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僕とひと夏のルペ  作者: 高庭 千
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第11話 比較は理由か

下の作者マイページにて活動報告もちょこちょこ更新していきますので、良かったらみてやって下さい(笑)誤字脱字等も活動報告のコメントにて募集したいと思うので、よろしくお願いします!

では第11話です。どうぞ

男は、安川と名乗った。骸骨が服を着てるのかと感じるくらいにやせ細った身体に堀の深い顔が印象的だった。元先端応用生命科学研究所職員で志波 雅俊の部下として働いていたのだと説明し、要件があって勇人を訪ねてきたとのことだった


「それで要件とはなんでしょうか」


リビングで安川に珈琲を出して、勇人もテーブルについた

おもむろに鞄の中から、何枚かの資料を取り出して勇人の前に並べた


「勇人くん。君はお父さんが研究所の爆発で亡くなられたのは、知っているよね。これが君のお父さんの研究していた内容の資料の一部になる。爆発で殆どの資料が消失してしまってね。これだけかき集めるのにもかなり時間がかかってしまったが」


「父の研究内容とかは見てもなにもわからないと思いますし、興味もあまりありません」


すげない態度で勇人は言葉を返した


「なるほど。君はお父さんが嫌いなんだね」


出された珈琲に口をつけてから、安川は微笑した


「なので研究のことについて訊きたいことがあるのでしたら、力にはなれないかと。あいにく父と違い、僕は出来損ないですから」


安川の緩んだ顔が気に触り、勇人は皮肉を込めて言葉を放った。父親の関係者というだけで嫌うには十分な理由になり得た


「はは、どうやら私も嫌われたみたいだね」


安川の顔は緩んだままであった


「まあ、いいさ。ここを見て欲しいんだ」


安川は資料の一部分を指差した

そこには

(研究対象生命体 実験体Rについての報告レポート)

と記述されていた


心臓が軽く縮むような感覚に襲われたが、動揺を顔に出さないように努め、勇人は飲み物を口に運んだ

安川は言葉を続けた


「志波博士は当時、金属に命を吹き込む実験に成功していた。しかしながら事故により博士を含め、多くの人の命が失われる結果となった。私はたまたま出張に出ていた為に事故に巻き込まれずに済んだ身であったが、研究チームの仲間や博士を想えば、息が詰まりそうな気持ちだった。それから私は手がかりを探し始めた。このままでは仲間達や博士がいたたまれないと思ったからだ。そして必死の情報収集が功を奏してか、一つの可能性に辿り着いた。もしかすると事故により、実験体R自体は消滅していないかもしれないという可能性に」


先から一変して、安川の目つきが鋭くなった

やっぱり、と勇人は確信した。安川はルペを捕まえにやってきたのだ。仲間達の命を、僕の父親の命を奪ったルペを


あの時、遠くの安川を見てから震えた声を絞り出してルペは言った


「いやなのだ…。また研究所に戻るのは…。そしたらルペはルペでなくなってしまうのだろう。誰かをまた殺してしまうかもしれないのだろう。勇人、助けてくれ」


怯えた様子で、ルペは勇人にしがみついた。こんなに真剣に誰かに頼られたこと生まれて初めてのことかもしれない

黙り込んで、勇人は自覚した

単純に父親よりも、ルペといた今日のほうが少なからず、好ましいと勇人は感じていた


「ルペ、消しゴムになってろ。数学の授業での借りを今ここで返してやる」


「勇人…」


ルペは勇人を見つめた


「借りたら返す。人間では常識なんだ」


消しゴムに変わったルペを掴み、右ポケットに突っ込んでから安川と接触したのだった


ルペを二階に置いてきて正解だった。安川にルペが見つかったら、間違いなくルペは実験体 Rとして捕獲されるだろう


「要するにこの実験体 Rには自我と呼ぶほど確立されたものではなかったが、博士が近づいた時には他の人間とは違う、ひときわ目立った反応を残していたことを思い出してね。仮に実験体Rが生存しているならば、君に接触しているはずだと踏んだのだが、どうだい思い当たる節があれば是非教えて欲しいのだが」


「知りませんね。話はそれだけですか」


まるで興味の無い内容だとばかりの素ぶりをみせ、勇人は飲み物を口に運んだ


「本当にかい?」


安川は懐疑的な見方で踏み込んできた。まるで心の中なかまで覗き込まれているかのような気分になった


「では聞くが、なぜ私を家に招いたんだい。それ相応の興味を私に抱いたからだと推測するのだが」


「別に意味なんて、ありません。強いていえば、客人はもてなさなければならないという良心が僕にあるからでしょう。育ちは悪くないので」


「ふうん、どうやら君に私は本格的に嫌われているようだね。初対面だというのに」


未だ疑いの眼差しを安川は解こうとしない


守らなければ、そう思った


勇人の考えはシンプルな比較法だった

ルペと比べて、この男が好きになれそうもないから

だからこの男にルペは渡さない、勇人はそう強く決意した

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