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学校日和2  作者: めろん
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第74回 決着後日和

 荒れ果てた地へと化した中庭に、二人の男が立っていた。


「……」


「……」


両者とも無言のまま、数秒の時が流れた。


「……ふっ……」


すると、バジルは口元に薄い笑みを浮かべ、


「私の……負け、だ……」


確かにそう言うと、どしゃっとその場に崩れ落ちた。


「……ぽ、ポトフが……」


「かっ、勝ちましたわ……!」


それを見て、中庭の外へ避難していたミントとムースが口を開くと、


「……おォ……応援ありがとな」


ザクッと光の剣を地面に突き刺し、それを杖代わりにしてポトフはその場に膝をついて、彼らに向けて弱々しく笑ってみせた。


「す、すごいですわ! ポトフさん!!」


「うん、すっごくかっこよかったよ! お疲れポトフ!!」


そんな彼に、ミントとムースが駆け寄ったところ、


「……こんの……」


カボチャの中から出たココアが、それを持ち上げて大きく振りかぶった。


「おバカーーー!!」


どぐおおおおおおおん!!


「「?!」」


そして、それを見事にポトフに命中させた。


「こんっな公衆の面前で何こっぱずかしいことやってんのよって言うか勝手に私を賞品にしないでよって言うか誰だよその緑、って、ちょっと聞いてるのー?!」


「お、落ち着いてくださいココアさん! と言いますか、恐らく聞こえていませんわっ!」


怒りの三連突っ込みをきめたココアを、ムースは慌ててなだめた。


「……え?」


彼女によって我に返ったココアは、目の前の事態に冷静に目を向けてみた。


「……」


ぽっくり


「ポトフ!? ポトフうう?!」


目の前では、ぽっくりしてしまったポトフをミントが必死で揺り起こしていた。


「ご、ごめーん!!」


ので、ココアは慌てて謝りながら、彼の元へと駆け寄った。


「……? ココアに誰だか知られていないような奴が馬鹿犬にココアを賭けての戦いを挑んだのか?」


「彼女の記憶の隅にもとどまることが出来なかったバジルさん……憐れですね」


「……楽しそうですね、兄さん」


うつ伏せに倒れている緑、もとい、バジルを見下ろしながら、プリンとアセロラとアロエはそんなことを口にした。













 ポトフとバジルと、何故か中庭に倒れていたチロルを医務室に運び終り、ミントたちがそこから出てきたところ、


「うっふふー♪」


医務室の前の廊下に、満面の笑みを浮かべたクー先生が立っていた。


「「っ!」」


即座にその笑みの意味を悟り、ミントとプリンがさっと顔色を悪くすると、


「中庭をめっちゃくちゃのぐっちゃぐちゃにしたの、キミたちだよね〜?」


クー先生は、彼らの予想通りの言葉を放った。


「ち……違うけど……っ」


「う、うむ……ごめんっ」


予想通り、巨斧をちらつかせながら。


「うん、素直でよろしい。じゃ、ちゃあんと元通りにしといてね♪」


血の気が引いて冷や汗まで掻いている彼らを見て、クー先生は巨斧をしまうと、にっこりと笑って去っていった。


「……ぶう、やったのは馬鹿犬なのに」


ので、プリンはぷうっと頬を膨らませ、


「さて、パーティーに戻りますか」


「案内しますよ、兄さん」


「まあ、わたくしもよろしくて?」


「逃げんなコラ」


「「ごめんなさい」」


逃げようとしたアセロラとアロエとムースの身柄を、ミントは薔薇の鞭で拘束した。












 ゆっくり目を覚ますと、白いベッドの中にいることに気が付いた。


「! ポトフ!」


そしてすぐに、視界にココアがひょっこりと現れた。


「ココアちゃん?」


魔力をほとんど使い切ってしまった為に酷く疲れているポトフは、静かに起き上がった。


「ホントごめんね、大丈夫だったー?」


彼の額がまだ赤くなっているのを見て、ココアが申し訳なさそうに謝ると、


「あっは、大丈夫。それより、俺の方こそごめんね? あんな公衆の面前で」


彼女に謝り返すポトフ。


「う、ううん!」


彼の言葉に、ココアは慌てて首を横に振った。


「え……えと……」


その後で、ココアが頬を赤く染めながら、


「勝ってくれて、ありが」


ごばあ


「「・・・」」


感謝の気持ちを伝えようとしたところ、ポトフの腹の虫に邪魔された。


「……あは……ココアちゃん、トリックオアミートォ?」


こんの、虫め!! とか思いつつ、ポトフが誤魔化すように笑いながら言うと、


「ええっ? お肉なんか持ってないよー?」


ココアは再び首を横に振った。


「……ふゥん? じゃァ」


するとポトフは、今度は妖艶な笑みを浮かべ、


「!」


ココアの左の頬に、右手を添えた。


「イタズラしちゃうぞ?」


そうして彼が、そっと瞳を閉じた彼女に顔を近付けていったところ、


パアアアアアアアアン!!


静かな医務室に、本物の銃声が鳴り響いた。


「「・・・」」


 そのままの体勢で、ポトフとココアがギ、ギ、ギ、と右に顔を向けると、丁度彼らの顔と顔の間を通り抜けた銃弾が、その先の壁にめり込んでいて、そこからゆらゆらと細い煙を上げていた。


「「・・・」」


それをしっかりと見た後、ポトフとココアが反対側にギ、ギ、ギ、と先程と同じように顔を向けると、


「うふふ♪ あのね? 医務室は、病気や怪我を治すところなの」


そこには、桃色の長い髪を頭の上でお団子にしている医務室のベル先生が、麗しい笑みを浮かべつつ、足を組んで椅子に座り、銃口を彼らの間に向けていた。


「だから、元気になったんなら」


それだけでも恐ろしいというのに、ベル先生は白衣のポケットから、


「悪いんだけど、出てってね?」


もう一丁、拳銃を持ち出した。


「「は、はい!! ごごごごめんなさいィっ!!」」


二丁の拳銃に、それぞれの眉間を的確に狙われていることを肌で感じ取ったココアとポトフは、真っ青な顔で冷や汗を掻きながら、


「「ししし、失礼しましたあっ!!」」


ガラガラガラバシーン!!


医務室から逃げ出した。


「うふふ♪ 仲のよろしいこと♪」


そんな彼らを見て、得物を両手でくるくると器用に回しながら笑うベル先生と、


「「……っ」」


そんなベル先生を見て、起きるに起きれなくなってしまったチロルとバジルであった。

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