豪炎の魔女
「ううぅ、はあぁぁ。」
寝てたのか。体が重い。ええと、俺はどうなったんだっけ?確かトラを倒して、それで...
「あら、目が覚めたのね。」
「誰だ!」
「ゴメン、ゴメン。驚かせちゃったわね。」
誰だ?この綺麗な女の人は?
「君、名前はなんて言うの?あなた、森で倒れていたのよ。」
「僕は、イチジョーマサトです。僕を助けて頂いたのですか?」
「名字?あなた、貴族の子なの?」
「え?あっいいえ違います。間違いました。マサトです。それで、僕を助けて頂いたのですか?」
名字が消えていたのは貴族しか名字を持っていないからなのか。危ない危ない。早速ミスるとこだった。
「ええ、そうよ。」
「助けて頂いたてありがとうございます。えーっとぉー、」
「セレスよ。」
「セレスさん、ありがとうございました。」
「あなた、お母さんやお父さんはいるの?」
「いえ、いわゆる捨て子ですかね。」
「やっぱりそうなのね。しばらくここにいるといいわ。」
「それは助かります!ありがとうございます。」
「いいのよ。ところで一つ聞きたいことがあるのだけど、良い?」
「いいですよ。」
「ゲリュオンを倒したのはあなた?」
「ゲリュオンって大きいトラに翼が生えたみたいなヤツですか?」
「トラ?ゲリュオンは一応ドラゴンなのだけれど...で、あなたが倒したの?」
あれ、ドラゴンだったのか。でも四足歩行だったぜ?翼はあったけど小さくて飛べそうになかったし。
「はい。急に出てきたので焦りましたがなんとかなりましたけど、何か不味かったですか?」
「いいえ、別に不味いことはありませんよ。いや、不味いと言えば不味いのかしら?それよりもあなた!」
「は、はい!」
「ゲリュオンを倒した事の重大さが分かってる?ゲリュオンはA級の魔物なのよ。あれは、Bランクの冒険者が束になって討伐するものなのよ。ここにもゲリュオンが現れたと聞いて討伐隊が編成されていたのよ。」
アイツ、そんなに強かったのか。動きがトロかったからなにもされなかったぞ。
「そういうことを知ってるってことはセレスさんも冒険者なんですか?」
「ええ、そうよ。これでもAランクのね。豪炎の魔女って言われてるわね。知ってる?」
「えっあ、いや、すいません。知らないです。」
「そっか、私もまだまだね。」
「豪炎の魔女ってことは火の魔法が得意なのですか?」
「ええ。そうよ。火魔法は七階位まで使えるわ。オリジナル魔法の豪炎がそのまま二つ名になったわね。一応氷魔法も五階位までは使えるわよ。」
「階位というのは何ですか?」
「まさか知らないの?階位っていうのは魔法の等級のようなものよ。魔法のスキルレベルが1で使える魔法は第一階位魔法、スキルレベルが2で使える魔法は第二階位魔法って感じで呼び方が決まってるの。」
「そうなんですね。ではセレスさんは、火魔法はスキルレベルが7で氷魔法はスキルレベルが5なんですね?」
「ええ、そうよ。」
「そういえばあなた、体の方は大丈夫なの?」
「少しだるい感じはしますが大丈夫です。」
「そう?でも今日はご飯を食べて休みなさい。ここの部屋を使ってていいわ。」
「はい。ご配慮ありがとうございます。」
「気にすることないわよ。じゃ、ご飯できるまで待っててね。」
「はい。」
ふぅー。いい人が居てくれて助かった。あのまま放置されていたら魔物に食べられていたかもしれないしな。てかそもそもなんで俺は倒れたんだ?
❮MP切れによるものだと推測します❯
誰だ?俺に話しかけたのは。でもこれ、頭に流れ込んで来てるような感じがするんだよな。気のせいか。
❮気のせいではありません❯
ん?またなんか聞こえたような....
❮聞こえているはずです❯
これ、もしかして気のせいじゃないのか?なんかこれ、どこかで聞いたような...
あ、レベルが上がりましたって気を失う前に聞いたのと同じだ。
❮その通りです❯
やっぱりそうか。というかお前は誰なんだ?
❮私はゲリュオンについていた加護です❯
なんでゲリュオンに加護がついてるんだ?
❮魔王がゲリュオンに足りない知恵をあたえるために授けたからです❯
げっ魔王なんて居んのか。じゃ、今回の事のせいで魔王に目をつけられてたりしないよな...えぇっと、それで知恵を補うためってことはお前は知恵の加護的な加護なのか。
❮肯定します❯
それがなぜ俺のところに?
❮それは分かりませんと謝罪します。通常は加護の持ち主が死んだら加護も消滅するはずなのですが❯
そうか。まあいい。お前、便利そうだからな。じゃ、レベルアップしたみたいだしステータスを確認してみるか。“ステータスオープン„