第16話『夏が終わりました』
「明日からいよいよ新学期! 夏休みの宿題も自由研究もちゃんと終わらせたよ!」
「お疲れ様。夏休みが始まった頃はかなり進んでなくて心配だったけど、無事に終わったね」
「うん! だから自分へのご褒美としてアキバで遊んでた時にナンパされちゃったから付いて行こうとしたら、小夜ちゃんが止めるしさぁ〜…」
「それはちゃんと止めないといけないじゃない。美紀はまだ未成年で、しかも女子高生なんだから… 大人にとっては絶好の的だよ?」
「相手は中学生だったよ」
「まさかの年下!!」
「それでね! 私が代わりにショウ子を脱がしたんだけど…」
「脱がしちゃ駄目!! そこはわざと負けなさいよ!!」
「負けろって言われても… あの男の子達にお願いされちゃってさぁ〜… それで私の心が震えちゃったんだよね!」
「あなたの場合は『下心』が震えちゃったんでしょ?」
「そっちは震えてないよ!! 下心が萌えてるんだよ!!」
「萌えてる!? 『燃えてる』じゃなくて!?」
「そう! 私の心は、いつも美少女の裸見たさに飢えているのだから!! もちろん小夜ちゃんの裸はお風呂の時に拝ませて貰ってます」
「やめて!! 私の裸は価値が無いから見ないで!!」
「何言ってるの小夜ちゃん。小夜ちゃんの裸は、世の全ての変態紳士をギンギンにさせるよ!」
「私って美少女の扱いを受けてるの!?」
「小夜ちゃんは生まれつきの美少女でしょ? しかも羨ましい事に、小夜ちゃんは正統派巫女だから純度百パーセントは確実だよ!」
「私は皆と変わらない生活を送っているだけなのに……」
「男子は美少女と巫女の掛け合わせを非常に好むからね… 私達の様に身長が低い巫女さんときたら、ロリ巫女呼ばわりされても怒れないよ〜…」
「ロリ呼ばわりは、されたくないなぁ…」
「私は呼ばれても怒らないよ! むしろ正直に呼んでくれて嬉しい位だよ!」
「美紀はそうかもしれないけど… 私はちょっと…」
「育たないから周りの女性を見るとツライとか?」
「…これでも私はちゃんと育ってるんだよ?」
「あ、ホントだ! 胸以外は育ってる!」
「一言余計だから!!」
「じゃあ小夜ちゃん! 今何時?」
「えっと…… 夜の十一時だね」
「と言うワケで小夜ちゃん! もう夜の十一時だからさ、私と一緒に野球拳をやろう!」
「野球拳は負けても服を脱がないからね」
「行って来まーす!」
「行ってらっしゃーい!」
神社を飛び出して学校に向かった美紀。神社の鳥居のすぐ近くで手を振って見送りをまだしている小夜。
今日から夏が終わりました。
「やっと学校に通える…! 今日から毎日頑張るぞー!」
その道中で明と文音が一緒に歩く姿を見かけた。
美紀は足音を立てない様に背後に忍び寄り、両手を構えて文音に接近した。
真剣な眼差しで文音に少しずつ近づく…
あと少し…
数センチ…
「文音〜、後ろに誰かいるよ?」
明に見られた!?
いや、視線か!!
「あ、おはよう美紀」
「おっ、おはよう! アハハ…」
背中にワシャワシャした左手を隠す。
そしてワシャワシャした手を普通の手にしてから左手を文音に見せて、
「文音、学校行く前にたい焼き買おうよ!」
「いきなり過ぎない?」
「ボクは食べたい!」
「よし決まりだ。早速、運命的な出会いを求めて買いに――――」
「盗みは駄目だよー」
まだ学校に着かない美紀達三人。少し歩く間に美紀はずっと喋り続けている。
「んでもって、ルールを結局理解出来ないまま一時間程かけてユキを脱がしたんだよ!」
「美紀はまずルールブックを入門編から読んでよ… なぜ上級編から読むのよ…」
「他の本は無くした!」
「無くしたんだ…」
またしばらく歩いて、今度は文音が話しかけた。
「あのさ、美紀…」
「どうしたの? あ、もしかして私の代わりにセシルを倒してくれるの!?」
「倒してあげるけど、脱衣目的だったら断るからね?」
「ヒドイ! 身近にいる人で麻雀出来るのは文音しかいないのに!!」
そう叫んで、すぐに気持ちを切り替え、
「まぁ、私一人でも出来るから良いけどね。帰りにゲーセンに寄って遊べば良いんだもん」
「せめて周りに誰もいない場所でやってほしいんだけど…」
そこへ明が会話に入って来た。
「ねぇ文音〜」
「どうしたの、明?」
「麻雀で負けたら、何で服を脱がなきゃいけないの?」
文音は明をしばらく見つめてから美紀を見た。
「スイマセンッ!!」
美紀は土下座して謝った。
学校に登校して、上靴に履き替えてから階段を上がって美紀達の教室に入り、自分の席に座ってカバンから教科書などを取り出し始めた。
「夏休みの宿題もちゃんとあるし、今日の授業の分もある! 忘れ物は無いね!」
今日の朝の会が始まり、先生の話の途中で夏休みの話が始まった。夏休み期間中、実は先生が数名も街中を巡回して、生徒が悪い事をしてないかチェックしてた事を知った。
美紀は三回も神社から抜け出して夜の徘徊をしてたが、先生や警察に一度も捕まらなかった。
帰ってから小夜に捕まったが。
先生が夏休みの宿題の提出を促し、後ろから前へ宿題を渡し始めた。
「はい、美紀」
「うん」
文音から宿題を受け取り、自分の宿題を乗せてから前の人に渡した。先に終わった美紀は一時限目の準備を始めた。
「え〜っと、確か今日は二時間連続で美術だったなぁ〜… 有名な絵画の贋作の仕上げだったな、確か」
いくつかの名画の画像を借りて真似て描く授業を思い出しながら絵画の贋作が途中まで描かれた紙を見て、美紀はアレコレ妄想している…
“この「ヴィーナスの誕生」はホントにキレイな体だなぁ〜… エヘヘ〜、良い感じに描けてるよ…”
自分が描いた贋作にみとれている…
“…あれ? 別の紙にも他の絵を描いてた様な…”
その時、美紀は焦った表情で目線を前に向けた。
目線の先には、夏休みの宿題。
美紀の顔が、段々と焦りを隠し切れなくなってきた。
“ヤバイッ!! 私の夏休みの宿題には、一六ページにも及ぶ私好みのCGの落書きを何枚も作ってたんだった……!!”
恐らく… と言うか、見つかれば確実に教育指導行きは確実な程に直接的な絵なので、美紀は先生の手に渡った宿題だけを見ながら瞬間的に手を挙げた。
「先生! 宿題… 忘れました!!」
次回掲載日 2019年 9月8日 午前10時




