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暴れ馬

 街の外へと続く西門付近にて、石畳を金属が打ち鳴らす派手な音と、大音量の野次が飛び交っている一角があった。


 まるで荒々しくタップダンスでも踊っているかのような、石と鉄が擦れるガツンガツンという音。


 お祭り騒ぎするように高らかと笑う声と。

 怒りにいななく憐れな動物の鳴き声と。

 仕切る男の声。


 やがて怒るように興奮しきった『馬』が、その蹄を叩くように石畳に打ち付けて高々と後肢で立ち上がる。

 上に乗っていた男はこれにたまらず手綱から手を離し、後ろにころんと落ちそうになったところを、体勢を立て直した馬がすかさず男の腹に蹴りを入れて吹っ飛ばす。


 大歓声があがって、男の元に幾人かの人間が駆け寄っていった。


「ドークズの旦那の記録は三分! 三分だ! 今までで一番長いぞ!」


 その様子を眺めながら、仕切る男が声を張り上げる。

 吹っ飛ばされた男の心配など微塵もしていない様子だ。


「おら、お前ら! 縄を持て! 全員で催眠魔法をかけて眠らせろ! どうせ結界の中だ! 遠くから当てろ! ほら早くしろ! 次の客が乗れねぇだろうが!」

「へい、旦那。ただいま!」


 馬の持ち主なのだろう、仕切る大男と、取り巻きの男達がいっせいに縄と怪しい色の魔法を放ち、興奮しきって逃げ出そうとしていた馬を拘束していく。


 どう考えても憐れなその光景だが、その場には誰もこの馬を心配してやる人間などいなかった。


「どうだぁ!? このクソ馬に一番長く乗れたやつに賞金をやるぞ! この役立たずは明日処分される! 挑戦するのは今のうちだぁー! さあさあ! 次なる挑戦者はいないのか!」


 魔法を受け、たまらず膝を折って石畳に座り込む馬を、五人がかりで男達が押さえつけている。


「さっきのドークズの旦那が優勝かー!? 本当にもう挑戦者はいないのかー!? なら……」


 男が勝者と、馬の末路を決定づける言葉を言おうとしたそのとき。


「私がやろう」


 喧騒の中でも不思議とよく通る女の声がした。


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