第33話 偽物は友達か
泣き止まぬうちに、次の別れがやってきた。ルペの身体のあちこちが音を立てて、火花をあげていた
「そろそろ時間かな」
立ち上がり、ルペは声を発した
「お別れだぞ、勇人」
なんの悔いもないかのように、ルペの顔は晴れやかだった
「待ってくれよ、お前まで居なくなるのか」
分かっていた別れのはずだったが、納得したわけではなかった。咲良を失って、もうこれ以上は心が持ちそうにないという悲痛で、勇人の顔は歪んでいた
「そうだ、花火は綺麗だったか?あれはルペが作ったんだ。用意した花火は安川から逃げている途中で落としてしまったから。上手く出来てなかったかもしれないが」
そんなことない、と勇人は言った
「ちゃんと綺麗だった。咲良も喜んでた。まだいくな。僕はお前にちゃんと謝らないと…」
ルペの火花の勢いが増してくる。それはまるで爆弾の導火線を思わせるかのようだった
最後に訊いてもいいか、とルペが訊いた。勇人は口を開かない。ルペはそのまま続けた
「勇人はルペのことを弟に重ねていたのは、実は気づいていたんだ。知った上で記憶にあった敦己の行動をルペは選択していた
酷いだろう?安川の言う通りだ。ルペは勇人と友好的に接するために敦己の行動パターンを選択していたのだ。所詮は記憶統合体に過ぎないと安川に言われて初めて思い知ったんだ。ルペは人間じゃなかったって
それでも、咲良が言ってくれたんだ。ルペはルペだ、って。勇人もそう言うに決まってる、って。教えてくれ。勇人にとってルペは何だったんだ?」
見たことない男の姿で、ルペの顔は垂れ流しの鼻水や大粒の涙で、ぐしゃぐしゃだった
「友達に決まってんだろ!」
勇人には返す言葉が分かっていた。それは当たり前に、ごく自然に、出てきた勇人が言わずにずっと心の中に置き去りにしていた言葉だった
ルペは手で顔を覆った。火花の勢いは更に増していく
「ルペは勇人との約束を破った。でもそれはルペ自身が自分で考えたんだ。勇人が幸せになれるようにって。勇人はルペを許してくれるか?」
「お前の気持ちはお前のものだ。お前の気持ちを僕は否定なんかしない」
約束は勇人にとって敦己との呪いのようなものだった。絶対に守るべきものとして確立していた
でも、違った。勇人を想って破った約束をどうして勇人が怒ることができようか。約束とは互いの気持ちを思いやる目安に過ぎないのだ
「ありがとう、勇人」
静かにルペはお礼を口にしてから、屋上の金網を超えて外に出た
「おい、どこいくんだ?」
ルペを追いかけようと、勇人は駆け出した
しかしルペの元に辿り着かないうちにルペは勇人を一瞥して口を動かしてから、屋上を飛び降りた
その瞬間、屋上に花火が上がった
綺麗な花火の正体はルペ自身に違いなかった
ばかやろう、と勇人は呟いた
「忘れないで」
ルペの最後の言葉だった
エピローグへ続きます




