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僕とひと夏のルペ  作者: 高庭 千
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エピローグ 邂逅は一夏か

「行ってきます」


気をつけるんだよ、とリビングから叔母の声が聞こえた。はい、と答えてから手荷物を持ち上げて、勇人はドアを開ける


外に出て感じる風は、半袖を身につけている分には少し冷たかった


この夏の終わりに勇人は原付の免許を取得していた。咲良のお墓は徒歩や自転車で行くには遠すぎた所に建てられたのでというのが一つの取得理由だった


キーを挿し込み、ヘルメットを被りエンジンを掛けて、勇人は走り出した

身体で切る風は、やはり少し冷たかった


あれから、咲良の葬式はつつがなく行われ、クラスメイトが集まっていたようだったが、僕は行かなかった。人と関わるのが苦手なのは相変わらずで、咲良の死をみんなで分かち合う気にはどうにもなれなかった


途中、原付を止めて近くの和菓子屋に寄った。お供え物は饅頭にすることにした。以外にも知らなかったのだが、咲良は饅頭が中々に好きらしいとのことを聞いたからだ


「よう、志波」


「げっ、渡部」


饅頭屋の店内で横から渡部が現れた。聞き慣れたこの挨拶文句も、今ではさほど気にならない


「渡部もここで買うのかよ、それなら違う所にすればよかったな」


勇人はあからさまに嫌そうな顔をした。咲良は饅頭が好きだと聞いたのは渡部からだった


「連れないこと言うなよ。咲良と唯一のデート先がここの和菓子屋なんだよ。一緒に買ってこうぜ」


「おい待て、そんな話は知らないぞ」


「口が滑った」


「このやろ」


口喧嘩を交わしながらもお互いの表情は朗らかなものだった。お供え物を購入し、二人は店内を出た


「お墓参りが終わったら、志波はまた研究所に行くのか?」


「ああ、今日は泊り込みだよ」


もう一つの取得理由は家から離れた研究所で、勇人は自分の父親の研究を学んでいた。しかし研究への学びに対し自分の父親とは全く逆の思いを持って臨んでいた


咲良やルペが唯一無二であることを証明するために。そして想いがあれば、生命体にも自我を認めることができるということを示すために、勇人は安川の元で学んでいた


「すごいな、大変じゃないか?明日からまた学校が始まるのに」


「安川の奴の性格が悪過ぎるんだよ。口を開けば、やれレポート提出だの、君と共に私の悲願を達成するのだ、ってそればっかりだ。そのおかげで今日も徹夜コースだ。嫌になるよ。全く」


勇人は苦笑い見せた


「でも、いい顔してるぜ。志波」


微笑みながら、渡部はそう言った


「そうかよ」


照れくさくて、勇人はそっぽを向いた


「そろそろ行こう。そいえば、鰻はどうする?」


「それなら、事前にスーパーで買っておいたから大丈夫だ」


特売品の鰻の蒲焼が入った手持ちの荷物を勇人は得意げに見せた


「そうか、なら安心だな」


「ルペが文句言うといけないからな」


二人して笑い合った。今では死人を思い出にして、臆面もなく笑うことができる。なぜなら、確かに想いは僕達の中で生きているから


「そろそろ行こう」


「そうだな」


渡部が声をかけて、勇人が応じる


エンジンを掛けて、二人は列を作って走りだした


夏が終わる


君は向日葵のように笑う

君は愉快に姿を変える


君と僕の過ごした時間が思い出になっていく。しかし色褪せはしない。君をなかったことになんてしない。僕が色褪せぬこの夏を抱いて想い続けよう。そう、いつまでも


風は冷たい。蝉の鳴きはもう聞こえない。時期の交代を指し示すかのように、草木はほのかに色付き始めた。太陽の日照りもいつの間にか気にならなくなっていた


さよなら、僕とひと夏の(ルペ)

また会おう、変わらないあの夏で

約一カ月間に渡りほぼ毎日連載してきましたが、ついに完結できました。ありがとうございました!やはり中々にしんどいものがありましたね(笑)


よろしければ、物語の感想、評価の方を是非お願いします。首を長くして、お待ちしてます(笑)

次回作の参考にもさせて頂きたいです

『僕とひと夏のルペ』

ご愛読ありがとうございました

次回作でまた、会いましょう!

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