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追憶の探偵  作者: 兎束作哉
第4章 追憶の探偵
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case02 お前のためだよ



 俺たちの間に沈黙が流れた。

 事の発端は、神津が俺が構ってくれないと言い出し、「もうすぐ、僕の誕生日なのに」と呟いたこと。

 気持ちの悪い沈黙が続き、耐えられなくなった俺は観念して頭を掻きむしりながらキレながら神津を指さした。



「お前の! お前の誕生日に向けて依頼一杯受けてんだよ!」



 そういえば、神津はキョトンとした表情で何で? と訳が分からないというように俺に尋ねた。

 確かに、これだけでは説明が不十分な気がする。と言っても、素直に話せるほど俺には度胸はないし、言えばどれだけ神津が喜んで跳ね回るか分かったもんじゃない。そっちの方が面倒くさいと、口を閉じて入れば、いってくれないの? と神津は若竹色の瞳を潤ませて俺を見てきた。そういう顔に弱いことを知っていて、わざとしてくるところを見ると、本当にたちの悪い奴だとつくづく思う。



「何で? 何かそれと僕の誕生日って関係あるの?」

「だーかーら、金貯めてんだよ」

「僕へのプレゼントを買うために?いいよ、別に安いものでも。春ちゃんと一緒にいられるなら」

「俺が良くない!」



と、俺が大きな声を出すと、神津はビクッと肩を上下させる。


 だが、反発するように「一緒にいたくないの?」と意地悪に聞いてくるもんだから、俺はわざと聞えるように大きなため息をついた。



「春ちゃん酷い! 僕の誕生日祝いたくないんだ!」

「んなこと、いってねえだろ!」

「じゃあ、何でため息をつくの?」



 神津は畳みかけるようにそう言ってくる。

 もう、本当のことをいうしかないのだと俺は覚悟を決めて息を吸ってはいた。それが、また溜息に聞えたのか、神津は頬を膨らましていた。そんな神津を呆れながら見て、俺はスマホを取り出しとあるページを神津に見せた。



「ここって……」

「ジュエリーランド……柄じゃねえし、お前は別に行きたくないかもだけど、ここ、誕生日に連れて行ってやるよ」



 そう俺が言えば、神津は目をキラキラと輝かせた。

 ジュエリーランドとは、隣の市、双馬市にある人気のテーマパークで、家族やカップルで連日賑わっているところだ。そこまで興味はなかったが、恋人らしい事と言えば、誕生日デートと言えば、これぐらいしか思いつかなかった。

 喜んでくれるとは思っていないし、嫌だといわれれば場所を変えるだけなのだが、ここの良いホテルを取って通常入園時間よりも先に入れたらと色々計画を立てていた。当日まで黙っていようと思ったが、それまでに神津との関係が悪化したら不味いと思い、俺は誕生日デートの事を暴露した。



「んだよ、嫌なら嫌っていえ……わっ、いきなりくっつくなよ」



と、俺が神津から距離を置こうとすれば、神津は勢いよく抱きついてきて、そのままソファに押し倒された。そして、俺の顔の横に手を置いては覆いかぶさるように顔を埋める。



「はあ~僕すっごく幸せ」

「まだ、予約してねえんだけど」

「それでもだよ。だって、それって春ちゃんからのデートのお誘いって事でしょ?嬉しくないわけがないよ。何か、これぞまさに恋人らしい事だよね」

「らしいというか、恋人……だろ」



 そうだった、そうだった。と神津は声を弾ませて言う。


 本当に単純な奴だと思いつつ、神津の言うとおりあのデートとも言えないデートをしたっきり、忙しくてデートに行けなかった。だから、これが二回目のデートということになる。今度はしっかりプランを立てて……と、思っていたから本格的なデートはこれが初めてだ。やっと恋人らしい事が出来ると思った。これまでは、すれ違っていたり、離れていたりしたから。こういうのを増やしていければと思う。



「そういえば、ジュエリーランドって、本物の宝石店がある珍しいテーマパークだよね?」

「ああ、そんなこと書いてあったな」

「僕いきたいところがあるんだけど」



と、俺のスマホを奪った神津はジュエリーランドのホームページに目を通し、とあるページを開くと俺に見せてきた。


 そこに表示されていたのは、神津の言う宝石店。何でもそこでは宝石を売っているだけじゃなくて指輪も売っているとか。



「ここで、ペアリングかいたいなあーって思って」

「いつ、つけんだよ」

「いつって、常時?」



 神津はそう言いながらクスクスと笑っていた。本当に無邪気な子供そのものの笑顔でいうもんだから、俺は思わず溜息が出る。呆れているわけではない。



(ペアリングか……つかそれって)



 俺は、とある単語が頭に浮かび一気に顔が熱くなった。それを逃さず、神津はにやっと笑う。



「な~に、春ちゃん考えてたの?」

「べ、別に何も考えてねえよ」

「指輪をかうとか、あげるとか……それってプロポーズみたいって思った?僕も思った。というかそういうつもりでいった。ペアリングつけたらそれってもう、結婚、ふうふだよね」



 などと、神津は平然と言ってくる。


 考えていることはお見通しのようだ。だが、バレていると分かっていても、口には出したくないので俺は顔を逸らす。神津は、その間も俺の頬をつついて弄ってきているようだったが無視を決め込んだ。

 神津を軽くあしらいつつ、頭の中では、まあまだ日にちはあるし、それまでもう少しお金を貯めよと考えていると、突如電話が鳴り響いた。

 上に乗っている神津を押しのけようとしたが、神津は出なくて良いじゃんと離してくれない。だが、依頼かも知れないと俺は神津を何とか押しのけて電話を取った。



「はい、こちら明智探偵事務所です」




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