第89回 デート日和
後書きにお知らせがございます
水溜まりが凍りつくほど寒くなった冬の日のこと、
「カッキーン……」
「メルヘン! メルヘンですジャンヌ様ーっ!!」
水溜まりと化して凍ったジャンヌの前で目を輝かせているシルクハットの彼、
「む〜……」
『む〜……』
「……? 何をなさっているのですか、マロ様、夢魔様?」
フランは、ピエロ少女、マロと、丸っこい魔物のむぅちゃんこと夢魔に、小首を傾げながら声をかけた。
「……さん」
『む〜』
「いち」
すると、彼女たちは突然カウントダウンを始めた。
っぱっぽーっぱっぽーっぱっぽー
「まろ〜!! 十二時になったまろ〜!!」
『む〜! む〜!』
腕時計のクセにハト時計という、なんとも邪魔臭い代物がお昼の十二時になったことを知らせ、マロとむぅちゃんは嬉しそうに駆け出した。
「あ、どこに行かれるのですかぁ!?」
ので、フランは慌てて彼女たちを追い掛けていった。
「……普通にさみぃわね、コレ」
凍ったジャンヌは、放置という方向で。
両開きのクローゼットの内側の扉についた鏡の前に立ち、
「……こんなもんかな?」
紺色の帽子を被りながら、ミントはぽつりと呟いた。
バァン!!
「?!」
と、丁度その時、
「みんとーん! あっそぼうまろ〜〜〜!!」
『む〜! むむむ〜!!』
マロとむぅちゃんが、勢いよくミントの部屋に飛び込んできた。
「マロ様、夢魔様! ヒト様の部屋に入る時はノックぐらいしてください!」
それに少し遅れて、フランも姿を現した。
「まろろ〜♪ みんとん、まろ、朝っぱらじゃなくてお昼に来たまろ! えらい?」
彼の注意も聞かずに、えへんと胸を張ってマロが言うと、
『むむむ〜?』
彼女の足元で、むぅちゃんはちょこんと胸を張った。
「え? あ、あぁ、うん。偉い偉い」
夏休みでの失敗を機に、朝っぱらではなく真っ昼間にやって来た彼女たちを、ミントはクローゼットを閉めながら褒めた後、
「まろろ、みんとん遊んでまろ〜!!」
『む〜! むむ〜!』
「ごめん。今日は無理なんだ」
にこにこ顔のマロとむぅちゃんに向け、口の前で左手を立てて謝った。
「ま?!」
『む!?』
直後、マロとむぅちゃんは目を見開いて、効果音ならかの有名な曲が表現なさった運命の扉を叩く音、"ガガガガーン"が、特殊効果なら"10トン"と書かれた漬物石が降ってくるというのがベストマッチしそうな表情で固まった。
「ご、ごめんね? 今日は用事があって、マロとむぅちゃんとは遊べないんだ」
「どこかにお出掛けになるのですか?」
そんな彼女たちを見て、慌てて再び謝ったミントに、小首を傾げながらフランが尋ねると、
「あ、うん。オレ、今からデ―…」
彼はさらりと答えそうになったところで、ハッと何かに気が付いて口を噤んだ。
「? デ?」
彼が突然停止したので、疑問符を浮かべて首を傾ぐフラン。
「―…ぇ……えと、とっ、兎に角用事があるから!」
すると、ほんのり頬を赤らめたミントはそう言って、
「て、てなわけで、じゃあねっ!!」
何かから逃れるように部屋を飛び出していった。
「……? いってらっしゃいませ」
疑問の残ったような表情ではあるものの、フランは礼儀正しく彼を見送った。
「……まろ……」
それからしばらくして、打ちひしがれていたマロがぽつりと口を開いた。
「? はい?」
『む〜?』
語尾だけ聞こえた彼女の言葉に、ミントが出ていった扉を見ていたフランと、彼の足元に移動したむぅちゃんは、マロにくるりと顔を向けた。
「……しいまろっ」
すると、
「うまやらしいまろうまやらしいまろうまやらしいまろおおお!!」
マロは頭を抱えて盛大に騒ぎ出した。
「マロ様、それを言うなら"うらやましい"です」
『むぅむぅ』
そんな彼女に冷静な突っ込みを入れるフランと、それにこくこくと頷く彼の肩によじ登ったむぅちゃん。
「そんな細かいことはどーでもいいまろ!!」
バッと立ち上がってズビシッと彼らを指さしそう言った後、
