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追憶の探偵  作者: 兎束作哉
第2章 逆恨みの探偵
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case14 単独調査の危険性



「ここも違うか」



 昼食を済ませ、昨日×印をつけた箇所を順にまわっていったが誘拐犯の痕跡も監禁為れた後もないただの廃墟に俺たちは溜息をつく。

 今日回ったのは廃ビルに廃アパート、その他2カ所まわったが全て不発だった。この四ヶ所は全て外れで、残りは十六カ所なのだが、場所がまちまちで一日でまわりきれない。後数カ所まわったら今日は解散にするかと、自動販売機で買った炭酸を小林に渡しながら思った。小林もかなり疲れているようだし、徒歩かバスで移動しているため、体力的にも限界だろう。



「小林、疲れてないか?」

「はい、大丈夫です! 明智さんにまた昼ご飯を奢ってもらって……元気でました!」

「ほんとお前ってしっかりしてるよな。本当に、小学生か?」



 そんな軽口を叩けば、小林は嬉しそうに笑みを浮かべた。

 小林との時間は悪くなかった。それは多分、小林が大人びていて聞き分けが良く、空気を読むことが出来る子供だからだろうと、ふと思う。

 それを気にくわないというように見る神津の視線が刺さって仕方がなかったが、子供に嫉妬するなんて見苦しいぞといえば、神津はふいっと顔を逸らしてしまった。



「妬いてんのか?」

「べっつにー」



 そう言いつつも神津は俺の腕にしがみついてきた。俺は、神津の頭をポンッと叩くと、そろそろ行くかと促した。

 現在の地点から数分歩いたところに四階建ての廃マンションがある為そこに向かうことにした。調べたところ二階から四階はかなり荒れているらしくとてもじゃないが人が入れるようなところではないらしい。何でもガラスが散乱していて足の踏み場がないとか。となると、一階だけしか実質使えないことになるが、そんなところにわざわざ監禁しないだろうとも思った。だが、念のために調べることにしたのだが、道中で神津がピタリと足を止め、声を上げた。



「あっ!」

「何だよ、いきなり大きい声出しやがって」

「さっきのファミレスに財布忘れてきちゃった……」

「はあ!? 今すぐ取りに行けよ、盗まれてたらどうすんだよ」



 俺達の食費が――とは、いわずに飲み込んだが、俺は神津以上に慌てて今すぐ取りに行ってこいと怒鳴った。神津は、俺と小林を交互に見て、少し迷っているようだった。



「何してんだ、早く行ってこいよ」

「へーそんなに、春ちゃんは僕にいって欲しいんだ」

「そういうことじゃねえし、財布の中身、他にも大事なもんはいってるだろ。お前が取りに行っている間に、俺たちはそこのマンション見てくるからよ、時短だ、時短」



 しっしっと、手で追い払う仕草をすれば、神津は渋々といった様子で、来た道を戻って行った。

 神津が戻ってくる前にと、俺たちは急いで目的の建物に向かった。建物は想像以上に朽ちていてとても人が住めるような場所ではなかった。窓ガラスは割れ、コンクリートの床にはヒビが入り、壁にはスプレーで落書きがされていた。今日まわった中で一番酷いものだった。

 だが、もしもこんな所に誘拐されているのだとしたら……その可能性がないわけではないので、俺は一階の入り口に向かって歩く。その後ろを小林がついてきたが、俺は足を止める。



「小林、ここから先は俺一人で行く。だから、ここで待っていてくれないか?」

「でも、僕も……」

「犯人がいるから危ないっていうよりかは、建物が崩れないかっていう方が心配なんだ。ここはもう使われなくなって長いみたいだしな。それに、もし崩れたりなんかしたら、生き埋めだぜ?それに、ここで見張っててもらうっていう役割もある。どうだ、頼めるか?」

「……わかりました」



 素直に言うことをきいてくれたことに安堵した俺は、小林の頭を撫でると、建物の中に入った。

 足下をネズミが駆けていき。壁はひび割れ、天井からは蜘蛛の巣が垂れ下がっている。中も思っていたよりも酷かった。



「こりゃ、酷えな……」



 コツンコツンと自分の足音だけが響くが、それに混じって誰かが何かを叫ぶ声が聞えた気がした。俺は耳を澄ませながら辺りを見渡し、歩き勧め一室一室まわっていくととある部屋の中で何かがうごめいた。俺は慎重にその部屋の中に足を踏み入れる。部屋は荒れ放題で、ベッドのシーツは引き裂かれ、枕は真っ二つに切り裂かれている。

 そして、部屋の隅の方では少女が一人、両手両足縛られて転がっていたのだ。

 俺は慌てて少女に近付くと、彼女は俺に気づきじたばたと足を動かし始めた。口に張られているガムテープをゆっくりと剥がし、縄をほどこうとしたとき、少女の目が大きく動いた。否、俺の背後にいる何かを捉えたのだ。



「おい、大丈夫か。今すぐ助けて……」

「――――お兄さん後ろ!」

「……ッ!」



 その瞬間、ガツンッと堅い何かに頭を殴られた。




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