第24話 夏祭は集合か
既に会場には屋台がたち並び始めていた。出店の準備をする人や、運営の関係者が忙しなく動き回っている。笛の音や太鼓の音が、調子良く祭りの準備を促すように聞こえていた
集合時刻に咲良はちゃんと現れた。細めのボーダートップスと透け感のあるフレアスカートを合わせた私服姿だった。左腕には勇人と同じく運営スタッフの腕章が安全ピンで留められていた
体調は大丈夫か、と勇人が訊くと、「大丈夫」と咲良は笑顔で答えた。それから、いくつか言葉を交わしたが、お互いの短い会話にはどこか緊張があった
花火大会の準備は、渡部のおじいさんの仕切りによって順調に進められていった。チサト先生も珍しく忙しそうにしているのを見かけ、渡部も運営本部の手伝いをしているらしいと聞いた
勇人と咲良の管轄の場所は離れた所に決められていた。どうやら休憩中に会うことも出来そうになかったので、先に咲良と落ち合う場所を決めておくことにした。場所は神隠川の近くにある時計台にし、ひとまず二人は別れた
「デート楽しみにしてる」
去り際に見せた屈託のない咲良の笑顔が、アルバムの写真のように勇人の記憶に強く焼き付いた。それくらい特別に思えた
* * *
「三つまでなら、好きなものを買っても良いのだな」
ルペは康太の姿をとっていた。浴衣を身につけ、ガンダーマンのお面を付被り、綿飴を片手に、夜の屋台通りを歩いている
「さっき綿飴買ったから、あと二つな。別に食べ物じゃなくてもいいからな」
夜になって、スタッフの仕事が休憩時間に入った。この間にルペを連れて、デートの下見や確認をしようと勇人は神隠川に向かっていた
花火の打ち上げを開始してから会場は人でごった返しており、隙間を縫うように、人混みを抜けていった。なんとか打ち上げ会場からは少し離れられて、人混みにゆとりが持てる屋台通りにまで辿り着いた
ここで物珍しいのであろう祭りに雰囲気に当てられて、ルペは興奮し、少しで良いから遊ばせてくれ、と懇願してきた。時間にもある程度に余裕はあったので、少しならいいぞ、と勇人は許可を出していた
「勇人、屋台にうなぎはないのか?」
ルペは食べ物しか目に入っていないようだった
「流石に、鰻は無いんじゃないか」
お面付けて歩くと危ないから、と勇人はルペのお面を頭の横に回した
「うーむ、あと二つか」と並んでいる屋台に次々と視線を移して、ルペは頭を悩ませている
こうして、ルペを見ていると少しだけ敦己が戻ってきたような気持ちがした。敦己が鰻の他に好きだったものは何だっただろうかと考えてみるが、あまり見当は付かなかった
「勇人」
名前を呼ばれ、勇人は我に返った
「一緒に食べよう」
イカ焼きを二つを両手に、ルペは嬉しそうに勇人を見ていた
「二つ買ったのか?それで、買えるものは終わりにするぞ」
勇人は少し意地悪を言った
「いいんだ。勇人、イカ好きだろう?それに一緒にご飯を食べたかったから」
思い出した。敦己はやっぱりそういう奴だった
「わかったよ。一緒に食べよう」勇人は微笑した。ルペも笑い返した
イカ焼きを食べ終わってから、ルペは相変わらず辺りをキョロキョロと見渡していた
ちゃんと前見て歩け、と注意したところで、眼前の姿を認めた勇人が、後ろから襟を掴んで、ルペを引き戻した
「何するんだ、勇人」
声を無視して、ルペを自分の後ろに隠すように置き、勇人はただ一点を睨んた
「…なんでここにいるんだよ」
人混みに見え隠れする視点の先にいたのは、紛れもなく安川だった
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