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追憶の探偵  作者: 兎束作哉
第1章 売れない探偵
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case12 難航



「マモちゃん出ておいで~」

「んなこと言って出てきたら苦労しねえだろう」



 次の日、朝っぱらから安護さんの依頼で黒猫のマモを探す為、俺達は公園に来ていた。

 最後に見かけたのは家だったそうだが、黒猫のマモは公園やら日差しの差し込む住宅街やらを好むらしい。

 だがしかし、情報を頼りに探してもそう簡単に見つかるはずもなく、かれこれ一、二時間は探している。神津も依頼がなかったため一緒に探してくれているのだが、如何せんこいつはやる気がない。



「わかんないよ? マモちゃんは見つけてもらいたくて逃げたのかも知れないし」

「お前、猫の気持ちわかんのかよ」



 そういうと、神津は一瞬きょとんとした顔を見せたがすぐに笑った。

 何で笑っているんだと言い返そうとした時だった。ガサガサと茂みが揺れる音がして、思わずそっちを見ると、そこから飛び出してきた黒い塊。それが何か分かった瞬間、俺は反射的にそれを捕まえていた。

 それは勢いよく俺の手から抜け出すと、そのまま逃げようとするので首根っこを掴む。すると、観念したかのように大人しくなった。それを確認してから、ゆっくりと手を離す。



「こいつじゃね!?」



と、もしかすると最短記録で見つけれたかも知れないと喜んでいると、神津が猫の顔をのぞきながら首を横に振った。



「んだよ」

「瞳の色が違う。後、小さすぎるんじゃない?」



 本当に、猫探し探偵なの? と少し嫌味を混ぜつつ神津が言う。それに反論できずに黙り込んでいると、神津は疲れちゃったね。と背伸びをしていた。

 お前の依頼じゃないんだから付合いたくなければ、付合わなくてもいいのにと口から出そうになったので、グッと飲み込む。

 神津の言うとおり、俺のところにくる依頼など知れていて、その中でも猫探しは一番多かった。だからこそ、猫を探すのにはなれていると思っていたのだが、今回の依頼はそう簡単にはいかないらしい。黒猫とは珍しいのに、こうも見つからないものなのかと不思議に思ってしまう。



「猫探偵さん、まだ見つからないかにゃー?」

「誰が猫探偵だ。つか、それやめろ。馬鹿にしてんのか」



 ご丁寧に、指先を丸めて猫のポーズを取った神津に睨む。

 その反応が面白かったらしく、神津はクスリと笑う。そして、冗談だよ。と言うと、神津はふと空を見上げた。

 釣られて見上げると、そこには雲一つない青空が広がっている。こんなにも晴れているというのに、猫は何処に隠れてしまったというのだろうか。



「からかいたいんだよ、春ちゃんのこと」

「……俺はぜんっぜん面白くねえから」

「春ちゃんの毛って癖っ毛で、黒髪だしほんと猫みたいなんだもん」



 ね? と同意を求められたが俺は返事をしなかった。

 その反応が求めていたものではなかったのか、神津は俺の頭はくしゃくしゃとなで始めた。やっとの思いでセットした髪の毛は神津の攻撃で、ぐっちゃぐちになってしまった。俺はその手を払う。



「チッ、やめろよ。セットに時間かかるの知ってんだろうが」

「あはは、春ちゃんってば可愛い」

「うぜえ……」



と、そんなやり取りをしていると、神津の携帯が鳴る。


 メールのようで、相手を確認するなり神津は苦笑いを浮かべた。そして、少し待ってて。と一言残して神津はその場から立ち去った。

 俺は、仕方なしに一人でベンチに腰掛けて待つことにした。

 今日は暖かいからか、公園で遊ぶ子供たちの声が聞こえる。平和そのものの風景を眺めていると、眠気が襲ってきた。俺は、欠伸をしながら目元を擦る。



(ああ、駄目だ。寝ちまいそうだ)



 瞼が重い。

 そんなことを思いながら、意識が遠のいていく中、誰かに名前を呼ばれたような気がした。



「――――るちゃん、春ちゃん」

「んぁ……?」



 神津が戻ってくると同時に肩を揺すられ、目を覚ます。

 目を開ければそこには端正な神津の顔が至近距離にあり慌てて身体を捻ろうとしたが、頭を両側から挟まれ身動きが取れなくなってしまう。



「お姫様は、王子様のキスで目を覚ますんだよ。だからね、まだキスしてないから春ちゃんは目を開けちゃいけないの」

「……かみ、っ」



 ちゅっと唇に触れる柔らかい感触。

 俺は驚いて、神津を突き飛ばした。しかし、俺よりも力がある神津はすぐに離れることなく、俺の頬に手を添えるともう一度口づけてくる。今度は触れるだけでなく、深く。



「はい、起きた?」

「神津、お前……ッ!」

「おはよう、春ちゃん。寝ている春ちゃんの顔も最高に可愛いけど、まだちょっと寒いから風邪引くかもよ?」



と、悪びれもなく言ってのける神津に怒りが込み上げてきた。


 俺の怒りなど気にもせず、神津は満足そうに微笑んでいた。そんな神津にさらにカチンときて一発殴ってやろうかと思ったとき、俺たちの前を黒い塊が横切った。


「あっ!」




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