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追憶の探偵  作者: 兎束作哉
第2章 逆恨みの探偵
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case10 探偵入門



「春ちゃん腰やるよ~」

「明智さん大丈夫です。僕、一人で歩けます」

「いいんだよ、ガキは大人に甘えろ」



 ファミレスでたっぷりと小林から話を聞き、大分情報が整理された俺たちは誘拐犯の居場所を突き止めるべく歩いていた。

 小林はまだ八歳という年齢なのに、大人に対しても礼儀正しくて大人しい。今の小学生は皆こんな感じなのか? と、自分の小学生時代の頃のことを思い出す。




『ほら、恭、カブトムシ』

『うわっ、春ちゃん僕虫苦手だっていったよね?』

『んだよ、格好いいのに。あっ、カエル!』

『カエルはもっとにがてぇ!』




 今の家、事務所に引っ越す前は捌剣市の大分北の田舎に住んでいたため周りには田んぼもあったし、気軽に遊びに行けるような山もあった。ここよりかよっぽど自然豊かで、夏には川にだって遊びに行った。あの頃は、何故か虫が好きだったからよく捕まえにいっていたが、カブトムシを見せただけでも神津は嫌がって逃げてしまった。虫が苦手といいながら、俺が山に虫取りに行くといったらついてきたのは不思議だった。あの頃から、遊ぶのはいつも二人だったなあと、ぼんやりと過去の事を思い出していた。



「春ちゃん嬉しそう。何かいいことあったの?」

「ん? いや、別に。昔のこと思い出してただけだ」

「昔っていつの?」



 そう尋ねる神津は、俺が過去の事を思い出しているのが不思議とでもいわんばかりに顔をのぞき込んだ。俺はそんな神津をちらりと見つつ、小林を落とさないようにしっかりと足を掴んだ。

 確かに、昔のことを思い出すのは辛いし避けてきた。それでも、ふと浮かんだのは楽しかった子供時代の記憶で、あの時はお互い今よりももっと近くて、もっと素直だったなあなどと思う。


 どうして、大人になった今、あの頃のように素直に接することが出来ないのだろうかと。秘密ばかりでお互いに壁を作っている、そんな気さえする。

 俺の返答を待っているのか、神津はふわりと俺に微笑んだ。俺は、そんな神津にため息をつきつつも、仕方なく口を開く。



「俺たちが小学生の頃。今の小林と同じ八歳ぐらいの時か」

「春ちゃん、あの頃やたらと虫好きだったよね。今じゃ、ゴキブリ見ただけで発狂してるのに」

「それは、お前も一緒だろ」



 そう俺が言えば、神津は「今も昔も、虫は無理でーす」と口を尖らせながらいっていた。それでも、幾らか神津の口の端は上がっていたし、彼も昔を懐かしんでいるように思えた。こうして、昔のことを思い出して盛り上がる事が出来たのは初めてかも知れない。

 そんな風に、俺たちが昔のことを話していて、会話に混ざれない事を寂しく思ったのか、小林が俺の名前を呼んだ。



「あ、あの。明智さんと神津さんってお、お友達なんですか?」



と、小林は俺たち二人に質問を投げた。


 その質問は不味いなと思いつつ、神津が何かを言う前に答えようと口を開いたが、数秒神津の方が早く口を開いた。



「幼馴染みだよ」



 俺はその言葉を聞いて目を丸くした。

 てっきり恋人同士だって答えると思っていたため、神津の言葉は以外だった。



(この間は、恋人だっていっただろうが……)



 倉庫での出来事の後、少女と帰る途中、神津は少女に俺たちの関係は恋人だと暴露した。だが、何故か今回は「幼馴染み」と提起した。その差は何だろうと、口を開かず聞き耳を立てれば、神津は続けて口を開く。



「生れた市も一緒で、家が隣同士で小学校までずっと一緒だったんだよ。春ちゃんとは一番長い付き合いかな」

「そうなんですね。幼馴染み……親友同士って事ですか?」



 そう小林はさらに質問をした。

 その質問に対し、神津はどう答えるのだろうと俺が黙っていると、神津は意地悪げに「どう思う?」と質問を質問で返していた。

 俺の肩の上に乗っている小林は少し困ったように、しばらくの間考えてから神津の質問に対しての答えを出した。



「さっき、明智さんが神津さんの事相棒って言ってたので、親友……だけど、またそれとはちょっと違う、特別な関係、だと思います」



 小林の答えは実に綺麗なものだった。

 小林の目にはそう映ったのかと思うと同時に、先ほどの会話をしっかり覚えていてくれたことにも感心した。別に子供が忘れっぽいとかはいわないし、大人ですら興味がないことは忘れるのによくあの何の変哲もない自己紹介のことを覚えていたなと思った。


 やはり、彼みたいな助手が欲しいと思ってしまう。

 相棒とはまた別に、俺は小林に色々教えたいと思った。俺が教えられる事なんて知れているし、教えられる立場でないことも理解しているが。



「う~ん、惜しいね。特別な関係っていうのはあってるけど、親友……とはまた違うかな」



と、小林の答えに対し、神津はそう答えた。


 小林は自分の推理が外れていたことに落ち込みつつも、そうなんですね。と素直に認めた。



「じゃあ、そんなとわ君にチャンスをあげましょう。この事件が終わるまでに、僕と春ちゃんの関係を当てられたら何でも一つだけお願い聞いてあげるよ」

「は? 神津何言って……」

「春ちゃんは黙ってて。ただし、一日一回までしか答えられません。勿論、ヒントは僕の口からはいわない。ね? どう? 面白いでしょ」



 そう神津は悪戯っ子のように笑った。趣味が悪いと思いつつ、小林はどう答えるのかと待っていれば、小林はまるで推理ゲームが出来ると行った感じにわくわくといったかんじのオーラをかもしだしていた。

 俺からはもう何も言えない。



「面白そう! ……です!」

「よろしい!じゃあ、探偵入門第一問だね。君が答えまでたどり着けるか楽しみにしているよ」



 神津はそういうと小林に対して挑戦的な笑みを浮べて目を細めた。



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