半ば困惑しつつ、一応聞く。
「ちょっと翡翠川。主人様に迷惑だよ」
朧火さんが静止し、ようやく終わった。
「おっと失礼。
私の悪い癖でねぇ。ついつい相手のことを観察してしまうんだよ。
いやーすまないすまない。」
と笑い、舌を出し、扇子で軽く頭を叩く。
そして大袈裟に手を横に振る。
私は無害だ、という意味だろうか。
_無害かな?
扇子をふり、紳士らしく奇妙に恭しく挨拶をする。
「私はこの館の画家でして。名を翡翠川 時雨と申し上げます。
画家、といいつつも色々やっております。
美容とか、整体とか、人体観察とか、全裸徘徊とかそれから…」
と頬を赤らめる。
これが俗にいう、変な人かぁと感じながら冷めた視線を送る。
朧火さんもやれやれ、といった感じだ。
_待って今全裸徘徊って言った?どゆこと?
「やめてくれ。ぴゅあな少年にそんなことを吹き込まないでくれ。」
「あらら〜、僕はただ、本当のことを言っただけなんだがねぇ」
とまたまた朧火さんが静止した。
「やれやれ、こんな彼だけど、仲良くしてやってあげてね。」
「こんなやつって…私は美的感性で動いているのにねぇ。
まぁ、よろしくお願い致しますね、若主人殿。」
こちらに手を差し伸べる。握手を求められているようだ。
「うん、よろしくね」
僕は恐々と手を握った。
行動が紳士的だ。
「ここは多種多様な本が沢山ある。君も、利用してみると良いよ。」
「えぇ。いつでも声をかけてくれたまえ。
若主人殿、ではまた。」
その後、彼に手を振り、その場を去った。
図書室を去ると不意に朧火さんが聞いてきた。
「彼をどう思った?」
「怖いなぁと」
「だろうね」
と軽口を叩き、他の部屋を見て回った。
〜3〜
その後、二階の華道室、と呼ばれる部屋に向かった。
扉を開けると、華のいい匂いがした。
床一面に畳が敷き詰められ、周りには華が生けられており風流でとても華やかだった。
そこを案内してもらい、廊下に戻ると奥の方から「すや〜〜」と吐息が聞こえてきた。
若い男の人がベンチの上でずんぐりとした紫色の漠のようなぬいぐるみを抱えてまん丸になって眠っていた。
大きく目が描かれたアイマスク、耳にピアス、パジャマのようなゆったりとした服、桃色の髪、ストリートファッションという、和風感あふれるこの館に似合わない奇抜な服装だ。
「邪太郎くん、今いいかな?」
朧火さんは眠っているお兄さんの耳元でそっと言った。
「んにゃ…あれ〜朧火さんじゃないの〜、どうかした〜?」
眠い目を擦り(まだアイマスクはしていた)、ふわ〜と欠伸をし、こちらを見る。
完全に休日のお父さんの構図だ。
「どうも、邪太郎くん。新たなる我らの主が来たんだ」
「んはは〜やっぱりぃ〜そんな気はしてたんだよね〜」
よっこらどっこいと体を起こし、こちらを見る。
「あれれ、ご主人ちっさいね〜成り代わったんじゃないんだ〜」
ぽんぽんと僕の頭を叩いて笑った。
黒いネイルをしている。優しい手だ。少しゴツゴツしている。
「じゃあ、挨拶させて頂こうかな〜」
椅子に深く腰掛け、体を前に倒し、手を組んで言った。
「僕の名前は夢喰 邪太郎〜。大漠さんだよ〜。
この館では夢物語屋をしているよ〜。よろしくね〜。」
ラフでゆるい声がそう名乗る。
…そういやこの館の人はきびきびした人が多いからゆるい感じの人は珍しく感じる。
このゆるい感じはきぬ太以来だ。
なんだか、落ち着く。
「大漠?大漠ってあの?人の悪夢を食うっていう…」
僕は疑問を投げる。
_大漠。
それは人が睡眠中に見る悪夢を食べると言われている中国に伝わる妖怪のこと(諸説あり)。
「そうだよー、あれれ〜僕って有名?嬉しいな〜あはは〜」
照れ臭そうにだぼっとした服で頭を掻く。
「その、夢物語屋って何するんですか?」
聞きなれない単語を聞いてふと聞いた。
ん〜、と考えるポーズをし、こう言った。
「永遠と寝る人だよお」
「本当ですか?」
「「ほんと」〜」
朧火さんと夢喰さんの声が重なる。間違いないようだ。
でもね、と笑う。
「寝るのは体にいいし、楽しいよ〜。
君にならおすすめのサボり…お昼寝処教えてあげるね〜あはは〜」
「あんまり寝過ぎたら良くはないけどね。
そういえば鎧塚さんが君のことを探してたよ」
