屍を食する者
セドリックはひとまず家に入った。セドリックの実家は裕福で、大学へ進学するときに立派な屋敷をくれた。トイレやキッチンを通り過ぎ、自分の部屋に入った。積み上げられたオカルト本を整理し、さっそくペラッとめくってみた。複雑で難解な魔術がいくつも載っていた。と、その時、突然何かの唸り声がした。
「ウグルァァァ!!!」
狼のような唸り声だった。外へ出てみると、近所の人が急いでどこかへ走っている。その反対方向にいたのはグールだった。グール、いわゆる食屍鬼だ。しかし、グールは本来砂漠に棲んでいるはず。何故このアーカムにやってきたのだろうか。だが、今はそれどころではない。ネクロノミコンを手にしたまま、周りの人と共に逃げようとした。が、一つの本を思い出した。それは、図書館にあった「屍食教典儀」という本だ。フランス国内の人肉嗜食や屍姦行為についてまとめた本だったが、その中にはグールに関する情報も書かれていた。奴らは動物の死骸が好物で、墓をうろついていることがある。墓に入っている人たちには申し訳ないが、墓に逃げれば助かるかもしれない。ここからだとハングマンヒルズ(死刑執行人の丘)が一番近い。セドリックはハングマンヒルズへ向かった。それに続いて周りの人たちもついてきた。