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僕とひと夏のルペ  作者: 高庭 千
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第5話 名前は身体か

翌日の朝、遅刻寸前だというのにルペがごね出した


「なぜだ、こうしてルペは制服も鞄も用意したというのに」


ルペ、という名前は「名前を付けてはくれないか」というRの要望に対して、頭文字であるRから、ルーペをもじって付けたものである。特に意味はない

しかし、本人はすこぶる気に入っているらしく一人称をルペと口にする


ルペは現在、勇人と同年代くらいの男の子の姿になっていた。準備したのであろう、制服と鞄、上履き等々を自慢げに勇人に見せつける


「だから入学手続きとかその他諸々の手順も踏んで無いだろ。第一に家に康太がいなかったら、叔母さんが怪しむだろ」


「それは、問題ない。康太はもう一階にいるぞ。下調べをした上で、ルペは一日前乗りで、勇人に接触するために康太の姿を取っていたに過ぎない。ルペは朝早くに荷物を取ってくると言って、家に戻ったふりをして、康太と入れ替わっておいたのだ」


「用意周到だな、お前」


「お前ではない。ちゃんとルペと呼んでくれ、勇人」


ルペは頬を膨らませて、膨らませて、両頬がバレーボールの大きさにまでなっていた


「落ち着け。頬が人間じゃなくなってるから」


「おっと」とルペは自分の両頬を押し込んで元の人間の形に戻していく


「だから、学校に一緒に行かせてくれないか。手続きも済ませればよいのだろう」


「だめだ。もし今みたいな事があって、お前の存在が世間に知られたら、どうする。きっと違う研究所の奴らがお前を捕まえにきて、また爆発なんかされてみろ。それは僕の父親、ひいては僕の責任に成りかねないじゃないか」


早口に語り終えて、勇人は長いため息をついた


「お前ではない。ルペと…」


「わかったから、とにかく家でおとなしくしてろよ。もう、僕は行くぞ。遅刻するから」


間髪入れずにルペの言葉を遮り、バタンと扉を閉めて、勇人は部屋を出て行った


部屋に静寂が流れる。一人流れきりになったルペは考えた


どうしてだろう、ルペは勇人を幸せにしないといけないのに。ルペは勇人の家族を壊してしまったから、償いに勇人を幸せにしないといけないのに


なのに勇人は学校にルペの正体がバレるといけないから付いてくるなと言った。頬が膨らんだりしたら、ダメだからと言った。つまり、正体がバレないようにすればルペは付いていってもいいということだ


「わかったぞ、勇人。それなら、ルペにも考えがある」


ルペは含み笑い

次にルペは烏の姿になり、窓から空へと羽ばたいていった

方角は東、勇人の学校を目指した


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