13話 暴走
ベロの血が止まった後、リンを部屋に送り届けながらシャルを呼びに行くつもりだったんだけど……。
リンが部屋に帰らずについてきている。
あれ?一人ずつって話だったと思うんだけど。
「えっと……これからシャルを呼びに行くんだけど……」
「ハイデス、シャル アイサツ デス」
なるほど、そういうことなら止める理由はない。
リンを連れたままシャルの部屋に行って、ノックする。
「シャル、順番だよー」
「あ、は、はい。
……あ、リンさん」
部屋から出てきたシャルがリンに気づいてなにか目配せすると、リンは恥ずかしそうに小さく笑った。
「あ、あの、せ、先生。
す、少し、リンさんの、は、話を聞いても……いいですか?」
「え?うん、もちろん構わないよ。
僕部屋で待ってようか?」
シャルもやることは分かっているのでちょっと不安なのかもしれない。
済ませたリンの話を聞きたいんだろう。
「あ、い、いえ、そ、そんなに時間は、か、かかりませんから」
そう言うとシャルはリンを引っ張って少し離れたところでコソコソと小声で話し出す。
んー?
やけに恥ずかしそうに話しているし、たまに「キャー」っていう歓声……というにはやけに恥ずかしそうな声が上がったりしているけど……。
あれ?耳飾りの話ししてるんだよね?なにか別の話し?
二人揃ってすごい恥ずかしそうだけど、同時にすごい楽しそうに話しているから見ていて微笑ましいけど、何の話してるんだろ?
少しの間二人でキャイキャイしていたけど、ひとしきり話し終わったリンがシャルに「ガンバル デス」と言って送り出した。
「えっと、もう大丈夫?」
「は、はいっ!か、覚悟は、き、決まりましたっ!」
……なんだろう?シャルのテンションが上ってる?
まあ、怖がるよりはいいやと思って、リンにおやすみの挨拶をしてからシャルと二人部屋に戻っていった。
先の二人と同じくベッドの上にシャルと向かい合って座る。
「えっと、最終確認だけど、本当にいいんだね?」
覚悟は決まっているって言ってたけど、体に傷をつけることだし念のため確認。
「は、はい、せ、ぜひお願いします」
うーん、なんだろう、シャルはやる気にあふれてる。
「えっと……リンは証って言ってたけど、これなんなの?」
痛いことをされるのが間違いないのにやけに前向きな様子に、流石にちょっと気になった。
リンの様子といい単にアクセサリーというだけのものじゃないみたいだけど……。
「え、えっ!?
………………あ、あの……な、仲良しの証です……」
うーん、嘘付いてるって様子ではないけど、全部語ってくれてるってわけでもないらしい。
「……それじゃ、僕も付けてみようかなぁ」
なんか一人だけ仲間はずれな感じがしてちょっと寂しい。
「え?せ、先生が付けたいのなら、と、止めませんけど……」
止めはしないけど、乗り気ではないらしい。
仲良しマークを付けさせてもらえない……。
ちょっと凹む。
ほ、ほら、僕は孤児院の保護者って立場だからさ。
そんな言い訳を自分にして、萎えかけていた気分を立ち直らせる。
「と、とにかく……痛いと思うよ?」
「は、はい、覚悟はできています」
顔は真っ赤にしているけど、恥ずかしがり屋のシャルにしては珍しくまっすぐに僕を見つめて言ってくる。
本当に覚悟は決まっているみたいだ。
何度やっても気は引けるけど、本人が望んでいるんじゃ仕方ない。
「それじゃ、始めようか」
そう言ってベッドの上のシャルににじり寄る。
「は、はい……」
シャルもコクリと頷くと、恥ずかしそうに服を……。
「なんで脱ぐのっ!?」
突然服……寝間着にしている貫頭衣を脱ぎだそうとしたシャルを慌てて止めた。
「えっ?だ、だって、リンさんは……」
「リンは服着てたよっ!?」
……あれ?着てたよな?
…………………………うん、着てた着てた。
お互いの体を押し付け合ううちにだいぶはだけてた気もするけど、かろうじて着てた。
「え?そ、そうなんですか?
