第12話 秘密は素敵か
体感時間では二時間近く話している気になっていたが、実際には二十分ほど話したところで安川は家を引き上げていった
「志波博士の消失してしまった研究内容も8割方は回復してきているところでね。もしお父さんのことについて色々知りたいと思ったなら、いつでもここに連絡してくれ」
懐から名刺を取り出して、安川は勇人に手渡した
そして
「また来るよ」
と言い置いて、消えていった
* * *
「勇人、7:45分!7:45分!学校へ行く時間だぞ」
「めざましのテレビみたいに喋るのはやめろ。まったくまた、テレビでいらんこと覚えたな」
あれからルペの様子は元に戻っていた特に安川との会話の内容を聞きたいとも言わなかったので、勇人も言わないことにした
二階に上がり、安川が帰ったことをルペは一言、「ありがとう」と呟いてから、急にテレビが見たいとごね出したので、部屋のテレビを付けてやった。するとテレビで新しい言葉を覚える度に、真似をして勇人に話しかけてきた。それが明け方まで続いたものだから、勇人は眠くて仕方がなかった
「勇人。学校だ、行くぞ」
「はいはい」
「返事は一回でいいんだぞ」
こいつは知らなくてもいいような知識ばかり蓄えていってるな、と勇人は呆れた
「ちなみに今日は高音質イヤホンになってみたぞ。普通に買えば一万円位のクオリティ並みだ」
「そりゃすごい」
「しかも姿を見せずにイヤホンからルペの思ったことを勇人に伝えられる優れものだ」
「…それは便利だな」
昨日話したことをやっぱりルペは気にしているように勇人には思えた
安川との会話内容には触れなかったのだが、このままだといずれはルペは見つかってしまうかもしれない。だからルペには安易に人の姿にはならないように忠告した。その時のルペの反応が思いの外薄かったので心配していたのだが、どうやら大丈夫そうだ
「勇人、耳にはめてみてくれ」
勇人は机の上に置かれているイヤホンを手に取り耳にはめてみた。すると耳元からルペの声が聞こえた
「ルペを好きな女だと思って、大切に使ってくれ、うっふん」
イヤホンを耳から外し、コードを両手で引っ張り、勇人は千切ろうとした
「痛い、痛い。何をするのだー」
「テレビで覚えたことを何でもかんでも言えば、人を怒らせるということだ。よく覚えておけ」
「痛い、痛い。ごめんなさいでした」
「よし」と勇人はコードを引っ張るのをやめた
「ルペ、昨日した約束覚えるか」
勇人は昨夜、初めてルペと向かい合って話をした気がした。ルペは同年代の男の姿をとっていた
二人でテレビを見ながら、あれは何だ?これは何だ?とルペの興味は尽きずに質問ばかりを勇人に向けて来たが、悪い気はしなかったので付き合ってやった
その中で「秘密」とは「嘘」とは何だ?と聞かれたので、
「秘密というのは僕とお前との関係のことだ。誰かに知られたりしたら、大変なことになってしまうだろう。だから、内緒にするってことだ」
「ふむふむ、なるほど」
「んで嘘ってのは、本当の事と違うことを言うことだ。例えば、僕が渡部が好きは嘘という具合だ」
「勇人の好きは咲良だ。だから嘘か。なるほど」
自分でこの例を出しておいて何だが、死ぬほど恥ずかしくて勇人は後悔した
「そうだ」と勇人は思い立った
「僕とお前との関係に約束を取り付けよう」
「約束?」
ルペは首を傾げた
「約束ってのは絶対守らなきゃいけないってものだ。もしも守れなければ僕はお前のことを嫌いになる。それくらい大切なものだ。わかったか?」
「わかった」とルペは真剣な眼差しで勇人を見つめた
「約束はお前の存在は僕とお前の二人だけの秘密にすること、いいか?」
秘密という響きに感動してから、ルペは承諾した
「それとお前が僕の、その…。あれだ。好きな奴を知ってるのは不公平だろ。だからもしもルペだけに知ってることができたら嘘を付かずに教えろ、わかったな」
半分当てつけのような約束を勇人は取りつけた
「珍しく名前で呼んでくれたな、勇人!」
一方、ルペは名前を呼ばれたことに感激したのちに、こちらもすんなり承諾した
という調子で、勇人とルペの間には二つの約束が取り付けられた訳だった
勇人の問いかけに、勢い良くルペは応えた
「覚えているぞ。ルペの事は他の人に知られてはいけない、ルペと勇人の秘密にすること。ルペと勇人は互いに嘘をつかないこと」
約束の把握を勇人は確認して、満足した
「わかってればいいや、そろそろ学校いくか」
「おー」
元気の良いイヤホンもとい、ルペを耳につけてスクールバックを担ぎ、勇人は家を出た
ご愛読ありがとうございます!
明日からはペースアップを考えているので、良かったら読んであげて下さい(笑)
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