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学校日和2  作者: めろん
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第69回 遊園地日和

「はー、散々な目に遭ったねー?」


 おサルさんを倒して元の姿に戻ったココアが、額に掻いた小汗を拭いながらそう言うと、


「ホント、ミントのおかげで助かったぜェ」


きっちり締まったネクタイを緩めながらポトフが言った。


「いやいや、ココアが薔薇の鞭出してくれたおかげだよ」


それに謙虚に応答しつつ、ミントはココアに目を向けた。


「ミントの魔力って、本当に扱いにくいんだねー? ……って言うか、まさか私が薔薇の鞭振り回す光景を見るなんて、夢にも思わなかったよー」


すると彼女はそう言って、手に持っていた薔薇の鞭をミントに返した。


「あはは、ごめん」


ココアの姿で、乙女にあるまじき行動をしでかしたミントは、申し訳なさそうに笑いながら彼女に謝った。


「……ト……ミント……」


「「?」」


その時、下から声が聞こえてきたので、ミントとココアが下に顔を向けると、


「ぷゆ……降りて」


ミントの足の下に、プリンがうつ伏せに倒れていた。


「うわあ?! ごごご、ごめん、プリン!!」


「ごめんプリンー!! ずっと踏んでたの忘れてたー!!」


ので、ミントは驚いて飛び退いて、ココアは慌てて謝った。


「ぷえ……どろんこ」


 ミントが退いて、立ち上がったプリンは、服についた汚れをぱんぱんと払い落とし始めた。


「……む?」


その時視線を感じたので、プリンが顔を上げると、


「なんか、ポトフみたいだねー?」


「うん。流石は双子だね」


ユルユルな格好をしたプリンを見ながら、ココアとミントがそう言った。


「ば、馬鹿犬と僕を一緒にするなっ!」


ので、プリンはぷりぷり怒りながら服のボタンを閉めだした。


「馬鹿犬って言えば、ポトフもプリンみたいだったよねー?」


「うん。流石は双子だね」


 再び同じようなことを言いながら、ココアとミントがポトフに目を向けると、


「ミント、あれなんだ?」


先程まできっちりとした格好をしていたのに、すっかり元に戻ってしまっている彼は、前方を指さしながらミントに質問をした。


「「?」」


「あれ?」


それにプリンとココアは疑問符を浮かべながら、ミントは小首を傾げながら彼の指の先へと目を向けた。


「む? お城がある」


「本当だー」


森の向こうにあるお城を見て、プリンとココアがそのまんまな言葉を発すると、


「! ああ! あそこは確か、"ワンダーパーク"とかいう遊園地だよ」


ミントはピコンと思い出したようにそう言った。


「「ワンダーパーク?」」


それに、何それと小首を傾げたプリンとポトフはほっといて、


「あ! それ聞いたことあるあるー! 私は行ったことないんだけど、確かこの国一番の大きさの遊園地なんだよねー?」


「そうそう。あんまり覚えてないけど、めちゃくちゃ広かったと思ったよ」


ぱむっと胸の前で手を叩いたココアに、ミントはこくりと頷いてみせた。


「ふえ? ミントはあそこに行ったことあるのー?」


彼の発言を、ココアが羨ましげに聞き返すと、


「うん。だいぶ昔のことだけど、オレ、あそこにルゥ様と一緒に行ったことあるんだ」


ミントはさらりとそう答えた。


(国王様と)


(遊園地?)


(って言うか、仕事しろよ)


ご尤もな感想を抱くポトフとプリンとココア。


「懐かしいな〜。確か、オレが十二歳のときだったかな? ルゥ様が何かの乗り物に乗ろうとして」


そんな三人をよそに、懐かしげに森の向こうのお城を見るミント。


「でも身長が足りなくてルゥ様だけ乗れなくて」


(それは悲しい)


(不憫だねー)


(ふふふ、ちっちゃい)


ミントの回想に、思い思いの感想を抱くポトフとココアとプリン。


「そしたらルゥ様が癇癪起こして放電しだしてオレが必死になってルゥ様をなだめつつ係の人とかにめちゃくちゃ謝りまくって」


(そんな笑って語れる思い出じゃあない)


(十二歳に尻拭いさせる国王様って一体……)


(ふむ、成程。ミントのあの謝り攻撃はその時身に付けたものだったのか)


あははと笑いながら語るミントに、ココアとポトフとプリンは、思い思いの考えを浮かべた。


「ね、ねー、ワンダーパークって、確か、いろんな乗り物があるんだよねー?」


 聞いていられなくなったのか、ココアが話題の方向性を転換させると、


「へ? あ、うん。オレはルゥ様のせいでコーヒーカップにしか乗れなかったけど、いっぱいあったよ」


と、ミントは何やら悲しい答えを返した。


「だ、だよねー! すごーく大きい大観覧車とかー」


負のオーラを漂わせるミントに負けまいと、明るく話を続けるココア。


「すごォく大きい」


「観覧者?」


「どんなだよ」


ココアの言葉を聞いて、山の景色を観覧している山のように巨大な巨人を思い浮かべたポトフとプリンに、さらりと突っ込みを入れるミント。


「すごーく速いジェットコースターとかもあってー」


更に明るく話を続けるココア。


「すごォく速い」


「コースター?」


「あっは、そんなん乗ったら死んじゃうね」


彼女の言葉に、機動力抜群のコースターを思い浮かべたポトフとプリンに、ミントは再びさらりと突っ込みを入れた。


「えーとー、あ! あと、すごーく怖いオバケ屋敷とかもあるんだよねー?」


その時、ココアがにこっと笑って口にした言葉を聞いて、


「すごォく怖い」


「オバケ……」


ポトフとプリンはぱきっと固まった。


「……」


そんな彼らを見て、まだオバケが怖いのか、とか、半ば呆れつつ思うミント。


「あー、なんか行きたくなっちゃったー! ね、今からみんなで行こ―…」


「さ、課題終わったし」


「―…え?」


「きっともうワンダーパークには行けないと思うけどまあドンマイココア」


「へ??」


突然態度が変わったポトフに、疑問符を浮かべたココアが、ミントにポンと肩を叩かれて疑問符を倍増させたのとほぼ同時に、


「よし、そろそろ帰ろォぜェ?」


「うむ。そうだなテレポート」


彼らは何事もなかったかのように、国立魔法学校へと帰っていったのであった。

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