第2話 結成アイン隊
教官に呼び出された俺達は本部5階にある第一会議室へと来ていた。
そこには先程声を張り上げていた教官とどこかで見た事のある質のいい鎧を纏った厳格な風貌の男も居た。
「第六新兵隊、到着致しました。」
普段おちゃらけているカイルも流石に上官相手に粗相はせず敬礼をする。
残りの3人もそれに続く。
「ご苦労!お前達は本日付けでここより西に位置するハインズでの任務に当たってもらう!」
突然過ぎて話についていけないんだが…要するに異動ってことか?
「それに当たりお前達には勿体ない御方が指揮を執る、ローランド殿だ。」
隣に居た鎧姿の男は1歩前に出る。
「これより君達の隊長となる事になった、アインベルグ・ローランドだ、アインと呼んでくれて構わない。よろしく頼むよ。」
名前を聞き思わずエルは驚愕する。
「ロ、ローランドって…あの英雄格の!?」
おいおいまじか…!どうりでどこかで見たはずだ。数年前法国との紛争を鎮める立役者となった英雄格の騎士じゃねェか!
「ちょ、ちょっと待ってくれ、なんでその英雄様が俺達の隊長に!?話が急過ぎて訳わかんないんすけど!」
カイルの言い分も最もだ、アインベルグ程の騎士になれば一個師団を任されるのが必然、それが何故新兵上がりの小隊に配属されるのか。
「色々と訳はあるが、こうも質問だらけでは私としても何から話せばいいか分からなくなるな、順を追って話そう。まず1つ、私が英雄格などと呼ばれていたのは過去の話だ。今は違う。」
「過去の話ですか…?」
意味ありげなアインの発言にエルは首を傾げる。
「恥ずかしながら過去の戦いで負傷してな、以前ほどの実力は出せなくなってしまったのだ。」
「そんな事が…初耳っすよ。」
各々驚きと困惑が混じり合いましな事が言えずにいる。
「次に、お前たちを選んだ理由だが、とある人物からの強い推薦でな。」
一瞬視線を感じたが気のせいだろうか。
アインは続ける。
「そういう事だ、あまり萎縮せずに気軽に接してくれると助かる。」
そう言うと軽く頭を下げて微笑んだ。
「こ、こちらこそ不束者ですがよろしくお願いします!アイン隊長!」
「驚きが強過ぎて現実味が無いんすけど…まぁよろしくお願いしますよ隊長」
焦りながら深々と頭を下げて握手をするエルといつも通りヘラヘラと頭を掻きながら挨拶を交わすカイン、そして…
「………アミィ…スティリア……です…。」
耳を澄まさなければ聞こえない囁くような小さな声がした。
そう、ここに呼ばれたのは俺を含めた4人。
長い前髪で目元を隠している藍色ショートボブの少女がポツンと立っている。
「わ、アミィちゃん居たのすっかり忘れてたよ!俺とした事が!!」
「ごめん…私も…」
無理もない、こいつの存在感のなさは半端じゃないからな。俺だって今の今まで忘れてた。とは言わないでおこう…。
「……なれてる…から…別にいい…よ。」
言葉とは裏腹にすこしショックを受けている様に見える。
性格までこれじゃあどうしようもねェな…。
「ま、よろしく頼むわ、アイン隊長殿。」
「あいっかわらず礼儀もへったくれもないわねあんた…。」
「うっせ、これが俺なんだよ。」
「明日の朝にはハインズに向かう。暫くは王都には戻れないだろう、親しい者に別れの挨拶でもしておくといい。解散!」
こうして俺たち第六新兵隊改めアインベルグ隊は西の城塞都市、ハインズへと向かうのだった。