やはりあれがいけなかったのだろうか
私はついていないと、レイアは呟いた。
貴族の姫。それも三番目。期待されていないのは分かっていた。
それでも、憧れのようなものがあったのかもしれない。
「運命の王子様、か」
自分の口から出た言葉なのに、随分と暗い気持ちになる。
好きになった人と結婚なんて出来るわけがない、でも、好きになった人と結ばれることが出来たならと思い描くのは自由だと思っていた。
けれど結果はこれだ。
「“夜の男”か。陽の光に当たると目眩がする呪いを昔、魔女にかけられた王子様」
その昔、この家の当主が道ならぬ恋に落ちたらしい。
それがその魔女で、けれど体裁を気にする者達に引き裂かれ、怒り狂った魔女により息子のトールに呪いがかけられた。
ちなみにその呪いを解く方法があるにはあるらしいのだが、それについてレイアは知らない。
でもどうでもいい。
「わざわざ私がここに嫁ぐ……正確には、婚約期間だけれど、来ても全然挨拶にもこないし」
ちなみに聞いた話では、すでに何人もの娘がそのトールと会わずに追い返されているらしい。
観光気分で行って来るといい、そう告げた両親に姉達。
ちなみに姉達は全員結婚済みで、残るはレイアだけだった。
「やっぱりあれがまずかったかしら」
こんな事になったのは、結婚すれば大人しくなるかなという両親達の企みだった。
この前の舞踏会で、口説いてきた男が腰に手を回してきたり色目を使ってきたりとあまりにも気持ちが悪かったので、つい、闇討ちをしてしまったのだ。
それはもう二度と私に手出しなどできないくらいに。
もちろん生きてはいるが、あれから件の彼は、水色の女が来るとうなされているらしい。
「うっかり髪を一部かくし損ねたのがいけなかったわね。次からはもっとばれないようにしないと」
レイアはしっかりと反省した。
反省してさらなる力を手に入れた。
とはいえ窮屈な部屋に閉じ込められるのも嫌で、大きく欠伸をしてレイアは窓から外へと出る。
屋敷の外は広く白い花畑になっており、少し歩くと丘のようになっていた。
雲ひとつない満天の星空。
白い花が風に揺れていてどこか心地いい。
そう思いながらレイアが歩いて行くと、
「あれ、人がいる」
貴族の屋敷の敷地内だというのに、人がいる。
当然使用人過去の屋敷の住人だろうが、着ている服が随分と豪奢なものだった。
風になびく金色の髪。
細いが背の高くしっかりとした身体つきから、男性のものだと分かる。
白い花に囲まれて、月の光の中で佇む彼。
その幻想的な美しさに一瞬レイアは目を奪われる。
今までに出会ったことのない男性だと、レイアは彼を見て思う。
そこで彼は振り返った。
彼の赤い瞳がまたたき、レイアを不思議そうに映す。
「君は、誰? ……あ、もしかして、レイア姫ですか?」
「ええ、そうですけれど、もしや貴方がトール様?」
「はい。……以前遠目でお見かけした時よりも更にお美しくなられましたね」
にっこりと微笑むトール。
そう、それだけだ。それだけのはずなのだ。
なのにレイアは、異常な胸の高鳴りを覚えてしまう。
お美しくなられましたね、なんて社交辞令でしかないはずなのに、それでもトールに言われると特別に感じてしまった。
もう私は駄目かもしれない。
「レイア姫?」
「あ、えっと……これからもよろしくお願いします」
「え? あ、はぁ。所でレイア姫は当家にどのような御用事が?」
そう、トールがレイアに切り出してきたのだった。
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