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奈美絵

 鈴本すずもと奈美絵なみえ。俺と同じクラスの女子だ。

 セミロングの茶髪はツインテールにとめられていて、歩くたびにぴょこぴょこと跳ねる。


 このところ不登校が続いていたしあまり接点もなかったが、見ない内にケバさに磨きがかかったのか濃いめの化粧に左右の耳にたくさん開けられたピアスが目を引く。

 一言で表現すれば、ギャルってやつだ。


 クラスメイトの間では、同姓の有希音ゆきねと区別をするために下の名前で呼んでいるっていうだけ。


「奈美絵、お前も無事だったのか」

「鋼ぇ、どうしたのさその目。青いから別人かと思ったよぉ。それに有希音も。すっげえ美白じゃん、マジウケるわ~」

「ああ、ちょっと訳あってな」


 バスン。


「へ?」


 バスンバスン、バスン。


 意味が解らない。俺のほほと首、手と腕に衝撃がかかる。

 俺は反射的に手に付いている物を見た。


「く、釘ぃ?」


 釘だ。釘が俺の手に突き刺さっている。


「鋼くんっ!」


 奈美絵は手にしている銃のような物を有希音に向けた。


折角せっかくの再会なのに残念だわぁ、す、ず、も、と、さんっ」


 釘打ち機(ネイルガン)か。射撃もできるようにセーフティを改造しているのか、至近距離なら的も外しにくいし威力だってかなりある。


 奈美絵が撃ち出す釘の雨が有希音を襲う。


「くそっ!」


 俺が有希音にタックルをかけて横へ弾き飛ばす。


 釘は後ろにあった椅子と鏡に命中する。

 大きな音を立てて鏡が割れ落ちた。


「逃がさないよぅ、鋼ぇ~!」


 新しく加わった背中の痛みに耐えながらも俺は有希音を引き上げて立ち上がらせる。


「なにしやがんだ奈美絵っ!」

「なにって、決まってんじゃ~ん」


 釘打ち機(ネイルガン)が俺を狙う。


「ゾンビは死ねよ」


 汚いものでも見るような目。


 奈美絵が引き金を引くと、連続で釘が撃ち出される。

 避ければ有希音に当たってしまう。

 俺は手で顔と頭をかばって釘を受け止める。


「痛ってぇ!」

「ははぁん、ゾンビでも痛いんだ?」

「ちょっと鈴本さん!」


 大前田が奈美絵の肩をつかんで攻撃を止めさせた。


「どうしたんだよ、いきなり」

「あ~? 大前田さんは解ってないないんだねぇ。こいつらはもうゾンビなんだよ。いつ襲ってくるか判らないやつらなんだよう!」

「そんな、だって」

「だってもクソもねーっての。どうせ見たんでしょ、すんげーパワー」


 確かに有希音がゾンビを転ばせて頭を踏み潰すところとか、ただの女子高生ができるものじゃない。

 大前田だってそれを見ている。


「有希音、大丈夫か」

「鋼くんは」

「俺のことは気にするな」


 俺はゆっくりと立ち上がる。

 釘が刺さったところから血が噴き出すけど、そんなことは知ったこっちゃない。


「奈美絵ぇ!」


「なんだよこの死にぞこないがっ!」


 バスンバスン。


はがねりゅう健康体操九の型。左手を前にぃ、大きく左右へ振って、もっと速く振って……ぶりだいこんっ!」


 シュバッシュバッ。


 俺の左手が左右に高速スライドして飛んでくる釘を払い落とす。


 カラン、カララン……。


「なっ」


 奈美絵の顔が驚きで固まる。


「お前、ぞんなにゾンビが怖いのかよ」


 一歩近づく。


 バスンッ!

 シュバッ!

 カラン……。


 もう一歩。


 バスンッ!

 シュバッ!

 カラン……。


「ひいっ」


 奈美絵が引き金を引いても、釘が撃ち出されなくなった。


「弾切れだな」


 俺は強引に釘打ち機(ネイルガン)を奪うと、外に向かって放り投げる。


 ガシャーン!


 窓が盛大な音を立てて砕け散った。


 俺は奈美絵のあごをつかむ。

 奈美絵の口が、むーってなる。


「俺がこのままお前の顎を握り潰すのなんて簡単なことだっていうのは理解できているんだろうな」


 奈美絵は涙ぐみながら首を縦に振ろうとする。


「理解しているなら話は早い」


 グジュッ。


「んぐーっ!」


 何本か歯が折れただろうか。

 苦痛に顔を歪める。


「あんた、なんてことしてるのよ!」

「江楠、俺は命を狙われたんだ。殺されかけたんだよ。自分が飛び道具を持っているからってそれが安全だとか強いとか思うのは勝手だけど、俺がそれに従って殺されるつもりはないぜ」


 俺は奈美絵の顎をつかんだ手に力を入れる。


 ゴキッ、グジュッ。


「これで下顎したあごは完全に粉々だ。おっと、真っ赤なよだれなんか垂らしちゃって、お行儀が悪いなあ」


 俺は奈美絵の耳元でささやく。


「そんなに怖いゾンビに、なってみるか」


 カリッ。


 俺は奈美絵の耳を噛む。


「おごぉ!」


 奈美絵が言葉にならない叫び声をあげる。

 奈美絵の耳から口を離すと、血の味に混じってピアスが二つ口の中に転がった。


「人間の血は、思ったほどうまくねえな」


 プッ、っとピアスを思いっきり吐き出すと、その二つのピアスはボゴォッと床にめり込んだ。


 俺が手を離すと奈美絵はその場でへたり込んで、顎と耳を押さえてオウオウと泣き崩れる。


「心配すんなよ。お前がゾンビになっても人を襲ったりはできないぜ。なんせ噛むことができないからな」

「ほ、ほろへ、ほろひて……」

「んあ、この期に及んで俺に注文か? 嫌なこった。お前は俺が殺すんじゃない。お前というゾンビが人間のおまえを殺すんだ」


 俺は痛みをこらえて身体のあちこちに刺さった釘を抜く。


「くそっ」


 その一本ごとに奈美絵への怒りがこみ上げてくる。


「お前がゾンビになったら、その時は俺が殺してやるよ」

書き方をかなりライトに変更してみました。

早く書ける分内容の薄さが気になります。

読まれる方の好みが分かれそうですね(^▽^;)

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