追憶
十年という時間は俺たちには長すぎた。
埋まらない十年間、ただひたすらに離れた恋人を待った十年間。
幼馴染みとしてずっと隣を歩いた十二年と、離ればなれになっていた十年。
そして、ようやく手を繋げるように触れられるようになったのは二年前。
空白の十年を埋めるにはたった二年じゃ足りない、足りるわけがない。
空白の十年間、俺達は触れられず、互いの声も聞かなければ言葉も送ることはなかった。それでも、恋人だと言い張って互いの心の隣に自分の存在を置き続けた。居座り続けた。
その弊害が、触れられるようになったここ数年で出始めている。
距離感が分からない、合計すれば十二年も恋人だったのに互いの存在を隣で感じ、恋人として手に触れて身体を重ね始めたのは二年だけ。
果たしてこれは恋人と言えるのだろうか。
そんな疑問もさることながら、幼馴染みで相棒で恋人で。
どんな関係であれ互いを必要とした俺たちは、その3つの曖昧な線引きに悩まされている。
もっと素直になっていれば、もっと好きだと言っていれば、もっと違う幸せを手に入れていたかも知れないのに。
後悔しても失った時間はかえってこない。
いつか忘れてしまう声も、匂いも、その顔も。
相手が自分の記憶の中だけに生き続ける存在になってしまっても。
それでも――――、
今日から8月終わりぐらいまで毎日更新、連載をします。
前作『百日草の同期』の1年後のお話ですが、未読でも楽しんでいただけると思います。
ジャンルは前作同様、BL&ブロマンスなので、苦手な方は、どうぞブラウザバックして下さい。
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