表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学校日和2  作者: めろん
79/235

第79回 反省日和

 国立魔法学校一階、チョークが黒板を走る音とペンがノートの上を動き回る音だけが聞こえてくる静かな魔物学の教室にて、


「……ぷわ……」


「……くァ……」


二人の生徒が、睡魔と戦っていた。


「……む……」


こしこしと眠たい目を擦りながらも、きちんとノートを取ろうと試みるプリン。


「……」


ところが、彼はすぐに書いた文字を消した。

そして再び黒板に眠たい目を向け、それをノートに写す。


「……」


が、またすぐに消す。

――プリンは、同じ間違いを繰り返す睡魔の罠にかかっていた。


「……っとォ……」


とろんとした目をノートに向け、先生が黒板に書いたことを書き写そうとするポトフ。


「……」


ところが、ノートに現れたのは、とても文字としては読めない字。

そして再びとろんとした目を黒板に向け、それをノートに写す。


「……」


が、現れたのはやはり、解読不能な文字。

――ポトフは、字がまともに書けなくなる睡魔の魔法にかかっていた。


「……」


「……」


よって、まったく進まない二人のノート。


「いいか? 詰まり……」


カカカカカッ


にも関わらず、ガンガン進んでいく黒板。


「……」


「……」


……こてっ


プリンとポトフは、睡魔との勝負に敗退した。













 翌日。


「……っだから……」


国立魔法学校の玄関付近にて、箒も左手に持つ彼、


「なんでオレまで?!」


友人の罰則に何故か巻き込まれたミントは、目の前の現実に心の底から突っ込んだ。


「……ごめん」


「……悪ィ」


が、返ってきたのは元気のない謝罪と、


サッサッ


彼らが地面に散らばっている枯れ葉を箒で集める音。


「……」


調子狂う。

なんか調子狂う。


「……昨日の夜からずっとそんな調子だけど、どしたのさ?」


いつものような元気のない二人に、ミントは荒げた声を元に戻して質問をした。


「……」


「……」


「……」


問いに答えない彼らの答えを、彼らの口から現れるのをじっと待つミント。


「……昨日、魔物学の授業が終わったあと」


すると、プリンがうつ向いたまま静かに口を開いた。


「うん」


「……俺と枕がセル先生に呼び出されて……」


「う、うん」


答えてくれるのは嬉しいのだけれども、どっちが喋るのか固定していただきたいとか思うミント。


「それで……いつもみたいに怒られると思ったら」


「……先生、俺らに向けてこう言ったんだ」


彼の望みは届くことなく、プリンとポトフは交互に言葉を紡ぎ、


「「"俺の授業、そんなに詰まらないのか?"って、泣きながら」」


最後は綺麗にハモってみせた。


「……。……、ええ!? あ、あのセル先生が?!」


彼らの言葉に、ミントは驚いて目を見開いた。

そして、セル先生の泣きっ面を想像してみようと試みた。

冷たく輝く銀髪。

紫色の鋭い目。

に、涙。

――想像が、出来ない。


「……その時、初めて僕がどんなことをしていたかに気付いたんだ」


「だから、これは俺らの反省の気持ち……」


と言った後、プリンとポトフは再び掃き掃除を開始した。

――そう、これはセル先生からの罰則ではなく、彼らの反省の気持ちから出た、自主的な行動。

今日という日を機に、彼らは二度と同じ過ちを犯さないように生まれ変わろうとしているのであった。


(え? じゃあなんで巻き込まれてんのオレ?)


やる気に満ち溢れている為に、ガンガン遠くまで箒を進める彼らの大きな背中を眺めながら、ミントはご尤もな疑問を抱いていた。


「やっほー、ミントー!」


 そんな時、ミントの後ろからココアの声が聞こえてきた。


「!」


ので、


「聞いてよココア〜あ!」


「うわう?!」


ミントはどわっと涙を浮かべ、それを見て驚いた彼女に強制的に話を聞かせることにした。


「なんかもーひどいんだよ本当いや心掛けは立派だと思うんだけどさぁなんで毎回オレを巻き込むんだよって言うかオレはちゃんと授業聞いてるって言うのにまあ確かにそれでも分かんないから二人に勉強見てもらったりしてるんだけどそれにしたってオレまったく関係ないのにいっつもいっつもいっつもいっつも!!」


マシンガントークで。


「よ、よしよし。大変だねミントー?」


みーみー泣いているミントをどうどうと落ち着かせつつ、苦笑いココアは、


「あ、そだ。あのねー? さっき廊下でセル先生に会ってねー」


たった今思い出したかのように話題を切り出し、ごく自然に見えるように話題をすりかえた。


「かなーり不自然におイモ渡されたんだけど、どーすればいーと思うー?」


ココアが持ち出したのは、サツマイモがたくさん入った紙袋。


「……イモ……」


イモの山を見た後で、ミントが背後に目を向けると、その先にあるのは枯れ葉の山。


「……」


それらを見たミントは、ふっと口を綻ばせた。


「セル先生って、いいひとだね」


「へ?」


「プリンー! ポトフー! 焼きイモ食べるー?」


「「! 食べるー!」」


――そうして、彼らは焼きイモパーティーを開くのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