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学校日和2  作者: めろん
91/235

第91回 ヒーロー日和

 たくさんの初詣客で賑わう神社にて、


「おまたせ〜!」


「「! ミント!」」


後方から聞こえてきた高めな声に、道の端で待っていたココアとプリンは振り向いた。


「ミントおかえり」


「どこ行ってたのー?」


こちらに走ってきた彼におかえりを言うプリンと、彼が今までどこに行っていたのか尋ねるココア。


「たこ焼き!」


すると、ミントはにこっと笑って手に提げていた袋を彼らに見せた。


「えへ♪ みんなの分も買ってきたよ!」


そして、その中身を彼らに一パックずつ手渡した。


「わ! ありがとー!」


「うむ。ありがとう、ミント」


「あは、どういたしまして―…って、あれ? ポトフは?」


それをありがたく受け取りながら感謝の気持ちを述べるココアとプリンと、彼らに応えたすぐ後に友人が一人いないことに気付いたミント。


「む? 馬鹿犬なら、ミントがお店に行ってすぐどこかに行ったぞ」


「あ! 噂をすれば帰ってきたよー」


その問いにプリンが答えると、ココアはすっと前方を指さした。


「お待たせ〜ェ!」


「あ、ホントだ。どこ行ってたのさ、ポト―…」


彼女の指の先に友人を発見したミントは、発言の途中で思わず固まった。


「ウシ!」


すると、ポトフはにこっと笑って、縄で縛って引っ張ってきたウシを彼らに見せた。


「あは♪ みんなの分も狩ってきたぜェ!」


そして、彼らにそれらを一頭ずつ手渡した。


「わー! ウシさんだ!」


「いやこれどこで捕まえてきたって言うかここに連れてきてどうする気なのよー?!」


「いやこの際それは後回しにしてどうしてキミは初詣に行くとそうやってどこからともなく今年の干支を捕まえてくるのさ?!」


それをありがたく受け取りながら目を輝かせるプリンと、受け取り拒否をしつつ突っ込みをかますココアとミントと、


「あっはっはっ! 肉は生がオススメだぜェ♪」


肉を目の前にした為か、彼らの突っ込みを綺麗に無視するポトフ。


「「って食えるかああああ?!」」


「うむ。イタダキマス」


「「そして乗るなああああ!?」」


ぽんっとフォークとナイフを呼び出したポトフとプリンに、ミントとココアは全力で突っ込みを入れた。


「―…って、あれ?」


その時、視界の隅に何かを捉えたミントは、突っ込みを中止してそちらに目を向けた。


「! あれは――!」


そして、ハッと目を見開いたミントは、


「ココア、これとあとのツッコミ任せるねっ!」


「え?」


ココアにポトフの分のたこ焼きとあとのツッコミ役を任せると、人混みの中へと消え去った。


「ちょ、ちょっとー!? この状況下で私だけにしないでよー?!」


「「イタダキマース!」」


「って、いただくなあああ?!」


















 干支の生命の危機を捨て置いて、酷く慌てた様子で駆け出したミントは、


「念の為っ、ローズホイップ!」


シュパァン


人混みを掻き分けながら、薔薇の鞭を装備した。


「は……は……、……!」


人混みの中を突っ切って、人気のない森の入り口に辿り着いたミントは、人影を見付けて足を止めた。

 そこで彼のライトグリーンの瞳が映し出すものは、だんだんと暗くなって先が見えなくなっているこの先に広がる森と、


「よう、ねーちゃん可愛いなぁ?」


「えへへ、お嬢ちゃんひとりかい? それならおっさんたちと一緒にどうですかーい?」


「「うーぃ」」


酒気帯びと見られるおっさん六人と、


「ちょっ、は、離しなさいよ〜?!」


彼らに囲まれている金髪美少女。


ガサッ


――やっぱり、先程彼らに連れて行かれていたのは、と思うと同時に、


「たーこー焼ーきー」


ミントは、手に提げていた自分の分のたこ焼きのパックを開けて鉛直上向きに投げ上げ、


「「あ?」」


「アターーーック!!」


バシーーーーーーーン!!