わ、分かりました……」
何故かやけに残念そうに服にかけていた手を下ろすシャル。
可愛らしいおへそが見えてドキドキしてしまっていたので助かった。
…………添い寝の時はもっとすごいもの見えてるけど、寝る時以外で見るのはなんて言うか……破壊力が違う。
軽く深呼吸して乱れる鼓動を抑えてシャルの横に位置どる。
「……触るよ?」
シャルが小さくだけどしっかりと頷くのを確認してからシャルの耳たぶに触れる。
「……んっ」
シャルの口からくすぐったそうな声が漏れるけど、気にしないことにして耳たぶを軽く揉んで確認する。
シャルの耳たぶはユーキくんよりも薄いように感じたけど、ちょっと冷たくてすべすべして触ってて気持ちいい。
このままだとずっと触っていたくなっちゃうので、早く先に進もう。
「それじゃ消毒するからね」
「え?もうですか?」
ん?なぜかシャルがびっくりした顔しているけど……。
「え?うん、付ける場所は決まっているしもう大丈夫だよ」
ユーキくんの耳をいじらせてもらって結局付ける場所は耳たぶしか無いってわかったし、リンと違ってよく知ってる人間の耳だから特に確認の必要はない。
むしろ先の二人は色々いじり回しちゃって申し訳ないと思っていたところだ。
「うー…………」
……なんだろう?シャルがなにか納得行かないって感じで小さく唸ってるけど……。
「え、えっと、消毒するね?」
よく分からないけど、とにかくまずはやらなきゃいけないことを終わらせてしまおう。
そう思って、指先に《消毒》を励起して耳たぶを数回撫でる。
これも二人を無駄にくすぐったくさせてしまった反省からだ。
落ち着いて考えてみればいくら消毒とは言えあんなに執拗にいじる必要はなかった。
魔法の効果なんだから下手すればしっかりと一度撫でればいいくらいだ。
そうは思うんだけど、あまりにもシャルの耳たぶの感触が気持ちよくって思わず数回撫でてしまった。
「…………んっ」
でも、シャルの口から小さく吐息のような声が漏れて我に返る。
「しょ、消毒終わったよ」
あ、危ない。
夢中になって触り続けちゃうところだった。
「………………むー」
それでも極めて順調に作業は進んでると思うんだけど、シャルはなぜか少し不満そうだ。
「え、えっと……それじゃ、入れるからね?」
シャルの様子を不思議に思いながらも、耳飾りを取ろうとした手が掴まれた。
いや、掴むと言うか……手を握られた。
「あ、あの……まだしょ、消毒が足りないと思います……」
い、いや、ちゃんと消毒はしたよ?といいかけて考え直す。
確かに魔法に馴染みのない人にとってはちょっと指で撫でて「消毒できた」と言われても不安か。
考えてみればそのとおりなので、もっとはっきり分かりやすい消毒を……そうだ、たしか強めのお酒が……。
「…………わ、私の育った村では……ちょ、ちょっとした怪我は……な、な、な、舐めて消毒を……し、していま……」
えっ!?
シャルの言葉はどんどん消え入るように小さくなって、最後の方は聞こえなかったけど「舐めて消毒」の辺りははっきり聞こえた。
い、いや、たしかにうちの街でもちょっとした子供の怪我なんかは親が舐めて消毒してたし、僕も指を切った時に兄上に舐めてもらったことあったけど……。
魔法やお酒のほうが消毒としては確実なんだけど……。
いや、でも、ここで重要なのはシャルが安心できるかどうかだ。
ぶっちゃけてしまえば効果自体は《消毒》の魔法のほうが確実なんだから、ここは効果よりもシャルの気持ちを優先しよう。
「えっと、本当にいいの?」
「…………お、お願いします」
念のためシャルの許可をもらって、覚悟を決める。
横からシャルの耳に顔を近づけて……。
どんどん近づいてくるシャルのきれいな耳と香ってくる良い匂いに、どうしていいのか分からなくなる。
もうあと少し顔を前に進めれば、あるいはベロを伸ばせば触れる場所にシャルの耳たぶが有るけど……。
舐めなきゃいけないんだけど本当に舐めていいのか覚悟が決まらず、かと言ってもうこうなったら止めるわけにも行かず……。
踏ん切りがつかないまま、折衷案のつもりでそっと耳たぶに唇を付けた。
「……あっ」
