第7回 野外授業日和
「えっと、次は生物学だよね?」
大きな食堂で、ミントが食後のコーラを飲みながら尋ねた。
「うん。あと確か、外に集合って言ってたよねー?」
「うん。嫌な予感がひしひしとするね♪」
ココアをテーブルに置いて頷いたココアが口にした言葉に、取り敢えず笑うしかないミント。
「そォ言えば、その次の四限目の魔物学も外だって言ってたよなァ?」
骨付き肉の骨を口から出しながら左を向くポトフ。
「僕に聞くな」
その隣でプリンを食べていたプリンは、スプーンを止めることなくそう答えた。
「まー、プリンは一限目と二限目、どっちも寝てたもんねー?」
「うむ。……ぷわ……ねむねむ」
ココアの言葉に頷くと、プリンは小さな欠伸をして眠たそうな声を発した。
彼女の台詞から、どうやら三年生の授業は一コマ九十分のようだ。
「って、まだ眠いの?!」
そんな彼に、ミントは素早く突っ込みを入れた。
「うむ。寝疲れて眠い」
「エンドレスじゃん!? それってエンドレスじゃん?!」
「ふふふ。ミントおもしろぐー」
「って、台詞の途中で寝たあ!?」
ミントの突っ込みの甲斐もなく、プリンは枕に顔を埋めて眠り出した。
「隙ありィ♪」
プリンが眠った隙を見て、ポトフは彼の額に油性ペンで"腐肉"と書いた。
「修学旅行!? しかも何故に"腐肉"?!」
すると、今度はポトフに突っ込みを入れるミント。
「あっはっはっ! ツッコミ入れんの大変だなァ、ミントォ?」
「誰と誰のせいだよ?!」
「ボブとジョニー?」
「本当に誰だよ!?」
「はー、三限目と四限目はどっちも外かー……」
突っ込み続けるミントと、完全に彼で遊んでいるポトフを無視し、ココアは嫌な予感に溜め息をついた。
「……今日の生物学と魔物学は同時進行二限続きで、野生の動物、または魔物の観察をしてもらいます」
「では、今からスケッチブックを配布する」
生物学担当のリア先生が説明すると、魔物学担当のセル先生が指を打ち鳴らした。
「……スケブ……」
手元に現れた、表紙に"スケブ"と書かれたスケッチブックを見て、やる気の無さを感じるココア。
「……課題は、動物と魔物を合わせて、一人十匹のスケッチを完成させることです。それでは、いってらっしゃい」
リア先生が言うと、彼女達は右にずれ、生徒達にその先にある森に入るよう促した。
「うーん、一人十匹かー」
「四人で分ければ早く終わるぜェ?」
多いな、とココアが困った顔をしていると、指先で皿回しならぬスケブ回しをしながらポトフが言った。
「! 成程ー! 良いこと言うわねー! たまには」
「あっはっはっ……たまには?」
「じゃー、ポトフは六匹でプリンは二匹、私とミントで二匹ねー?」
たまには、と言われてへこんだポトフを無視して、ココアがそれぞれの配分を言った。
「って、俺、六匹?!」
「八匹にするー?」
「六匹で結構でェす♪」
ココアが一言でポトフを黙らせると、
「ふむ。どうしてココアとミントで一塊?」
プリンが小首を傾げながら彼女に質問した。
「そりゃー、女の子が一人で森を歩くのは危険だし、ミントはとてつもなく絵が下手でしょー? だからだよー」
何気無く酷いことを口にするココア。
「納得した」
それに納得しちゃったプリン。
「じゃー、早速しゅっぱーつ! って、はれ? ミントはー?」
元気に拳を振り上げた後、ミントがいないことに気付いて小首を傾げるココア。
「ミントならあそこで植物を観察しているぞ?」
「え?」
プリンが指さした方に目を向けると、
「……綺麗……」
その先で、ミントはこれから入る森の草木に感動していた。
「これが、"青の森"……」
それは、その森が今までの森とは違って、草木が文字通り青々としているから。
「ミントー、早く行くよー?」
「あ、うん」
こうして、四人はそれぞれ青の森へと入って行った。