「まろも、まろもクリスマスデートしたいまろおおお!!」
腕と足とをめちゃくちゃに暴れさせながら叫ぶマロ。
「……。デート?」
『む〜む?』
そんな彼女の言葉を、きょとん顔で聞き返すフランとむぅちゃん。
「っだあああい! デートも知らないまろかぁ!?」
ので、マロは両手で頭を抱えつつ、
「いいまろか!? デートっていうのは、"ごめん、待った?""ううん、今来たところ"で始まって手を繋いだり遊園地に行ったり水族館に行ったりホットドッグ食べて口の周りにケチャップつけたり特大パフェを一緒に食べたり砂浜でおいかけっこしたりたまに喧嘩したりして仲直りしてよりラヴラヴになりました、ちゃんちゃん♪ な感じの素敵タイムだまろよぉ!!」
と、早口で一気に畳み掛けた。
「い、いえ、僕が疑問に思ったことはデートそのものの意味ではなくてですね」
随分とベタだなぁとか思いながら、フランは苦笑いを浮かべて両手を前に出しつつ、
「マロ様には、その相手がいらっしゃらないではないですか?」
と、言ってはいけないことを素で口にした。
「ま……ままっ、まろだって、やろうと思えば楽勝まろ!!」
精神的大ダメージを受けたマロはそう言い返すと、
「開け! ドリームホール!!」
右手を挙げて、高らかに魔法を唱えた。
――すると、
「わあ!?」
「っ!!」
「きゃあ?!」
「くっ!?」
「わーお」
マロとフランの目の前に異次元へと通じる穴が空き、そこから制服姿のアオイとリンとウララとユウと死神が降ってきた。
「いたた……あ、あれ? ここは?」
「……。ミントさんの家、みたい、です」
「ってことは、また異世界に召喚されちゃったわけぇ!?」
「くっ……降りろアホ神っ!」
「フッフッフ」
彼らの立場から言うと異世界に召喚されてしまった、ミントたちの立場から言うと召喚された異世界の彼らは、思い思いに言葉を発した後、
「《暗雲の閃光は破滅をもたらす》」
思い思いに立ち上がった。
ダンッ!
「きゅうちゃん、ワタル、あおぴょん!!」
「あ?」
「え?」
「もの」
「……手当たりしだいですね」
『む〜……』
すると、マロはダンッと一歩前に出て、フランとむぅちゃんに呆れられていることなんか気にも止めずに、
「今からまろとデートしてまろ!!」
と、単刀直入にお願い申し上げた。
「え?」
「は?」
「がき」
疑問符を浮かべたアオイとユウと、彼らの言葉と自分の言葉を繋げて遊ぶ死神。
「「だ、ダメ!!」ですっ!!」
そんな彼らの言葉を掻き消すように、ウララとリンが声を張り上げた。
「るっせぇな……」
「びっくりしたぁ」
「くりびつ米びつー」
ので、不機嫌に耳を塞ぐユウと、びっくりするアオイと、先程からまともな言葉を発していない死神。
「り、リンたちは明日からテストがある、ですっ!」
「そ、そうよ! だから、あんたと遊んでる場合じゃないの!」
それぞれの反応を見せる彼らを置いて、リンとウララはそう言うと、
「ほら、行くわよユウ!」
「はぁ? なんで俺がお前の」
「勉強教えてくーだーさーいー!!」
「アオイも行く、です!」
「え? あ、うん。じゃあまたね、マロにフランさんにむぅちゃん。行こう、死神さん」
「はーい」
彼らを引っ張りつつ、ミントの部屋から出ていった。
「……ま……」
(全滅……ですね)
(む〜)
パタムと閉じたドアを見つめて石化したマロと、まあ、当然と言えば当然の結果ですが、と顔を見合わせるフランとむぅちゃん。
「ま……まろぉ〜……」
「『!』」
ぐしゅっと歪んだ彼女の顔を見たフランとむぅちゃんは、
「ま、まだ諦めては駄目ですマロ様!!」
『む〜! むむむ、むむ〜!!』
「そうです! 夢魔様のおっしゃる通り、まだ手はあります!!」
慌てて彼女を慰めた。
「……手?」
『む〜!』
涙を瞳いっぱいに溜めたマロの聞き返しに、むぅちゃんは力いっぱい頷いた後、短い前足でぴんぴんと窓の外を指さした。
「?」
その指示に従い、マロが疑問符を浮かべながら窓の外に目を向けると同時に、
パッチィン!!
