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学校日和2  作者: めろん
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第96回 カオス日和

 日当たりのいい中庭で、


『『ジェラジェラァ♪』』


「ふふっ♪ もうちょっとで終わるからね?」


植物学の先生が彼に出した課題、植物のスケッチを、彼、ミントは、植木鉢にはえている彼のお気に入りの植物であるマッドプラントを対象に取り組んでいた。

ちなみに、植物学は選択科目であり、プリンとポトフとココアは現在、それぞれ別の科目を受講している。


『『ジェララララァ!』』


……動く上に笑うだけでなく、遠くにいた虫を茎をにゅっと伸ばしてぱくっと食べたそれは、はたして本当に植物なのか。


「♪」


そんな疑問などまったくもって頭にないミントは、上機嫌でマッドの姿を紙に描き写していく。


『『ジェラララジェラ―…ジェラ?』』


 そんな時、マッドはふいに首……茎を傾げた。


「おお、この世界は不思議がすっぱいだな」


と同時に、背後からいつものごとく抑揚のない、かつ高いのか低いのかいまいち分からない声が聞こえてきた。


「! ……それを言うならいっぱい、でしょ?」


その声に反応し、ミントは突っ込みながらそちらに振り向いた。


「久しぶり、ワタル」


「ん、ちゃお」


そこには紺色の髪の彼、死神が、いつものごとく巨大な鎌の鎌子を担いで、いつもとは違って随分とカジュアルな服装で立っていた。


「……。ワタル、いつものカッコと違うくない?」


いつもは襟が高く袖と裾の長い、まさしく死神ちっくな黒いローブを着ているのに、あのローブはどうしたの? とミントが珍しそうな様子で尋ねると、


「フッフッフッ」


死神は不敵に笑ってこう答えた。


「クリーニング中だ」


「……そ、そう……」


どこか現実離れしている彼の妙に現実感溢れる理由を聞き、あれ自宅で洗えないんだぁ、とミントは妙に現実感溢れる感想を抱いていた。


「あ。じゃあ、ついでに聞くけど、どしていつもそんなおっきい鎌しょってるの?」


ついでに、彼に会う度にいつも疑問に思っていたことを、鎌子を指さしながら質問した。


「鎌子は体の一部です」


死神はまるで当然とでも言うかのごとく、えへんと胸を張ってそう言った。


「そっか……で、どうして学校に?」


 んな眼鏡みたいに言われても、とか思いつつも、まあ、いっか、ワタルだし、と何やら諦め半分な気持ちで、ミントは自分の横に、


「すとん」


と座った死神に、学校に来た理由を尋ねた。


「ん、実はみんとんに聞きたいことがあってな」


『『ジェラ、ジェラ!』』


「? 聞きたいこと?」


彼の問いに、死神はマッドを指でつつきながら、


「一年生になったら、友達百人出来るかな?」


「え、そんなことを聞く為にわざわざ異世界からここに?」


と質問したところ、ミントに質問で返された。


「百人で食べたいな。富士山の上でおにぎりを。ぱっくんぱっくんぱっくんと」


「キミとキミの友達百人総出でおにぎりを食べたいの? しかもなにゆえ敢えておにぎり? って言うかフジさんって誰さ? そんなに大勢で上ったらフジさんぺっちゃんこだよ?」


抑揚のない声でさらさらと言う死神に、ミントはさらさらと突っ込んだ。


「ん? ミントは富士山を知らないのか?」


『ジェラファァァ』


すると、死神はマッドに頭を噛みつかれながら、


「富士山はな、日本一高いんだ」


と、特に痛がる様子もなく淡々と答えた。


「ニホンって、ワタルが住んでる国の名前だっけ?」


「ん」


「へぇ、そんなにおっきい人なんだ」


そんな彼の言葉に、明らかにとんでもない誤解をしているミント。


「それで、ひとたび噴火すると日本のほとんどが壊滅状態になるらしい」


『ジェラルラァ』


そんな誤解に気付くことなく、鼻から上をマッドにくわえられながら話を続ける死神。


「ええ?! そんなに危険な人なの!?」


噴火、という単語を比喩表現として受け取り、怒っただけで一国を滅ぼしてしまうのか、と驚くミント。


「ん。でも多分大丈夫だ。もうすぐ噴火するって昔からずっと聞いてるけど、未だに噴火してないからな」


『ジェジェララファ』


頭がすっぽりとマッドの口に収まっていても、特に慌てることもなく普通に会話する死神。


「昔からって、随分と気が長いんだね―…って、ワタルううう?!」


えらく気が長いんだなと思いつつ、でも昔からずっと噴火しそうって言われてるなんてどんだけ情緒不安定なんだよ、とか考えていると、マッドがゲフッという音を発したので、ミントはようやく死神の非常事態に気が付いた。


「い、今の今までその状態でどうやって会話してたのさあああ?!」


と思いきや、ミントは違うポイントに驚いていた。












「フッフッフッ、未知の体験をしちゃったゾ☆」


「わっは、ポジティブすぎる♪」


 マッドに吐き出してもらった死神の第一声に、ミントは爽やかに突っ込んだ。


「もう、食べられてるなら普通にしてないで慌てて欲しいんだけど?」


呆れたように言いつつも、消化の為と思われるねっとりとした未知の液体でベトベトになっている彼に、ミントはタオルを呼び出して渡してあげた。


「ん? オレ様かなり慌ててたぞ?」


彼の言葉を聞き、ん? と小首を傾げる死神。


「え、そうだったんだ……え、そうだったんだ?!」


危うく納得しそうになったところで、


「いや、普通に会話してたじゃんか!? あれの具体的にどこが慌ててたって言うのさ?!」


ミントは元気に突っ込みをかました。


「んー、と言うか」


すると、死神はタオルで顔を拭きながら、


「みんとん、オレ様の横にいて会話までしてたのに気付かなかったのか?」


と、ご尤もな質問を投げ掛けた。


「え? い、いやだってオレマッドのスケッチしてたしいや確かにマッドの茎が一部伸びてるなーとは思ったけどワタルがあまりに自然にオレと会話してたから気付かなかったんだよ」


ので、それに対してのミントの言い分をさらさらと長文で述べると、


「ん? スケッチ?」


死神は、長文の一部だけに興味と関心を示した。


「うん。ほら」


ので、ミントはその物的証拠を提示した。


「……」


「……」


『『……』』


間。


「……。カオスだな」


死神の感想を聞き、


「……。でしょ?」


カオスな彼にカオスって言われるオレの絵って一体……? とか思うミントであった。

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