その途端にシャルの口から吐息のような声が漏れて、思わず全力で頭を離してしまう。
「ご、ごめんっ!!」
正直、自分でもなにに謝っているのか分からなかったけど、つい口から出てた。
「だ、大丈夫なので……あの……」
シャルは顔を真っ赤にしてこちらを見れないほど恥ずかしそうにしているけど、言いたいことは分かった。
「つ、続けるよ?い、嫌だったらすぐに言ってね?」
僕の言葉にすぐにコクリと頷いてくれたシャルに勇気をもらって、再びシャルの耳に口を近づける。
そして……ベロを伸ばしてペロリと舐めた。
「……んっ……」
僕のベロが触れた瞬間、シャルから声を噛み殺したような息が漏れる。
ベロに触れたシャルの耳たぶは柔らかくてすべすべしていて少し冷たくって……なんか美味しかった。
特になにか味がしたわけじゃないのに不思議とそう感じて、もっと舐めたくなる。
「……んっ……んんっ…………んっ……んぁっ……あんっ…………」
シャルの口から噛み殺しきれなかった声が漏れ始める。
それでも、シャルの耳たぶの美味しさに我慢できずペロペロと舐め続けてしまう。
「んっ……ぁっ……んんっ……あんっ……ああっ……」
そのうち、僕のベロに合わせてシャルの可愛い声が漏れるのが……なんていうか、楽しくなってきた。
もう消毒は十分じゃないか?と心の片隅で悪魔が言っているけど、シャルの耳は美味しいし、声は可愛いしでやめられない。
それどころか……もっと……。
「あぁっ……ハルト様ぁ……も、もっと……」
そう思っていたらシャルから許可が出てしまった。
いや、シャルの言う「もっと」がなんのことかはっきりしないけど、僕は許可が出たと思ってしまった。
シャルに許されたのなら我慢する必要はない。
「はあぁっ……」
我慢をやめてシャルの耳たぶを咥えこんだらシャルの口から大きな声が出た。
「……んっ……んんっ……んっ……んんっ……」
咥えたまま更に美味しくなった気のする耳たぶをペロペロ舐めるけど、シャルは手で口を覆ってしまって、その可愛い声を聞かせてくれない。
そんな意地悪をする子にはおしおきをしないといけない。
そう思って耳たぶだけじゃなくって他の部分にもベロを伸ばす。
「……んっ!?……えっ!?そこは……んんっ……ああっ!……だ、だめっ!こ、声出ちゃ……ああぁっ!」
シャルの耳のくぼみを舐めるたびに可愛い声が聞こえてきて嬉しくなる。
耳たぶより濃い味がする気がするし、シャルの可愛い声は聴き放題だしこれは実にいい。
「あっ……ああっ!……んっ…………んぁっ!あぁっ!」
耳を舐めているだけなのに美味しくて楽しくて……なんか抑えきれない気持ちが湧いてくる。
その気持に押されるまま、今度は一番大きいくぼみ……シャルの耳の穴にベロを押し込んでいく。
「あっ!?そ、そんなところまでっ!?ダメッ!そこはダメですぅっ♡」
シャルに止められちゃったけど、言葉とは裏腹にどこか甘い響きが混じっていたのでやめてあげない。
そのまま入るだけ奥までシャルの穴の中にベロを伸ばして、隅々まで舐め回していく。
「ダメですっ♡そんなことっ♡んんっ♡あっ♡そんな奥っ♡恥ずかしいっ♡そんなとこ舐めちゃだめっ♡ダメえぇっ♡♡」
「え?うわっ!?」
穴の中をグリっと一周するように強めに舐めた瞬間、突然身を仰け反らせたシャルに抱きつかれて引き倒される。
耳を舐めるのに集中してしまっていた僕は、なんの抵抗もできずにシャルの上にのしかかるように倒れてしまった。
「シャ、シャル?大丈夫?」
調子に乗った僕に舐められすぎて、くすぐったくなりすぎちゃったらしいシャルは真っ赤な顔でぐったりと脱力してしまっている。
「ご、ごめん、やりすぎた……うひっ!?」
最後の方は完全に消毒じゃなくなってたことを反省する僕の足の間で……シャルの足が…………その……ゴリってした。
思わず慌てて引こうとした僕の腰がシャルの手で押さえつけられる。
「え?えっ!?あ、あの?シャル?」
「ハルト様ぁ……♡……もっとぉ♡」
シャルの足で自分でも自覚していなかった事態に気付かされて慌てている僕の足に、な、なんて言っていいかわからないトロンとした笑顔を浮かべたシャルの足が絡みついてくる。