フランの指パッチンが鳴り響いた。
その直後、ミントの家の周りに、
『『グルルルルルルアアアアアアアアアアア!!』』
フランのドラゴン(♂)が大集結した。
「……ま……」
マロ、再びの石化。
「ほらマロ様! よりどりみどりですよ!」
『む〜! む〜!』
そんな彼女ににっこりと笑いかける、悪意のないフランとむぅちゃんであった。
皆様こんにちは。
そしてメリークリスマス!
またまた突然ですが、またまた読者様参加型特別企画を開催しちゃいたいと思います!
俺に任せろ! という方、もしくは、うわウゼェ……と思いつつも、ま、まあ、内容だけなら読んでやってもいいぜ? という方がいらっしゃいましたら、もう少し下へどうぞ。
はい、改めましてこんにちは。
ミント
「こんにちはー……って、改めて言う必要あるのかコレ?」
前回の企画に引き続き、とぷらすあるふぁな感じで、本日から学校日和2への『質問コーナー』と、『もしもコーナー』とかをやっちゃったりしてみちゃったりしたいと思います!
「質問コーナーって、60話でちょこちょこやったやつ?」
はい。
例えば、
Q、この話、いつまで続ける気ですか?
とか。
「いきなり学校日和存続の危機?!」
Q、ミントの好きなものはなんですか?
とか。
「え? え!? こ、コーラだよコーラ!! ちょ、そんなに印象薄かったのオレえええ?!」
また、もしもコーナーというのはですね、
「……なんなのさ?」
読者様からお題をいただきまして、学校日和2のキャラになんやかんやさせるコーナーです。
「うぅん分かりづらい」
はい、自覚しております。
では、例をあげてみましょう。
もしもやつらがサンタクロースだったら。
「やつらって誰さ?!」
―――
もしもミントがサンタさんだったら、
「誰がクリスマスだ!!」
いきなりキレる!!
「ぐーすかぴー」
「どんないびきだよ?!」
「……ん? みんとん?」
起こしちゃう!!
「待ってたよ、ミントきゅんV」
「うわあ?! ちょ、なんで起きてるのさ!?」
「やぁんっ♪ だってだって、ミントきゅんが夜にお部屋に来てくれるって聞いたから、アタイもうドキドキして眠れなかった〜みたいな〜っ!」
「情報漏洩いいいい?!」
捕まっちゃう!!
―――
もしもプリンがサンタさんだったら、
「ふふふ、可愛い」
トナカイに興味津々でなかなか出発できない!!
「……ぷぇ……」
ソリで酔っちゃう!!
「ぷわ……ねむねむ」
途中で寝ちゃう!!
―――
もしもココアがサンタさんだったら、
「夜間外出なんて絶対ダメだ!!」
「ふわあ!? どっから湧いて出たのよバカ兄ー?!」
なんかお兄さんが出てきちゃう!!
「どうしてもと言うのなら私がついていこう!!」
「意味分かんないよって言うか還れよもー!!」
なんかお兄さんがついてきちゃう!!
「ほらほら、お兄ちゃんの膝の上においでマイシス」
「還れっつってんだろダークネスサクリファイス!!」
なんかもう、それどころじゃなくなっちゃう!!
―――
もしもポトフがサンタさんだったら、
「腹減ったなァ」
トナカイを肉として見ちゃう!!
「……一頭ぐらいいいよな♪」
本当に食べちゃう!!
「えェと、まずはミントのとこだな。……えへっV」
危険!!
―――
……てな感じで。
「待て。最後のヤツはなんだ最後の」
質問ともしもコーナーは、前回同様、『感想欄』または『メッセージ』にて承ります!
初見の方も一度お会いした方も常連の方も大歓迎でございますので、ご遠慮なくどうぞ!
「感想欄は、感想/評価のところで星とか選ばなければ感想だけ送れますよ」
わお、親切。
「では、皆様のご参加をお待ちしております!」
毎度ご愛読ありがとうございます!
では、また次回!




