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学校日和2  作者: めろん
93/235

第93回 冬森日和

 粉雪が舞う森の中を歩きながら、


「成程ねー、ポトフを師匠に……」


ミントの話を聞いていたココアは、白い息を吐きながらこう言った。


「ミント、明らかに人選ミスだよー?」


「あっは、オレもちょっとそう思った」


彼女の言葉に、爽やかに笑いながら頷くミント。


「でもよかったー。駅で会った途端ポトフみたいなことをポトフと一緒に言い出したから、私、ミントが頭おかしくなっちゃったのかと思って本気で心配しちゃったよー」


「あはは、出来れば忘れていただきたい記憶だね?」


マフラーを巻き直しながら言うココアと、彼女から顔を背けながら言うミント。


「うーん……でも、そんな無理してかっこつける必要ないと思うよー?」


すると、ココアは赤い手袋をつけた右手の人さし指を顎に当てながら、


「だって、チロルはミントがすぐそうなるのを知ってていっつもミントの名前を呼びながら走ってきていっつも引っ付いてくるんでしょー? それって、そんないつものミントが好きだから一緒にいたいんじゃないのかなー?」


え? と、こちらに顔を向けたミントに、至極真剣な表情でそう言った。


「……! こ、ココア」


それを聞いて、ほんのりと顔を赤らめた直後、


「それに、キャラ被っちゃうしねー?」


「……うわぁ、それは是非とも避けたいねえ……?」


彼女の現実的な言葉に、感動がえらく冷めた様子のミント。


「あは、でしょー? しかもミントには似合わない似合わない♪」


「はは……じゃあ、ポトフなら似合っててかっこいいの?」


楽しそうに笑う彼女に、仕返とばかりにミントが尋ねると、


「なっ?! そ、そそそんなこと言ってないじゃーん!?」


「でも、そんなポトフが好きだから一緒にいたいんじゃないのかな?」


「っ!! もー、ミントのバカー!!」


ココアは顔を真っ赤にしてボスボスと彼に向けて雪玉を投げ出した。


ボスボスボスガツーン!


「いった――って、ガツーンっておかしくない!? 何入れたのさココア?!」


「絵馬」


「うわぁ、ご利益ありそう♪ って違う!!」


絵馬の角が直撃して赤くなった額を押さえながら、さらりと言ったココアに、ミントは乗り突っ込みをかました。


「神社に引っ掛けとかなきゃダメでしょ!?」


それも何か違うと思う。


「ミントミント!」


「ココアちゃァん!」


 ミントとココアがそんなことをしていると、彼らの前方から、プリンとポトフの声が聞こえてきた。


「! 雪玉転がしてどこ行ったのかと思ったらー」


「オレらの前にいたんだね……って」


ので、ココアとミントがそちらを向くと、


「「どっちが凄い?」」


プリンとポトフは、似たようなタイミングで似たような声で似たように彼らに勝敗を尋ねた。


「い、いやー……」


「どっちが凄い……って言われても……」


ので、彼らの間に立っている、どう見てもミントとココアにしか見えない雪の像に、ミントとココアは、


「「……どっちも凄いと思います」」


としか、言えなかった。


「「え〜―…」」


「わは〜、これプリンが作ったの? すっごい、超器用だね〜!」


「じゃー、こっちはポトフがー? すごーい、私に超そっくりー!」


彼らの言葉に超不満げなプリンとポトフであったが、


「「すっごーい!」」


「「……」」


自分が作った雪の像の前で目を輝かせるミントとココアの姿に、


「……照れる」


「あっはっはっ! 照れるぜェ♪」


最終的には納得した。

 と、その時、


『グオオオオオオオ!!』


「「――!?」」


彼らの頭上から、大地を震え上がらせる雄叫びが聞こえ、


バサバサ


ドシィィィン!!


「うわあ?!」


「ぴゅ!?」


「きゃあ!?」


「おわ?!」


その声の主――腹以外を赤い鱗に覆われた黄色く鋭い目を光らせているドラゴンは、彼ら四人の目の前に降り立った。


『グオオオオオオオ!!』


「うっそ、ドラゴンー?! って」


「ちょ、これ前と展開被ってない!? って」


「わー、おっきい。って」


「こいつが今回の課題なのかァ?! って」


巨大な敵の姿を見て、思い思いの感想を述べた四人の瞳は、


「「あ」」


自然とその足元に流れた。

――そう、そこは、雪で出来たミントとココアがいた場所。


「……」


「……」


「……」


「……」


『?』


突然の長い沈黙に、ドラゴンが小首を傾げた直後、


「キラキラァ!!」


「神風!!」


『――?!』


ちゅどおおおおおおん!!


ポトフとプリンの最大魔法が炸裂した。


「……ミントと」


「ココアちゃんのォ……」


吹っ飛んだ標的に向けた右手をそのままに、プリンとポトフはそいつをギッと睨みつけ、


「「(かたき)!!」」


「「死んでないよ」」


怒鳴りつけたすぐ後に、ミントとココアから突っ込みが飛んできた。


「テメェは……テメェだけは絶対許さねェ!!」


「うむ、行くぞポトフ!」


「おォ!!」


そんな突っ込みが聞こえないのか、なんかもう、その気になっているポトフとプリン。


「ランランコウコウキラキラァ!!」


「微風旋風神風!!」


『グオオオオオオオ!?』


どかあああんばこおおおんちゅどおおおおおおん!!


「「……」」


なんか、ドラゴンに向けてガンガン魔法を放っている彼らを見て、


「プリンって、たまにちゃんとポトフのことポトフって呼ぶよねー?」


「うん。って言うか死んでないのに」


ココアとミントは、呑気にココアとコーラをいただいていた。


「……って、ミントは参戦しないのー?」


「いや、オレの武器は鞭だから基本中距離か近距離型だし」


「私もチェーンソーくらいだから近距離だねー」


どかあああんばこおおおんちゅどおおおおおおん!!


戦う気が更々ないような会話をする間にも、まだまだプリンとポトフの激しい攻撃は続いている。


「あんなのに近付いたら巻き込まれちゃうよねぇ。植物魔法もあるけど、プリンの魔法の威力が分散されちゃうかもだし」


「まー、闇魔法も使えるっちゃ使えるけど、ポトフの光魔法を弱めちゃうおそれもあるしねー」


どかあああんばこおおおんちゅどおおおおおおん!!


そして、たまにドラゴンに押し返される。


「……でも、大変そだね。――枯れゆく茶色――」


ぶわんっ


「おー! 久々の召喚まほー!」


どかあああんばこおおおんちゅどおおおおおおん!!


プリンとポトフとドラゴンによる戦いのさなか、ミントは茶色の魔法陣を出現させ、


「λ(ラムダ)!!」


λ――茶髪でトンガリ耳を持った上半身は人で下半身は馬――ケンタウロスを召喚した。


『ひゃあ?!』


――が、


「「え?」」


『な、ななななんでボクを呼んだんですか主ぃ!?』


λは召喚されたと同時に、ミントの背中に隠れて涙目涙声におなりになった。


「い、いや、だってλは弓の、すなわち長距離攻撃が得意で」


『無理です無理です無理です無理です!! あんなおっそろしいのにボクが勝てるわけないじゃないですかぁ?!』


「「……」」


「……じゃあ、帰る?」


『はい!!!』


そんなわけで、


「ぷはぁ、コーラ最高♪」


「やっぱ冬はココアだよねー♪」


どかあああんばこおおおんちゅどおおおおおおん!!


ミントとココアは、呑気にコーラとココアを引き続きいただくのであった。

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