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41話 添い寝

 夕食が終わって、寝る前のフリータイム。


 普段なら各々思い思いのことをしているんだけど、今日はみんなにちょっと広間に集まってもらった。

 

「どうしたんですか?

 大事な話があるって事でしたけど……」


 テーブルの僕の向かいに座っている子どもたちを代表して、ユーキくんが不思議そうな顔で聞いてくる。


 大事な話しなんて言って集めちゃったから、他の子達もみんな不思議顔をしている。


 僕としては一世一代の覚悟をしての話だったから、ちょっと大げさに言い過ぎたかもしれない。


「いや、ごめん、大事な話っていうのは大げさだったよ。

 別に大した話じゃないんだ」


 そう前置きをおいて、表に出さないように覚悟を決めて、本題を切り出す。


「今日からさ、添い寝はやめようと思って」


 数呼吸の間、広間に沈黙が走る。


「…………急にどうしたんですか?」


 沈黙を破ったのは、予想外にも単に「ちょっと不思議です」というような表情をしているユーキくんだった。


 もっとはっきり反対されるのを予想していたから、ちょっと拍子抜けだ。


 これなら結構簡単に説得できるかもしれない。


「いや、こういう話をするのも少し恥ずかしいんだけどさ。

 流石に最近、みんなと一緒に寝るのが恥ずかしくなってきてね。

 僕も色々と『お年頃』だし、元々僕の調子が悪かったから添い寝してもらってたんだし、本調子になった今となってはもう止めたほうが良いかなって」


 今日一日必死で考えていた理由を話す。


 概ね本当のことだし、かなり本気で恥ずかしかったけど『お年頃』の話を出すことでシャルとユーキくんには事情が伝わるだろうと思う。


 これなら断られることはないだろう。


「えっと、リン、なんか関係ないって顔してるけど、リンもだからね?」


「ナゼデスっ!?」


 いや、ある意味一番の危険人物だし……。


 この先本当に『お年頃』が来たらリンとの夜を無事越えられる自信がない。


「まあまあ、リン。

 先生、とりあえず話は分かりました。

 僕たちで話をまとめるので少し僕たちだけにしてもらっていいですか?」


「え?あ、うん?別にいいけど……。

 それじゃ、僕は部屋にいるから話まとまったら教えてね」


 話をまとめるってなんだろう?


 ユーキくんがみんなを説得してくれるのかな?


 とにかく、強硬な反対派になると思っていたユーキくんが思った以上に冷静なのにホッとしながら、広間をあとにした。




「おにーちゃん、『そいね』ってなーにー?」


「ああ、ノゾミ、随分静かだと思ったら分かってなかったのか」


 せんせえの話は、まだたまにノゾミには難しいのです。


「えっとね、先生はみんなと一緒に寝るのを終わりにしたいんだって」


 え?


「やです」


 なんでせんせえそんな事言うの?ノゾミのこと嫌いになっちゃった?


「ああ、ノゾミ、泣かない泣かない。

 先生はノゾミたちと一緒に寝るのが恥ずかしいんだって」


「……嫌いになったんじゃないの……?」


「うん、それはないから大丈夫だよ」


 おにーちゃんに抱っこされて、少し落ち着いた。


「実際、ノゾミはまだ例外でもいいと思うんだけどね。

 先生はノゾミだけ特別扱いするのはダメだと思ったのかなー?」


 それなら、今のままでいいのに……。


 せんせえがなに考えてるのかわかんない。


 せんせえと一緒に寝るとおにーちゃんよりもパパとママよりも安心して眠れる。


 一緒に寝てくれないとノゾミ眠れなくなっちゃうでしょ。


 今だって毎日一緒に寝たいの我慢してあげてるのに、せんせえはなにも分かってない。


 これからはもっとちゃんと分かってもらえるように、もっともっとギュッとして寝ようと思う。




 泣き止んでなにかを決意した表情になったノゾミを見てとりあえず安心した。


 全くハルトはなにを考えているんだろう?


 まだ幼いとは言え妻と臥所を共にすることを拒絶するなんて王としての自覚が足りないんじゃないだろうか?


 王たるもの強い子孫を残すことが何よりの使命だ。


 そのためには妻との睦まじさがなによりも肝心だとギギャーギルゥも言ってた。


 ハルトがそんなことだから、まだこの一族には子供が一人もいないんだ。


 …………いやまあ、私を含めてハルトの妻たちは成長が遅い者たちばかりだから、そのせいもあるかもしれないけど。


 なんでも人間はゴブリンよりだいぶ成長が遅いんだそうだ。


 人間の要素が強い私もそのせいで成長が遅いらしい。


 それでも、そんなのハルトの頑張り次第でなんとかなるだろう。


 私の傅役だったギギャーグギャオ将軍も子作りは男の頑張り次第だと言っていた。


 そういえば、その時に将軍が言っていたことがあったな。


「ギギャーグギャオ将軍が言っていました。

 「男が子作りをどれだけ頑張れるかは女の魅力次第」だと。

 王に拒絶されるということは、私達の魅力が足りないのではないでしょうか?」


 私の言葉を聞いたノゾミとアリスはよく分からないという表情をしているけど、ユーキとシャルは「なるほど」と言ったあと少し考え込む表情をしだした。


 人間の言葉は私の産みの親であるメスから教わっただけなので、きちんと伝わっているのか自信がない。


 そのメスはなかなか気概のある人間で、普通のメスなら産まれてすぐに捨てるようにゴブリンの手に渡す子供を、父王に頼み込んで乳離れするまで自ら乳を与え、乳離れしたあとも何かと子供にかかわるメスだった。


