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学校日和2  作者: めろん
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第73回 決闘日和

ぴゅるりらら


「……なんなんですかこの状況ー?」


 冷たい風が吹き抜ける中庭にて、"賞"と書かれたタスキをつけている巨大カボチャの頭の上から、ココアはちょこんと顔を出していた。


「ぶう……僕のカボチャ」


カボチャを取られたことで膨れっ面になっているプリンはほっといて、


「いっけーポトフ! ぶっ飛ばせー!」


「ポトフさん、応援しておりますわ!」


ミントとムースは、戦場に立つ彼を張り切って応援していた。


「はァ、ミントとムースちゃんが応援してくれるのは嬉しいんだけどなァ……」


二人に応援されているポトフは、倦怠感溢れる目で前方に立つ相手を見た。


「フハハ! どうやら逃げずに来たようだな!」


そんな目で見られてもまったく平気なバジルは、腰に手を当てて不敵に笑っている。


「……兄さん、よくあんなのと一緒にいられますね? アロエだったら、間違いなく燃やします」


中庭にある小さなテーブルに腰かけているアロエが、怪しげな手帳を片手にそう言うと、


「僕も何度か凍らせましたが、なかなか楽しいですよ? 彼を観察すること」


その向かい側に座っているアセロラが、怪しげな手帳を片手にそう答えた。

怪しげな手帳から茶髪眼鏡で顔立ちまでそっくりな彼らは、実は双子の兄妹だったのであった。


「ね……猫耳ミントきゅん……っ!?」


中庭に足を踏み入れたチロルは、は……反則……、とか呟きながら、その場に倒れた。


「……で、戦うって、どうすんだよ?」


 その場に居合た人物が取り敢えず一回喋り終わった後、ポトフは面倒臭そうに質問した。


「ん? そうだな……」


すると、そこまで考えていなかったのか、バジルは顎に手を当てて少し考えた。


「! にらめっこなんてどうだ!?」


「テメェの顔見てたって吐気しか催さねェよ」


「じゃあ、指相撲?」


「テメェの手なんか触れたくもねェよ」


「それならばジャンケンだ!!」


「嘗めてんのかテメェ」


何やら地味な勝負を提案するバジルに、冷ややかに応答するポトフ。


「……ならば仕方がない」


提案が全部否定されると、バジルはフッと不敵な笑みを浮かべた。


「息止め競争だ!!」


「キラキラ」


ちゅどおおおおおおん!!


なんかもう、どうしようもないバジルを、ポトフは無表情でぶっ飛ばした。


「とっ、突然何をするのだ?!」


心底驚いている顔で、バジルが彼に攻撃理由を尋ねると、


「はァ? テメェが言ったんだろ?」


ポトフは、柄の先に長い光の帯がついた光の剣、プリズムソードを出現させ、


「息止め競争、ってな」


その切っ先を向け、そう答えた。


「意味違――」


「「うまい」」


「――って、諸君?!」


それに首を横に振りかけた時、ミントとムースとアロエとアセロラが納得したので、思わず突っ込みを入れたい心境になってしまったバジル。


「遠吠」


そんな隙を見せている彼に向け、ポトフがその場で剣を振るうと、


「! 致し方ない――ロックビル!!」


光の剣の斬撃が飛んできたので、バジルは地面に手を当てて魔法を唱えた。


ドカアアアアアアアン!!


地表から突然突き出た大きな岩によって、彼はポトフの攻撃から身を守った。

――こうして、ようやく彼らの戦いが始まったのであった。


「……ねー、プリンー?」


「? む?」


 ドカンバコンと戦いが始まってからほどなくして、ココアはプリンに話しかけた。


「なんであの人ら戦ってるのー?」


と、ココアが小首を傾げつつ質問すると、


「ふむ。恐らく勝つ為に戦っているのだろうな」


プリンは至極当たり前の答えを口にした。


「勝つと何かいいことがあるのー?」


「むう、恐らく、何か賞品が貰えるのではないか?」


引き続き小首を傾げているココアに、小首を傾げ返しながら答えるプリン。


「……賞品って何ー?」


「……」


彼女の問いに、プリンは、彼女が入っている大きなカボチャにかけられた、賞と書かれたタスキをじっと見た。


「……」


「……」


「……」


「……」


そうして、プリンはしばらく考えた後、


「……。カボチャ?」


と、答えた。


「ポトフその調子ー!! にゃー!!」


「けちょんけちょんですわー!!」


 そんな彼らの隣で、何やら猫化し始めたミントと、お嬢様らしからぬ言葉を発するムースは、引き続き張り切ってポトフを応援していた。


「アースマジック!!」


牙狼(がろう)


爆発する地面を避けながら間合いを詰めたポトフは、光の刃をバジルに振り下ろした。


「ふっ、甘い甘い。アーストラップ!」


「? ――おわ!?」


しかし、バジルの魔法が発動し、突然足場がなくなったポトフは、そのまま落とし穴に落ちてしまった。


「ってェー……」


「フハハ! どうした、そこまでかい?」


痛そうな声を漏らしながら起き上がるポトフと、上から穴の中を得意気に見下ろすバジル。


「誰がっ」


ポトフは言いながら、不敵に笑う相手に向けて光の剣を投げつけた。


「おっと」


ザクッ


バジルが軽々とそれを避けると、剣は綺麗な放物線を描き、彼が立っていた少し先の地面に突き刺さった。


「ココアちゃんは」


その剣についている帯を頼りに、器用に地表に戻ってきたポトフは、


「誰にも渡さねェェェ!!」


バジルを睨みつけて盛大に咆哮した。


「…………………はい?」


彼の口から発せられた言葉を、思わず聞き返してしまったココア。


「ふっ、何を言う! ココア嬢を誰よりも愛しているのは私の方だあああ!!」


ローブをはためかせて魔力を高めつつ、吠え返すバジル。


「ふざけんな! 俺の方が愛してるに決まってんだろォォォ!!」


同じく魔力を高めつつ、更に盛大に吠えるポトフ。


「な……なあっ?!」


「ふむ。どうやらあいつらはココアを賭けて戦っているようだな」


「な、何やら、わたくしまで恥ずかしくなってまいりました……」


「ひとりの少女を賭けての愛の戦いですか」


「アロエなら絶対にやって欲しくないですね」


「にゃー!! ―…は!? いつまで猫耳つけてんのオレ?!」


そんな彼らを前に、顔を真っ赤にするココアと、冷静な判断を下すプリンと、恥ずかしくなってしまった為に両頬を押さえて紅潮するムースと、眼鏡をかけ直すアセロラとアロエと、まだ猫耳をつけていたことにやっと気付いたミント。


「――母なる大地よ、大いなる力をここに!」


「――遥かなる時をめぐりし光よ、降り注げ!」


外野の声が微塵たりとも聞こえないのか、バジルとポトフは、いよいよ最後の一手に入った。


「グランドテンブラー!!」


「メテオストリーム!!」


彼らが叫ぶと同時に、大地が荒れ狂い、空から無数の流星が降り注いだ。

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