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学校日和2  作者: めろん
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第97回 嘘つき日和

 ウサギさん寮の男子寮の一室にて、


「むぅ……」


プリンは自分の机に置いてある紙を見つめつつ、むぅと首を捻っていた。

その紙のタイトルは、"始末書"。


「ったく、どォやったら恵方巻き作る過程で家庭科調理室の三分の一ぶっとばすような爆発起こして」


「どうやったら全身包帯だらけになるほどの切り傷だらけになるのさ?」


そんな彼の後ろから、呆れたように言うポトフとミント。


「む? だって普通爆発」


「「しねえよ」」


「満身創痍に」


「「ならねえよ」」


椅子越しに振り向いたプリンが不思議そうに言うと、それを同時に、かつ、即座に否定する二人。


「……てェか、お前なんで手先が器用なのに料理が出来ねェんだよ?」


「オレ、あの温厚かつ奥ゆかしいピッド先生が怒ったところ初めて見たよ? やんわりとだけど」


技術の時間はスゲェのに、とポトフは疑問を抱き、彼曰く温厚かつ奥ゆかしいらしい家庭科担当のピッド先生を怒らせたプリンに、ミントは小さく溜め息をついた。


「ぶぅ……じゃあ」


彼らの様子にご気分を損ねた様子のプリンは、


「二人はどうして料理が出来るの?」


ぷーと頬を膨らませながら逆に彼らに質問した。


「……」


「……」


「「……」」


プリンの問いに、ミントとポトフは目をぱちくりさせた後、互いに顔を見合わせて、哀愁を漂わせ始めた。


「?」


突然どっぷりと暗くなった二人に、小首を傾げるプリン。


「……料理が出来る……と言うか、まあそこそこ作れる人にはね」


「二種類のヒトがいるんだぜェ、枕?」


疑問符を浮かべてこちらを見ている彼に、ミントとポトフは台詞を分担し、


「「本当に料理が好きなヒトと、料理が下手な親をもったヒト」」


最後は綺麗にハモってみせた。


「……」


うむ、僕はどちらにも当てはまらないな、とかプリンが思っていると、


「っも、聞いてようちのバカ親片方が群青色のカレー作ったかと思うと片方が実はまともな料理が作れるくせに敢えてなんか幼虫的なものがメインの炒めものとナメクジのフライなんか作ってるんだよ?!」


「おにィさんの料理は半端なく美味しいけど、おねェさんの料理はなんか確実に色おかしいし奇声発するしこの世の食べ物とは思えない未知との遭遇みたいな味がするんだぞォ?!」


「しかもたまに"隠し味はウチよ!!"とかもう本気でぶちのめしてやろうかと思うほどワケわかんないこと言いながら鍋に入ろうとするし!!」


「だからおねェさんの為を思って俺がさりげなく料理の本とかあげたら本気でぶちのめされるし!!」


「「しかも"残さないで食べてね♪"って笑顔で死刑宣告されちゃうし!!」」


ミントとポトフが涙目になりながら、何やらプリンにグチグチ言い出した。


「ぴ、ぴわわ……それは大変」


「「大変なんてもんじゃねえよ!!」」


「ぴわ! ご、ごめんっ」


あれ? 僕が怒ってた筈なのに、とお怒りの彼らに焦るプリンと、


「だから……これは自分が料理作れるようにならなきゃと……ね、ポトフ?」


「あァ、何せ死活問題だからな、ミントォ?」


哀愁を漂わせつつガシッと手を握りあうミントとポトフ。


「で、では、二人はどうやって作れるように?」


 泣き出しそうなほど暗い二人に、プリンが慌てて話題をふると、


「「聞いてくれる?」」


「ぴ?!」


彼らはバッと彼に顔を向けた。


≫≫≫


 赤い屋根の家を出て、運河にかかったアーチ状の橋を渡り、大通りを抜けて機関車に乗り、森を抜けてやって来たのは、綺麗な水と国立病院で有名な街、"アクリウム"。


「おばあちゃーん!」


その街にある青い屋根の家の隣に、ちっちゃいミントはてってけやって来た。


「あらミントちゃん。よく来たわねぇ」


扉が開き、現れたのは赤い髪の女性。

彼女はミントのお祖母さんである。


「あら、一人で来たのかい?」


「うん!」


「ま、凄いわねぇ!」


「えへへ〜♪」


お祖母さんに褒められ、ミントはえへへと照れた後、


「遊びに来てくれたのかい? 嬉しいわねぇ」


「あ、あのね、おばあちゃん?」


ニコニコ笑顔のお祖母さんに、


「ん? なんだい?」


「オレ、おばあちゃんにおねがいがあるんだ」


あのね、と話題を切り出した。

 ――一方、その頃、


「行ってきまーす」


「いってらっしゃァい!」


「気を付けてね」


そのお隣さんの家から金髪のお姉さんが出発し、黒髪の少年と茶髪のお兄さんがそれを見送った。

彼女はエリアで、彼はポトフで、その隣にいるのがソラである。


ぱたむ


エリアが角を曲がって見えなくなったところで、ソラは戸を閉めた。


「よし、後片付けしなくちゃだね」


「あ、俺もてつだう!」


「あは、ありがとポトフくん」


腕捲りをして気合いを入れたソラにてけてけくっついていくちっちゃいポトフ。


「……ねェ、おにィさん」


「? なあに?」


テーブルから椅子を引っ張ってきてその上にちょこんと乗ってお皿拭きをしながら、


「あのね、俺、おにィさんにおねがいがあるんだ」


ポトフはあのね、と丁度ミントと同じタイミングで同じ話題を切り出した。


「「もうすぐ母の日でしょ? だから、おりょうりおしえて!」」


≫≫≫


「「ごめんなさい嘘ですあの料理という名の殺人兵器をあの人につくらせない為ですすいませんすいませんすいません」」


「ぴわわ……ご、ごめん」


 昔を思い出しながら語っていくにつれてガンガン暗くなっていったミントとポトフに、プリンは慌てて謝った。

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