表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕とひと夏のルペ  作者: 高庭 千
15/35

第14話 素直は美徳か

夕方になって、教室に残っているのは勇人と渡部の二人だけだった

勇人と渡部は机を向かい合わせにした状態で、花火大会のパンフ綴じ作業を行っていた


資料室から勇人が教室に着くと、事前にパンフレット用の紙の束が教卓の上に乗せられていた。話を聞くと、どうやら渡部が職員室から持ってきてくれたとのことだった


「志波がいなくなった後に、咲良もサボりで授業を早退したんだよ。それで咲良からパンフ綴じ作業の代わりを託されたという訳だ」


「そういうことか。でも僕がいなかったら一人でやるつもりだったのか」


少し黙り込んでから、渡部は笑った


「咲良が言ったんだよ。勇人は任された仕事をサボるような人じゃないから、学校の何処かにいるはずだ。多分、生徒会資料室にいるから、見つけて仕事を手伝ってあげてってさ。咲良は志波のことになると何でもお見通しなのな」


渡部は本当に可笑しいそうにしていた


「そっか。ありがとう」


渡部の態度を見て、幾分か心が軽くなったからか、自然と感謝の言葉が出た


「いいさ、気にすんなよ。俺も手伝うって言っただろ」


喋りながらも鮮やかな手際で、次々にパンフレットを完成させていく


「缶コーヒー二本買っといたから、喉乾いたら勝手に飲んでくれ。コーヒー飲めるか?」


「飲めるよ、ありがとう」


いい奴すぎるだろ、と勇人は叫びたくなるのを心の中で留めた。置いてあるコーヒーに手を伸ばして、ありがたく頂いた


しばらくパチリ、パチリとホッチキスを使う音だけが静けさの中にあった


「なあ、志波は」と渡部が口火を切った


「咲良のことが好きなのか」


質問に勇人は一瞬固まる


「渡部、デリカシーって知ってるか」


「なあ、どうなんだよ」


当人の彼氏が修学旅行の夜のノリみたいに話し掛けてくる

流石に冗談を言っているのだろうと察し、勇人は返した


「好きだっていったら?」


すると渡部は真剣そうに考え込んでから、顔を上げて勇人を見た


「ライバルだな、と思う」


渡部の顔から冗談の色は伺えなかった。本気で言っているのだと、ここでやっと勇人は理解した。と同時に腹が立った


「やめてくれ、そういうの僕は嫌いだ」


「なあ、志波。お前はどう思っているのかは分からないが、咲良はお前のこと…」


「いい加減にしろ」


勇人は渡部を思いっきり睨んだ


「僕をからかって楽しいか。更に僕を惨めに陥れないと気が済まないのか。どんな気持ちなら、そんな言葉が吐けるんだ。神経を疑うぞ」


再び二人の間には静寂が訪れる。黙々と一定のリズムを刻みながら作業を続けてから、渡部が口を開いた


「志波、俺と咲良は付き合っている」


勇人は黙ったままで何も答えない


「だけどそれはお前が咲良を好きにならない理由にはならない」


「無茶苦茶だ」


勇人は言葉を吐き捨てた


「世の中なんて、無茶苦茶なことだらけさ。それでも前向いて一歩一歩踏みしめた奴の勝ちなんだ。そういうふうに出来てるんだって爺ちゃんが言ってたぜ」


だからな、と渡部は続けた


「逃げるな。俺からも咲良からも。真正面からぶつかれよ。リスクテイクも過ぎれば臆病者だ。これも爺ちゃんの言葉だけどな」


さてと、と言って渡部は席を立つ


「今日の分はこれで終わりだ」


気付けば、勇人の分までの綴じ作業を渡部が終えていた


「じゃあ、帰るわ。ライバルと一緒に帰るほどに俺もお人好しじゃないからな」


お先に、と渡部は教室を出て行った

静まり返った教室に虚しさだけが残った


「うるさいんだよ、くそっ」


怒りに任せて、勇人は椅子を蹴った

誰もいない教室に鈍い音が響いたあと、すぐに消えた


「無茶苦茶だ」


言い訳をするように、そう一人口にした


ご愛読ありがとうございます!

よかったら感想どしどし

ブックマークと評価も是非是非

明日もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