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学校日和2  作者: めろん
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第78回 親日和

カランカラーン


 王都市、シャイアの街角にある花屋の扉が、綺麗な鐘の音を響かせながら開いた。


「いらはい―…て、あら、ゼラチンじゃない」


やって来たお客に、花に水をあげていた店の主人、ミントママのジャンヌは、その手を止めて若干驚いた。


「はっはっはっ! こんにちは、ジャンヌさん」


すると、彼、ゼラチンことゼリー=アラモードすなわちプリンパパは、朗らかに笑いながら挨拶を返した。


「何? また新しい浮気相手が出来たの?」


「はっはっはっ! 人聞きの悪い冗談は控えていただきたい」


小首を傾げたジャンヌの口から出た冗談に、朗らかに笑って受け答えたプリンパパは、


「ふふ、今日は妻の誕生日なのだよ」


と、オールバックにしていながらも額側に残っている一房の前髪をさらっと払いながら言った。


「何人目の?」


「三人目。って、コラ♪ はっはっはっ!」


アメリカンな雰囲気のジョークをかました後、


「ふぅん……。誕生日に花を贈るだなんて、あんた、クサザムイわね」


「はっはっはっ! それはお花屋さんが言ってはいけない台詞だろうと言うか、クサイとサムイを肌寒いみたいに言わないでいただけるかい?」


花屋にあるまじき台詞を口にしたジャンヌに、プリンパパは朗らかに笑いながら突っ込んだ。


「そんなことより、そうねぇ。クサザムイあんたにはこれなんかどうかしら?」


彼にしては珍しい突っ込みをさらりと受け流し、


「花言葉は、"食べちゃいたいほど愛してる"」


『『ジェララララァ!』』


マッドプラントの鉢を持ち上げ、それをプリンパパに勧めてみた。


「はっはっはっ! 素敵な花言葉だけれど、遠慮させていただこう」


が、彼はそれを朗らかに笑いながら断った。


「あら、どうして?」


ので、不思議に思ったジャンヌは理由を尋ねてみた。


「はっはっはっ! それはね、私の頭を食べているからだよ」


すると、頭がすっぽりとマッドの口の中に収まっているプリンパパが、朗らかに笑いながらそう言った。


「ゲヘヘ、あらホント♪ ……そのまま食い千切っちまいな」


『『ジェラ』』


「ん? 今何か殺意が孕んだ呟きが聞こえたぞって、いたたたたあ?!」


マッドの鋭い牙に首を貫かれそうになったところでテレポートし、生命の危機を脱したプリンパパは、


「か……代わりに、ここにある赤い薔薇をすべていただくよ」


と、赤い薔薇を大人買いした。


「チッ、しくじったか……へいへい。毎度あり」


「はっはっはっ! また来るよ」


何やら悔しそうに舌打ちしたジャンヌにそう言って、プリンパパはひらひらと手を振りながら花屋をあとにした。

と言うか、また来るのか。














 シャイアの街を出て、本日が誕生日である妻が待つアラモード邸に帰る為、


「♪」


プリンパパは、赤薔薇の花束を担いで、森の中を上機嫌で歩いていた。


「!」


その途中で、何かに気付いたプリンパパは、素早い動きで懐からナイフを取り出し、


ガガガッ!!


「「――っ!?」」


目にも止まらぬ速さでそれを振り向き様に投げつけ、背後の茂みに潜んでいた人物の銃を弾き落とした。


「……お引き取り願えますかな?」


驚いて固まっている、自分の命を狙ってきた輩に、すっと目を細めたプリンパパが言うと、


「「っ!!」」


彼らは悔しそうにその場から逃げ帰っていった。


「……」


その様子を見ていたプリンパパは、


「私ってやっぱり超かっこいい……っ!」


ポトフパパでもあることを思い出させるようなことを口にした。

 ――その時、


パアアアアアアアアン!!


「――っ?!」


銃弾が、彼の足を貫いた。


「くっ……まだ――」


薔薇の花束を取り落とし、撃たれたところを手で押さえながら振り向くと、


「バーンバニッシュ!!」


彼の背後の茂みに、突如として空中に現れた、灼熱の炎で形作られた巨大な剣が突き刺さった。


ドカアアアアアアアン!!


「大丈夫ですか?!」


そしてプリンパパの後方から、茶髪のお兄さん、


「あ、あなたは……?」


「僕はソラ。桐崎――じゃないや、ソラ=フラントです」


ソラが駆け寄ってきた。


「エリアっ!」


「うんっ!」


ソラが名前を呼ぶと、彼に遅れてこちらにやって来た金髪蒼目のお姉さん、エリアは、


「メディケーション!」


プリンパパの傷口に手をかざし、回復魔法を唱えた。

その直後、ぱあっと温かな光がともり、彼の傷はみるみる塞がっていった。


「ど……どうもありがとうございます……」


「! いえ」


お礼を言われたので、エリアがにこっと笑ってみせると、


「い……今……"フラント"っておっしゃいました?」


プリンパパは、彼らに向けてゆっくりと質問をした。


「「? はい」」


彼の問いに、彼らは顔を見合わせた後にこくりと頷いた。


「そ、それではまさか、貴女方がババロ――ぽ、ポトフくんの育ての親なのですか?!」


それを見て、プリンパパはバッと立ち上がり、期待を込めた目で彼らに尋ねた。


「「は、はい。そうですけど……」」


二人は、再びこくりと頷いた。


「なんと……! あ、は、はじめまして! 私は彼の産みの親、ゼリー=アラモードです!!」


ので、プリンパパは青い瞳を輝かせ、ソラとエリアの手をしっかと握ってご挨拶をした。


「「え」」


彼の言葉を聞き、


「えええ?! あ、貴方がポトフくんの!?」


「て言うか、アラモードさんって言ったら……!?」


彼がポトフの親であることに驚くソラと、アラモードという名前に驚くエリア。


「こんなところでお会いできるとは……! あ、あの! 今お時間があるのであれば是非私の家に!」


そんな彼らに、興奮した様子でプリンパパがそう言った。


「え? あ、えっと……」


「で、では、お邪魔させていただきます」


再び顔を見合わせた後、ソラとエリアは彼からのお誘いを受けることにした。


「本当ですか!? では、こちらです!!」


その答えを聞いたプリンパパは、嬉しそうに彼らを先導するように歩き出した。


「! そうだ! 先程のお礼がまだでしたね!」


「え? あ、お礼だなんて結構ですよ」


「はい。それにしても、ポトフくんのお父様が、まさかあのアラモード社の社長様だっただなんて」


そうして、彼らはアラモード邸に向け、和やかな雰囲気で歩き出した。


「いやあ、しかし、貴女方のような心優しくてお美しい女性に育てていただけて嬉し―…」


「じょせい?」


――が、その一言がまずかった。


「バーンバニッシュ!!」


ドカアアアアアアアン!!


「……もう、折角回復させてあげたのに……」


ソラの魔法によって黒コゲになったプリンパパを見下ろし、エリアは何かもったいなさそうに呟いた。

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