顎に人差し指を当て、思い出したように言う朧火さん。
すると夢喰さんは軽く肩を落とした。
「うげげ〜おサボりがバレちゃった〜。
そーだ。いーこと教えるね〜鎧塚さん怖いから気をつけなよ〜あの人、目、百個ぐらいあるからさ〜。
いろんなところで寝てもすぐバレるんだぁ〜とほほぉ〜」
あの鬼の形相が目に浮かぶ。
「ね、彼、怖いでしょ」
「うんやっぱり怖い」
顔を見合わせ、朧火さんの質問に二つ返事。
「そうだ〜、朧火さーん、傘さんにエナドリ…じゃないや〜雷撃薬もらってきて〜
しばらく起きれそうにないからー」
思い出したのか、そう頼み込む夢喰さん。
「分かったよ、ちゃんとお金は払ってね。」
はいはーい、という声の後にまたすや〜〜〜と聞こえてきた。
「彼はよく寝るからね、大事な時とかは雷撃薬を飲むのさ」
「へぇ…?」
聞けば『雷撃薬』とは飲めるもののようで、飲むと全身が稲妻が駆けたかのように震え、目がガンガンに冴えるのだという。
今でいうエナドリのようなものらしい。飲んだことないけど。
それを彼は毎度毎度飲んで目を覚ますらしい。
(今度、どんな味か今度聞いてみようっと。)
そう思い、華道室を出た。
3
「この階に人の気配はないね、三階に行こうか」
という朧火さんの一言で階段を目指して歩き始めた。
どうやらもう用事は済んだらしい。
「_朧火ぃっ!!!」
突然の大声に僕と、朧火さんと尻尾と耳がびくりと跳ね上がる。
大声の元に振り向くと廊下の奥の方からずかずかと女の人が歩み寄ってきた。
鬼の形相、と言った顔で朧火さんに詰め寄り睨む。
「おや、流流川。どうかしたのかな?」
何事もなかったように爽やかな顔で朧火さんは受け応える。
「ちょっと朧火!新しい主様がいらっしゃったのなら、私を先に呼びなさいよ!」
とずかずかくるお姉さん…流流川と、呼ばれた水色の女性が朧火さんに突っかかる。
きっと誰かから聞いて僕らを探し回ったのだろう。
そう思うと申し訳なく思う。
「いや〜、ごめんごめん、君が見つからなくってね。
悪気はないんだよ?」
とキュルンとした瞳と可愛いポーズで誤魔化そうとする。
…ちなみに彼は30代ぐらい。れっきとした大人だ。
もう一度言う。れっきとした、大人だ。
ぐいぐい大声で詰める水色の女性を朧火さんはのらりくらりと彼女の追撃を交わす。
朧火さんの胸ぐらを掴みかかったところで、なんとか止めようとした。
「ちょ、ちょっと喧嘩はやめてよ…!
暴力は良くないよ、痛いよ!」
間に割って入り、必死に止めにかかる。
すると物珍しそうに、僕を見下ろしながら、僕らに威嚇する。
「あら、何よ、このガキンチョ。
まさかこの子が主人様とかいうんじゃあないでしょうね?」
ずけずけともの言う女性。
冷静になってその人をよく見てみると、顔の横にヒレがあり体全体に鱗模様が入っている。
髪は長く、ウェーブになっている。
「はは、その通りだよ、この子が新しい我らの主、怪道 妖一くんだよ。
主人様、この人はここの華道家、流流川 泡姫さんだよ。」
と流流川さんに僕を、僕に流流川さんを紹介する。
「怪道 妖一です、よろしくお願いします…!!」
とあいさつし、軽く会釈する。
「こ、このガキンチョが!?でも感じ的になり代わりじゃないわよね…?」
大袈裟にこちらを見る。
やっぱりちょっと高圧的だ。
「まぁまぁ、細かいことは後で説明するから。
とりあえず、それでいい?」
「分かったわ。納得できる回答を用意しなさいよ!」
とずかずかと去っていった。
「嵐のような人だったね…」
「僕はああゆう人は苦手なんだよね、やれやれ」
と肩をすくめた。
だが次の瞬間にはさわやかな笑顔を作り、僕の手を引いてくれた。
「さてさて、最後は三階にごあんな〜い」
館内で一番高いところだ。
そして、最後の階層。
僕らは最も危険な場所に足を踏み入れた。
<終>
こんばんわ〜!ノフです〜!
はいはい出てきましたね3人の妖怪たち!!
翡翠川、夢喰、流流川!みんな個性的で面白い人たちでしたね〜!!
さてさて、次回はさらに館内の施設を見ていきますよ〜!
さぁ、最後の住民たちはどんな人たちなのでしょうか…次回もお楽しみに!!
ノフでした!




