第15話『同人制作の打ち合わせ』
「文音が呼び出しをするなんて珍しいなぁ… 一体どんな用事なんだろう…」
弁当を食べ終わった直後に文音から「昼休みに演劇部に来て欲しい」と言われた美紀。トイレと手洗いと歯磨きを済ませてから三階にある演劇部に向かう事にした。
「まさか、私に愛の告白を…!?」
そんな百合じみた展開を期待して演劇部の前に立った。
「失礼しまーす」
そこには文音だけではなく、来宮と秀、そしてあまり会っていない女の人が集まっていて、文音と会議の様な会話をしていた。
「あ、美紀! 待ってたよ! さぁ、ここに座って!」
文音は自分の隣の席をポンポンと叩き、美紀を自分の隣に座って貰う様にジェスチャーを行った。
「ねぇ文音、昼休みに私を呼び出してどうしたの?」
「あのね、美紀が考えた小説の事で考えてたら、演劇部の人達の目に留まってね。そこで小説について相談したら…」
「伊藤 美紀原案の小説、この我等も協力してやろう!!」
「おぉー、ありがとう来宮! んで、何を協力してくれるの?」
「名前の借用、外見から中身まで、我等が同人映画で撮影した『魔女裁判』と伊藤 美紀の『魔女裁判』を合併させて欲しいのだ。実はあの映画は結局打ち切りになってしまって、困ってたんです… それで屋上で主張をしていたら、偶然にも音無 響子が同名の作品を持って悩んでてな…」
「あの〜、来宮さん… 私をアパートの管理人として赴任して、そのアパートの住人の一人に恋をしている管理人みたいに呼ばないで下さい… 私の名前は音無 文音です…」
「失礼。噛みました」
「いえ、わざとですね…」
しばらく無言のまま時間が何秒か経ってから、来宮は席に座った。
「じゃあ早速、私達の作品と貴方達の作品を見直しましょう。そして、それぞれの作品を見比べてどちらを軸にするのかを決めないとね」
演劇部の先輩らしき人が美紀のノートと演劇部の脚本を並べて見比べている。その様子を見ながら美紀は慌てて手を挙げた。
「あっ、あのっ!! 私、アナタの事を知らないんですけど…! お名前伺っても良いでしょうか!?」
美紀がそう質問すると、相手の先輩はゆっくり立ち上がって軽くお辞儀をした。
「私は演劇部長の間宮 三葉。ここにある同人映画の監督も兼業してるわよ」
「うわっ… まさか間宮様が生きてたなんてね…!」
「間宮様…?」
三葉が頭に「?」を出す中、元ネタを知ってる文音は美紀に対してボソッと一言、
「それは二十年前の話だよ、美紀…」
メモを取りながらお互いの作品の内容をメモしている三葉。演劇部の作品を黙読して読みふける美紀。美紀のノートをもう一度徹底的に読んで内容を理解しようとする文音。うろ覚えだが、読んだ内容通りに演技してみる秀と来宮。
無言タイムが入った。
作品をしっかり学ぶ為には、内容に対する理解が必要不可欠だ。
しかし、今の状況は互いの見解が全く入っておらず、誰もが口を動かすタイミングを逃してしまった。
「ねぇ、誰か喋ってよ!!」
美紀が叫んだ瞬間、文音がハッとして立ち上がった。
「そうだった… どんな作品にするのか話し合いに来たのに、話さないなんておかしいよね… では来宮さん、長濱さん、間宮さん。これから「魔女裁判」の打ち合わせを始めますね。では最初に原作者Aの伊藤 美紀さんからお願いします」
「はい!」
美紀は立ち上がって自分のノートを手にして口を開いた。
「小説版『魔女裁判』の原作者、伊藤 美紀です。私の作品は史実よりもかなり現代風の内容になってます。私の小説での魔女裁判では、魔女を忌み嫌う山の近くの村が舞台で、街へ歩いて二時間程で行ける程の場所に残る歴史には魔女によって村を滅茶苦茶にされた歴史があって、それによって村の人々の半分以上が魔女や魔女の末裔を村には決して入れようとしませんでした… しかし、ある日の事。映画の撮影に来た来宮達を見て歓迎はするんですが、来宮の痛い発言の所為で村の人々が来宮を『魔女』と疑い始めます。ここからが私の魔女裁判の始まりです」
美紀はお辞儀をしてから座り、次の話し合いのテーマを見直し始めた。その間に演劇部は自分の作品の内容をどう伝えるかを三人で纏めている途中、三葉が手を挙げた。
「ねぇ美紀、その作品の主役は村人側にどんな目線を向けて生活をするのかな?」
「最初は温かい目で生活していますが、後に主演メンバーの内の一人が村人による処刑によって見る目が変わります」
「なるほど… では、どんな処刑をする予定で?」
「除夜の鐘です」
その一言で、美紀以外の全員の頭の上に「?」がついた。
「美紀… 流石に除夜の鐘っていきなり言われたら誰だってあぁなるよ…」
文音が美紀にもっと詳しく伝える様に促した。美紀は一瞬だけ考えてまた立ち上がった。
「除夜の鐘を使って処刑をします。まず、除夜の鐘を打つ為に丸太を打ち込みますよね? その丸太で打ち込む鐘に予め縛り付けた人間に当たる様に縛って、後はいつも通り除夜の鐘を始めたら処刑の始まりです!」
「人間を丸太で百八回も打ち込むの!?」
「はい。だって除夜の鐘を使うんですから、ちゃんと打ち込まないとね!」
演劇部同士で少し話し合ってから、三葉が美紀に答えを出した。
「確か、舞台は山の近くの村だったよね? だったら、私達の知らない風習や刑罰があっても納得ね… 私達の魔女裁判はかなり硬派な内容だから、その様な発想が無かったのよ。だから美紀の考えた処刑がかなり斬新だったから…」
三葉は自分達の台本をパラパラめくりながら、
「もしかしたら、貴方達の魔女裁判を軸にした方がインパクトが大きいかも知れないわね」
美紀はやや興奮気味に立ち上がり、
「それじゃあ…!!」
「えぇ、私達を使って良いわよ」
「やったー! ありがとうございます!!」
三葉の手をブンブン振った。三葉の体が少し揺れたが、美紀はそんな事お構い無しである。
「それじゃあ早速、執筆を始めますね! この人が!!」
美紀は笑顔で文音の肩に手をポンッと乗せた。文音は表情を変えずに、ただ一言。
「美紀も協力してよね…」
次回掲載日 2019年9月1日 午前10時