 父王にもその美貌とともに気概を気に入られていたメスの顔が少し懐かしくなった。


 特殊な産まれをした私を最後まで心配していたメスにいつかハルトを紹介したいものだ。


 その時に、合わせて子の紹介を出来れば言うこと無い。




 リンさんの言葉を聞いて、ちょっと考え込んでしまいました。


 ハルト様が『子供』なのには気づいていたので時を待つつもりでしたが……。


 もうちょっとアピールをすべき時期に来ているのかもしれません。


 全てご自分で抱え込んで話してはくださいませんが、ハルト様が色々と本当に……本当に辛い目にあったことは察しています。


 そのせいでそのようなことに嫌悪感を抱いていらっしゃるのも分かっています。


 一時期はそのせいで今後そういうことには興味を持たれないのかと思っていました。


 でも、寄ってたかっての愛あるスキンシップが功を奏したのか、最近はその状況も改善してきたように思えます。


 最近は私が寝たふりをしているときなど、時折ハルト様自ら私のおっぱいをお口で……。


 そういう時は私もそのまま寝相が悪いふりをして…………。

 

――18禁――

 

 …………はっ!?


 ま、またいけないことを考えてしまいました……なんてはしたないことを……。


 と、とにかくハルト様の心の傷が癒やされてきていることは確実だと思います。


 このまま一気に押し倒して……じゃないです。違います。そうじゃない。落ち着いて私。


 この状況でスキンシップが無くなると、場合によってはせっかく癒え始めた傷がまた開いてしまうかもしれません。


 そこまで行かなくても、このまま治りきらないまま傷が残ってしまい、トラウマとして残り続けるというのは十分にありえます。


 最後までゆっくりじっくりと傷を癒やすためにも添い寝をやめるなんて論外です。


 むしろここはアピールを増やして、添い寝を止めたくないと思わせるべき時です。


 そして、ハルト様の傷が癒えた暁には…………。


――18禁――




 シャルが真面目な顔をしているときは気をつけないといけない。


 もちろん普通に真面目なことを考えている時もあるんだけど、必要以上にキリッとした顔をしているときはなにか変なことを考えているときだ。


 実はシャルはけっこうな要注意人物なのだ。


 妄想が暴走して村長夫人の二の舞いになったら今度こそご主人さまが壊れちゃうかもしれない。


 それが心配で、最初の頃はシャルがご主人様に変なことをしないか、出来るだけ見張るようにしてきた。


 まあ、最近はご主人さまもだいぶ落ち着いたみたいだし、シャルへの好感度もだいぶ上がってるみたいだから万が一があっても大丈夫だと思って見張るのは止めている。


 リンが加わってからご主人さまはさらに回復してきてる。


 最初のうちは場合によってはリンを殺しちゃうかと思っていたけど、そこを乗り越えてからは色んな意味でご主人さまの調子が良くなった。


 ここ数日でさらになにか進展があったみたいで、ご主人さまが幸せそうにしててて嬉しい。


 …………同時に前以上にゴブリンの巣でのことが負担になってるみたいだけど……ある意味、それでこそご主人さまだって惚れ……見直している。


 ご主人さまは僕の世界を救ってくれるヒーローで神様なのだ。


 と言っても、最初の頃は大変だった。


 ご主人さまはすごいしっかりしているけど、それでも結局は12歳の子供だ。


 たまにその包容力のせいで忘れちゃうけど、普通ならまだまだ親のもとで育てられてる年齢だ。


 それなのに魔物に家を追われ、僕たちの面倒を見なければいけなくなって……はじめの頃はいっぱいいっぱいに見えた。


 すべてを捧げてでもボクたちのことを……ノゾミのことを気にかけてもらわないとダメだと思うくらい無理をしている雰囲気があった。


 でも、それもみんなで大泣きしちゃった時までくらいで、それ以降は自然体で、でも、すべてを委ねられるくらい頼れるご主人さまになった。


 今はもうご主人さまに見守っていてもらえれば、ボクの世界は幸せになるって確信できる。


 好き。


 …………落ち着こう。


 ご主人さまのこと考えてるとご主人さまのことで頭が一杯になってくるから気をつけないと。


 とりあえず、ご主人さまは僕たちのために体を張ってくれたせいで女の人が苦手になってしまったみたいだから、ゆっくりとでもそれを治してもらわないと。


 後々ノゾミをもらってもらうためにもそこは必須事項だ。


 そのためにもスキンシップは……添い寝は止めるわけにはいかない。


 むしろ、そろそろ次の段階に移るべきだろう。


 ご主人さまは奥手だから僕たちが頑張んないと。




 ほらー、先生が変なこと言うから、変な雰囲気になってるよー……。


 みんな先生のこと大好きなんだから、先生も難しく考えること無いのになー。


 最近、先生との添い寝にかこつけてまたユーキくんと一緒に寝られるようになったのに……。


 ただでさえお部屋が別れて寂しいんだから、変なこと言わないでください、先生っ!




「先生、みんなの意見がまとまりました」


「あ、ほんと?納得してくれた?」


「はい、全会一致です」


「良かった……。

 いやぁ、僕も寂しいけどそろそろ良い機会だと思うんだ」


「「「「「却下で」」」」」


「なんでっ!?」

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