彼の声を聞き、あ? といい感じに口を開けて振り向いたおっさんたちに向け、彼はパックから飛び出したたこ焼きを薔薇の鞭でホームランした。


「「ほごぉ?!」」


そして、焼きたてにつき激アツなたこ焼きを口内にぶち込まれて動きが鈍ったおっさんたちの隙を見て、


「チロル!!」


「! ミントきゅん!!」


ミントは金髪美少女――チロルの手をしっかりと握ると、彼女と共にその場から逃げ出した。
















「ふぅ……このくらいで大丈夫かな?」


 チロルの手を引いてしばらく走った後、ミントは後方を確認してからそう言って足を止めた。


「大丈夫だったチロル?」


そして、彼につられて足を止めたチロルに、ミントは心配そうな表情で質問をした。


「うん……助けてくれてありがと、ミントきゅん」


すると、チロルは斜め下を見つめながらお礼を言いつつ頬を赤らめた。


「あ、あは、どういたしまし」


「……あのね、ミントきゅん」


チロルは彼の手を両手で包み込み、そのまま自分の胸元に移動させながら口を開いた。


「へ? ……あ……な、何?」


そんな彼女に、顔を赤くしたミントが話の続きを促すと、


「アタイ、さっきね? 心の中でミントきゅんのこと、いっぱいいっぱい呼んだの」


チロルはそう言って彼の手を離し、


「だから、本当に来てくれて、アタイすっごく嬉しかった」


彼をふわりと抱き締めた。


「ありがとう、ミントきゅん大好き!」


――そして彼の胸の中で、幸せそうに告白した。


「へ?! ……あ……う、うん………………オレも」


「! ホント!?」


「ぅえ!? え……え、えぇっとぉ……」


慣れない展開に直面してしまい、


「――あ! そっ、そう言えば、さっきたこ焼き食べそびれちゃったなーあはははは―…」


ミントは、無理矢理な話題転換を試みた。


「……ねえ、ミントきゅん? 助けてくれたお礼とたこ焼きの代わりに」


――が、


「アタイを食べて?」


彼を見上げてにこーっと笑ったチロルの口から飛び出た言葉によって、それは見事に失敗に終わった。


「―…は?!」


直後、無理矢理な笑いを止めたミントは赤い顔を更に真っ赤に染め上げ、


『モー』


彼の背後から、ウシの声が聞こえてきた。


「……」


「……」


彼の背後から、ウシの声が聞こえてきた?


「……え? ウシがいるの?」


突然聞こえたウシの鳴き声に、当然のごとく驚くチロルと、


「……。……そんなところで何してんのさ?」


「「――っ!?」」


それに心当たりがあり、彼女から少し離れて非常にゆっくりと後ろを振り向きながら、非常にゆっくりとその先にいるであろう人物に質問を投げ掛けるミント。


ガ、ガサガサ……


彼に存在を見抜かれ、観念したように彼が振り向いた先にある茂みが動き、三人の人物が姿を現した。


「え――?!」


「ねえ……ココアにポトフにプリン?」


彼らの登場にびっくり顔になったチロルをよそに、非常にゆっくりと彼らの名を呼ぶミント。


「や……やっほー、ミントとチロルー♪ え、えと、誤解しないでねー? 私たちは、たまたまここを通りかかったんだよー? ね、ポトフー?」


すると、冷や汗を掻きつつ両手をわたわたと振りながらココアが言い、


「お、おォ! ウシを返しに来たらたまたまミントとチロルちゃんに会ったんだぜェ? な、枕?」


冷や汗を掻きつつ引きつった笑みを浮かべながらポトフが続き、


「ふむ。ミントがチロルちゃんを食べる?」


冷や汗など一滴も掻いていないプリンがぴこっと小首を傾げ、二人の言い訳を蹴散らした。


「……」


「……」


「……」


その問いに、真っ赤になるチロルと真っ青になるココアと真っ青になるポトフ。


シュパァンシュパァン


その音に、更に真っ青になるココアと更に真っ青になるポトフ。


「しっかり聞いてたんじゃんかもーこのバカバカバカあああああああああ!!」


「「ごっごごごごめんなさあああああああい!!」」


直後、二人の嫌な予感が的中。

彼らは、ローズホイップとマッドホイップを装備している上に怒り狂っているミントに、追われる身となったのであった。


「っやーもープリンのバカーーー!!」


「まったくだ!! いやまァ何を言おうと最終的にはこォなると思いましたけど自ら死期早めてどォすんだァ?!」


「むう、殺人ダメ」


「「しかもそのままの意味で取るなあああ?!」」





どうも明けましておめでとうございます!

今回の話を書いていて、なんか全身がかゆくなっためろんです。


新年早々、あちゃ〜な感じですが、どうぞ今年もよろしくしてやってくださいませ!


「「ああああけおめえええええええええええ!!」」


↑ミントから必死こいて逃げる三人


「こおおおとおおおよおおおろおおおおおおお!!」


↑凶器を振り回しながら彼らを追う狂気に満ち溢れたミント


以上、メイン四人からのやかましいことこの上ない新年の挨拶でした☆←


毎度ご愛読ありがとうございます!

ではまた!!

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