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14話 圧勝との線引

 その後、みんなと細かく打ち合わせをして早めに就寝。


 次の日も早めに起きると、まだ暗いうちにご飯を食べて準備を整えると夜明けとともに孤児院を出た。


 ゴブリンの気配に注意しながら森を進むけど、結局洞窟までゴブリンに出会うことはなかった。


 つい先日レオンたちの襲撃があったあとだと言うのに巣の洞窟前にも一匹の見張りしかいないし、思ってた以上に戦力は残っていないのかもしれない。


 ただでさえ減っていたところをレオンたちに致命的なレベルまで減らされたというところだろうか?


 とは言え、今日は一切の油断が許されない。


「ちょっと、ここで動かないで待っててね?」


 巣から少し離れたところにみんなを任せて一人先行する。


「《隠形》」


 気配を薄くする魔法を励起して、背後から見張りの雑魚ゴブリンに近づき手早く倒す。


 死体を見えないところに隠してからみんなのところに戻った。


「それじゃ、静かについてきてね。

 くれぐれもシーッだよ?」


 一応みんなに念を押して頷くのを確認してからみんなと一緒に洞窟前まで行く。


 まだ近くに気配はないけど、ここからは手早く行こう。


「《石騎士作成》」


 地面に向かって魔法を励起すると、地面が大きくえぐれてその代わりに少し不格好な直立した石のウサギが5体立っていた。


 ……少しでもノゾミちゃんとアリスちゃんが怖くないようにと思ってウサギのイメージにしてみたけど、かえって不気味だったかもしれない。


 二人も「なんかこれじゃない」というような微妙な顔をしている。


 『石騎士』は魔法で作るいわゆるゴーレムでゴブリン・ナイトくらいなら一対一で圧倒することが出来る。


 『石騎士』たちは一体がノゾミちゃんとアリスちゃんを両手に抱き上げると、残り四体がその四方を囲む。


「《風霊召喚》」


 一陣の風が吹き付けたとあと二人の前に半透明の緑色をした小さな妖精が現れた。


 この子は風の下位精霊で、魔力を対価に力を貸してくれる。


 今日は子供たちに飛んできた飛び道具を防いで貰う予定だ。


「《火霊召喚》《水霊召喚》《土霊召喚》」


 続いて赤い妖精、青い妖精、黄色い妖精を呼び寄せる。


 この子達には少しでも近寄ってくるゴブリンがいた場合の遠距離攻撃と防御を担当してもらう。


 可愛らしい姿をしている妖精たちは二人にも好評だったみたいで、楽しそうに手を伸ばしている。


 下位精霊は人懐っこい子が多いのでこの子達も二人とじゃれてくれている。


 ……下手に気に入られると連れ去られちゃうから野良精霊には注意が必要だけど。


「《祝福》」


 最後に災いよけの魔法をみんなにかけて準備完了。


 《悪魔召喚》とか《死兵作成》なんかは守ってくれる側のほうが怖くなりそうだから諦めた。


 ゴブリンが数で来るのならこちらも数で対応する。


 これが現状でできる最高の防御策だ。


 僕に使えるレベルの魔法では離れたら制御出来なくなるから留守番させたり出来ないのが悔しい。


「大丈夫?二人共痛かったりしない?」


「ちょっとゴツゴツするけど大丈夫です」


「いたくないよー」


 《石騎士》その名の通り石だからなぁ……クッションとか持ってくればよかった。


「それじゃ、絶対守るから安心して寝ててね」


「はい」


「はーい」


 笑顔で返事をする二人のおでこにおやすみのキスをする。


「《誘眠》」


 魔法によってあっという間にスヤスヤと寝息を立てだす二人。


 これで準備完了だ。


「それじゃ、悪いけど二人の様子を見ておいてね」


「はい、分かりました」


「ま、まかせて……ください……」


 ユーキくんは力強く、シャルは恥ずかしそうに頷いてくれる。


 はじめの予定では『石騎士』をもう一体増やして二人も寝たまま運ぶ予定だったんだけど、打ち合わせの間に変えた。


 《誘眠》の魔法は対象を強制的に眠りに誘うけどそれはあくまで単なる眠りだ。


 深く眠りにはつくけど普通に眠っているだけなので、大きな音などがあれば起きてしまう。


 それを聞いた二人は、寝ているノゾミちゃんとアリスちゃんが目を覚ましそうになる気配を見ていてくれることになった。


 もし目を覚ましそうになったら一旦安全地帯に戻って魔法を掛け直すという流れだ。


 この案を提案してきたユーキくんと、出来れば二人にも寝ていてほしい僕でしばらく言い合いになったけど、結局はノゾミちゃん達の眠りを最優先にすることになった。


「怖くなったらいつでも眠らせるから言ってよ?」


 未だに諦めきれない僕がしつこくユーキくんとシャルに言うけど、二人はただ笑みを返すだけで頷いてもくれない。


 むぅ……。


 まあ、とにかくこれでダンジョンアタックの体制は整った。


 さっさと終わらせてしまおう。




 一番先頭にもちろん僕。


 そして僕からだいぶ離れて、『石騎士』に囲まれた子供たち。


「《風刃》」


 奥から出てきたゴブリンを風の刃で一薙ぎにする。


 これでちょうど10体目のゴブリンだ。


 もう巣の半ばまで来ているはずなのに、数が自慢のゴブリンにしてはぽつりぽつりと単発的にしか出てこない。


 これ、本気でほぼ壊滅状態だな。


 レオンたちは本当にだいぶ頑張ったようだ。


 もしあと少し実力があるか運が味方すればレオンたちだけでの討伐も可能だったかもしれない。


「《焼滅》」


 ゴブリンの死体に手をつくと火魔法を励起して一気に炭化させる。


 辺りに焦げ臭い匂いが充満するけどそれだけだ。


 相手に触れなければいけない上、極度の集中と多くの魔力を必要とする色々割に合わない魔法だけど、肉の焼ける嫌な匂いを発する間もなく炭化するので今だけはありがたい。


 死体を処理して先に進むと、道が3つに分かれていた。


 左右どちらにも気配があるし、正面はまだ奥に続いてそうだ。


 …………とりあえず、左から行ってみよう。


「《土人形作成》」


 左側の通路を少し削って巨大な土でできた人形を作成する。


 力仕事用で、力はあっても戦闘力はほとんどないけど、道を塞いでおく程度なら十分だ。


 2体の『土人形』で正面と右の通路を塞ぐと左の通路を進む。


 通路の先は大きめの広間になっていて、そこには傷を負って横たわる10体ほどのゴブリンとそれを守るように立ちはだかる、二体の周りよりは軽傷だけどやはり傷ついたゴブリンがいた。


 …………。


 ギャッギャッと僕には分からない言葉を叫びながら斬りかかってくるゴブリンの首を切り落とす。


 その後、動けないゴブリンたちに一体一体とどめを刺していった。




 左の部屋の後処理を済ませて右の部屋に向かうと、そちらにも傷ついたゴブリンたちが寝ていた。


 護衛、あるいは看護のゴブリンを一撃で葬り、動けないゴブリンたちにとどめを刺し後処理をする。


「さ、それじゃ正面の道に進もうか」


 一度みんなに合流してそういう僕を、ユーキくんとシャルが泣きながら抱きしめてくれた。


 ごめんね、気分のよくないもの見せて。


 大丈夫だよ、僕は慣れてるから。


 でも、問題なく勝てるとは思ってたけど、ここまで圧倒的だと気分良くないねぇ。


 まるで虐殺している気分になる。

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