シャルはそのまま両足で締め付けるように絡みつかせたままの僕の足に押し付けるように腰をゆすり始めた。
その動きのせいでシャルの足がゴリゴリしてくるし、足に押し付けられたシャルの……足の間は熱いし……。
これ絶対マズイ。
マズイのは分かっているのに、トロンとしたシャルは可愛いし、抱きついてくる柔らかい体は気持ちいいし、なにかいい匂いはしてくるし……。
「ハルト様ぁ?舐めるのやめちゃヤです♡」
甘くとろけた声でそういったシャルが横顔を……耳を僕に向けてくる。
「あんっ♡んんっ♡ハルト様ぁ♡ハルト様ぁっ♡♡」
思わず耳を咥えこんでしまった僕をキツく抱きしめながら、シャルはくねらすように全身を押し付けてくる。
「ハルト様っ♡んんっ♡気持ちいいっ♡♡すごい気持ちいいですっ♡♡」
シャルが喜んでくれていることが嬉しくて思わず体が動いてしまう。
「あっ♡手ぇ♡♡んんっ♡ハルト様の手♡ずるいっ♡♡私も手♡ハルト様っ♡♡私の手っ♡♡」
思わず動かしてしまった手に反撃するようにシャルも手を動かしてくる。
恥ずかしさが湧いてくるけど、それ以上に気持ちよさと、なぜか幸せな気持ちが湧いてきて止めることが出来ない。
「ああっ♡んっ♡♡ああっ♡♡またそんな奥っ♡♡舐めちゃダメですっ♡♡ああぁぁっ♡♡♡」
そのまま気が済むまでお互いの体を弄り回してしまった……。
やっちゃった…………。
い、いやっ!決してやってないんだけど、やらかした……。
どれくらいシャルと絡み合っていたのか分からないけど、結局二人して力尽きるまでし続けてしまった……。
力尽きて少し眠って、目を覚ましたら流石に正気に戻ってた。
シャルはまだ隣で寝てるけど、寝乱れてる姿が実にかわ……目に毒だ。
自制心のなさに落ち込んでいる割に、心の中は多幸感と満足感で満ちているんだからたちが悪い。
シャルが好意を持ってくれてたのは分かってるし、僕もその……。
と、とにかく、まだなにもシャルに告げていないのに勢いでここまでやってしまうとは……。
いやっ!決してやってはいないんだけどねっ!?
そこだけはシャルの名誉のためにも断言しておかないと。
とにかくこういうことはリンの知識がちゃんとしてからきちんとシャルについて話をして……と思っていたのに……。
本当に自分の自制心のなさが恨めしい……。
…………真剣に反省しているつもりなんだけど、幸せすぎて落ち込みきれない。
あまりのやらかしに頭の中がぐちゃぐちゃで、でも心は幸せに満ちてて……。
過去一でどうして良いかわからない状態かもしれない。
「ん……んん……」
そんな感じで悩んで?いたらシャルが可愛い声を漏らしながら目を覚ました。
そして僕の姿が目に入ると、寝ぼけ眼でニッコリと笑う。
可愛い。
「おはようこざいます、ハルト様」
「お、おはよう……」
一眠りしたとは言えまだ夜なんだけど……す、すごい気恥ずかしい。
目が覚めてきたシャルも恥ずかしそうにしているけど、勝手に「パニック状態になるんじゃないか」と想像していたのに比べればだいぶ落ち着いている。
と言うより、シャルはいつもとたいして変わらずに恥ずかしそうにチラチラと僕を見ているだけなので、僕のほうが混乱してすらいる。
慌てた様子の僕を見てシャルがクスっと可愛らしく笑う。
そして、一度小さく深呼吸をしたあと、僕の顔を見つめて恥ずかしそうに口を開いた。
「あ、あの……ハルト様のものの証、私にもちゃんと付けてほしいです……」
……なんなんだろうと思ってたらそういうことだったのか……。
三人の耳飾りの意味が分かったら、ものすごい恥ずかしくなった。
というか、みんな何考えてんの……。
…………いや、本当に恥ずかしいな。これ。
シャルたちは僕を恥ずかしさで殺しに来たんだろうか?
…………。
いや、耐えられるレベルじゃないんだけどこれっ!?
シャルは耳飾りを付けてほしそうに僕を見ているけど、ちょっとシャルの顔見れない……。
「……あ、ありがとうございます」
なんとか気を取り直した僕の前で、シャルが耳の青い宝石を光らせながら恥ずかしそうに、でも心から嬉しそうに笑った。
 




