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37話 まともな精霊

 そうと決まれば早速契約交渉なんだけど……。


「光の精霊さん、まだお説教中?」


 まだ火の精霊のことニコニコと見っぱなしなんだけど。


 アリスちゃんの光の精霊、ラファちゃんといい光の精霊はニコニコ顔が崩れないからなにしているか分かりづらい。


 これ、光の精霊が『温厚』って言われてるの笑顔が張り付いているからが原因な可能性あるな。


「んー、今はお説教っていうかお話しているだけだから大丈夫だと思うよー」


 お話……いや、まあ、精霊同士でもそりゃ話とかするか。


「……ちなみに、どんな話ししているか分かる?」


 精霊同士の話とか想像つかなくて興味ある。


「んー…………女の子を遊びに誘う方法?」


「…………何の話ししてんの」


 そりゃ、火の精霊も『うへぇ』って顔になるや。


「と、とりあえずちょっと話しかけてみようか、怒るようなら言ってね」


「はーい」


 元気に返事をしたノゾミちゃんが光の精霊の方を向く。


「ねーねー光のせーれーさん」


 ノゾミちゃんに声をかけられた光の精霊はすぐにノゾミちゃんの方に向き直ると、恭しげにお辞儀をした。


 とりあえず話に割り込まれて怒ったりはしていなさそうで良かった。


 あ、開放された火の精霊がホッとした表情している。


「はいっ!カミシロ・ノゾミ、三歳ですっ!」


 ノゾミちゃんは元気に光の精霊に挨拶をしているみたいだけど……なんか火の精霊がこっちよってきてるんだけど……。


 僕の背中に隠れている風の精霊が怖がるように更に僕の背中にくっつく。


 風の精霊がくっついている背中のあたりがほんのり温かい。


 すごいな、体温が分かるくらいはっきりと顕現している。


 と言うか、火の精霊が近くにいて温かいのは理解できるけど、風の精霊でも温かいということは本来精霊にも体温というものがあるんだろうか?


 なんか地味に大発見だな、これ。


 色々驚いている僕を挟んで、火と風の精霊がなにか話をしている。


 火の精霊はどこか申し訳無さそうにしていて、風の精霊はチラチラ僕の背中から顔を出して応えているみたいだし、仲直りでもしているんだろうか?


 実にほほえましい光景だ。


 …………少年と少女の仲直りが僕を挟んで行われていないのならば。


 そして、この二体がその気になったら僕なんて圧倒できる存在でなければ。


 僕にとって今の状況は微笑ましいどころか、恐怖に近い。


 僕を挟んでケンカでもされたら、多分僕死ぬ。


 かと言って、なにが逆鱗に触れるかわからないから逃げたりすることも出来ない。


 無事仲直りをしてくれという祈りが通じたのか、二体がちょっとだけぎこちなく握手を交わす。


 僕を間に挟んでいなければ良い光景なのに……。


 そして、そのまま僕の左右にピッタリとくっついたまま話をしだした。


 なぜ?


「せんせー、話し終わったよー。

 …………なにやってるの?」


 それはむしろ僕が聞きたい。


 いや、そんなことを言っている場合じゃないな。


 僕が二体に気を取られているうちにノゾミちゃんは光の精霊との話を終わらせていたらしい。


「ご、ごめん、光の精霊さんはなんだって?」


 僕の左右にくっつく二体に対抗するように抱きついてきたノゾミちゃんの頭を撫でながら聞く。


「えっとね、魔力あげればお友達になってくれるってー」


 魔力か……。


 僕もブリーゼとはそれで契約しているし、精霊との契約の対価としてはありふれたものだ。


 ただ、ありふれすぎていて中位以上の精霊の対価としては聞いたことがなかった。


 対価が軽いのは良い事だとは言えるんだけど、魔力を対価にした場合、《精霊召喚》で呼び出した時以外にもなにか精霊にお願いをするたびに魔力を持っていかれることになる。


 しかもその時に持っていかれる魔力は精霊の気分次第なので、下手すると精霊にお願いするよりも自分でその分の魔力を使ったほうが効果的ということにもなりかねない。


 僕は戦闘なんかの時は《魔力循環》でズルをしているから魔力の消費は気にしなくていいけど、ノゾミちゃんの場合はそうは行かない。


 うーん……上位精霊に持っていかれる魔力ってどれくらいなんだろう……。


 それこそ自分で戦ったほうが強いくらいの魔力を持っていかれる可能性があるけど……それはノゾミちゃんに戦う力がある場合の話だ。


 今は外付けの戦力がなんとしてもほしい。


 そう考えれば魔力で済むのは破格か。


「えっと、ノゾミちゃんはそれでもいい?

 魔法、あんまり使えなくなっちゃうかもしれないけど」


「うん、いーよー」


 今のところ日常的に魔法を使うことはないので、不便らしい不便はないだろう。


「それじゃ、光の精霊さんに友だちになってくださいってお願いしてみようか」


「はいっ!

 光の精霊さん、お友達になってくださいっ!」


 ノゾミちゃんがお辞儀をすると、光の精霊さんも嬉しそうに笑みを強くしてお辞儀を返してくれる。


「精霊さんお友達になってくれるってっ!」


「良かったね、ノゾミちゃん」


 喜んでいるノゾミちゃんの身体を光の精霊がそっと抱きしめて……一瞬ノゾミちゃんの身体が光り輝く。


 これで契約完了だ。


「え?名前?

 えーと……えーとね……」


 光の精霊につける名前を聞かれたらしいノゾミちゃんが、可愛らしく悩んでいる。


「えーと……ピカピカ光ってるから……ヒカリちゃんっ!」


 え?


 そのまんまな名前だ。


 でも、光の精霊も嬉しそうにしているし、それで決定みたいだ。


 ま、まあ、お互いが気に入っているのが一番だ。


 なんか僕の左右の二体もパチパチと拍手をしているし。


「えへへー♪」


 また抱きついて嬉しそうな笑顔を向けてくるノゾミちゃんの頭をワシワシと揉むように撫でる。


「お疲れさまでした。お友達増えてよかったね」


「うんっ♪」


 その様子を光の精霊……ヒカリさんがニコニコと笑いながら見ている。


 なんか保護者みたいな雰囲気だな。


 やっとまともな精霊が来てくれたかもしれない。


 そんな失礼な考えを慌てて打ち消した。


 ポチちゃんもラファちゃんもちょっと変わった子だけどいい子。


 ……うん……ちょっと変わってるけど。




「さて、そうするとあとの二体はどうするかなー?」


 無意識のうちに頭を撫でていた左右の二体を見る。


 ちょうどいい感じのところに頭を差し出してくるから、思わず撫でてしまっていた。


 悪い子達ではなさそうだけど、戦力って意味ではヒカリさんで足りちゃってるからなぁ。


 下手な危険を犯す必要はないと考えるか、それとも戦力は増やしておくに越したことはないと考えるか……。


「…………二人とはお友達にならないの?」


 ちょっと悲しそうになったノゾミちゃんの顔を見て決まった。


 そうだな、友達は多いに越したことはない。


「それじゃ、二人にもお友達になってくださいってお願いしてみようか」


「はいっ!」


 元気よく嬉しそうに返事をするノゾミちゃんの頭をもう一度撫でた。

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