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学校日和2  作者: めろん
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第68回 ぐだぐだ日和

 夏の暑さも和らいで、緑の葉が赤や黄色に色付いてきた森の中で。


「待てこのおサルゥ!!」


「はっ……はっ……走りにくい……」


「あーもー、ちょこまかとすばしっこすぎー!!」


「ぷぅ……ぷぇ……走るの苦手」


毎度お馴染、プリンとココアとミントとポトフの四人は、一匹のサルを追い掛けていた。


『ウキャキャ! 悔しかったらここまでお〜いで!』


彼らの遥か前方を走るサル、もとい、サルのような魔物は、赤いおしりをぺんぺんと叩くという、なんとも古典的な挑発をした。


「こんのっ、調子に乗りやがって……上等だァ!!」


それにまんまと乗ってしまった彼は、流れるような水色の髪を後頭部で一つに束ね、いつもは眠そうな青い目をカッと開いているプリン。


「ああもうやだこれなんかスースーするし丈短いし肌寒いし爪先立ちしなきゃなんないし何より走りにくいしぃっ!!」


自分が着用しているスカートとブーツに対してぶつくさと文句を言っている彼女は、緩いウエーブがかかった桃色の髪のココア。


「それお気に入りなんですけどって言うかちょっとそんなに足開いて走らないでよー!?」


そんな彼女に文句を言う彼は、赤と緑の髪を隠すように帽子を被ったミント。


「ぷぅ……ぷゆ……、――ぴわ?!」


息を切らせつつトテトテと走り、遠近が分からずに木に激突してしまった彼は、少しクセのついた黒髪で右目に黒い眼帯をつけ、左耳に十字架ピアスをつけているポトフ。


「……痛い」


「「だ、大丈夫、ポト――じゃない、プリン?!」」


「枕テメェ俺の顔に傷つけてんじゃねェェェ!!」


おでこを押さえて素直な感想を述べるポトフと、彼を心配して立ち止まるココアとミントと、ポトフのおでこが赤くなってしまったことに憤るプリン。

――お分かりであろうか、彼らは中身が入れ替わっているのであった。


「しっ……仕方がないだろう。遠近が掴めないんだ」


「バカお前そんなの心の目で補え!!」


「ねぇココア、ズボンと運動靴持ってないの?」


「やだ! それお気に入りなのー!」


おでこを押さえながら抗議するポトフはプリンで、何やらかっこいいことを言ったプリンはポトフで、頼むように質問をしたココアはミントで、ぷうっと膨れてそれを拒んだミントはココアである。


「……ったく、こんな体じゃろくに走れねェって言うかお前なんで俺の体でそんなに走れねェんだよ?」


彼にしたらちょっと走っただけなのに、すぐに息切れする体にイラつくプリン。


「知るか。苦手なものは苦手なんだと言うか貴様、僕の姿でそんなだらしのない格好をするな」


その言葉にイラッときたポトフは、ローブは全開でネクタイは首にかけただけの状態な上にワイシャツのボタンは開けまくりな彼に文句を言った。


「うっせェな、暑苦しいんだよ。ってェか、テメェこそ俺の姿でそんなだっせェカッコすんな」


すると、ネクタイをきっちり締めてワイシャツもローブも閉まるところはしっかりしまっている彼にプリンは言い返した。


「馬鹿か貴様は? 制服は学校の指定通りにきちんと着てこそ制服だ」


「個性尊重。ヒトを見た目で判断すんなって教えたのは学校の方だろォ?」


「あはは……思考と服装正反対」


「双子なのにねー?」


体が入れ替わっていてもバチバチと火花を散らす彼らを見て、のほほんと笑うココアとミント。


『ウキャキャキャキャ! もう終わり? もう終わり?』


「「……」」


 彼らが止まってそんな会話をしていると、頭上の木の枝の上から、腹の立つ声が聞こえてきた。


「……こんなややっこしいことになったのもォ」


「うむ。すべては」


「セル先生が魔物分布域調査の課題を出したせい」


「そんでもってー」


ので、四人はギッと上を向き、


「「お前のせいだこのバカザルううう!!」」


声を揃えて思い切り怒鳴った。


『あっかんべーっ♪』


すると、彼らに入れ替え魔法をかけた張本人、サルまがいな魔物は、再びなんとも古典的な挑発をした。


「ぶ、ぶっ殺……キラキラァ!!」


挑発に乗りやすい気質であるらしいポトフが入っているプリンは、魔物に右手を向けて魔法を唱えた。


『ウキャキャ! 風魔法使いが光魔法を使えるわけないだろバーカバーカ!』


そんな彼を、面白そうに笑いながら馬鹿にする魔物。


「なろ――そっ、そよかぜ!?」


ならば風魔法を使ってやろうと彼が疑問形で魔法を唱えると、


ぱひゅう


「「……」」


彼の右手から、微弱な風が発生した。


「っだァァァ!! とことん使えねェェェ!!」


「し、失敬な! 貴様の使い方が悪いんだっ!」


『ウキャーキャキャキャ! しょぼい、しょぼい!』


両手で頭を抱えるプリンとそれにムカッときたポトフと、木の上で腹を抱えて笑う魔物。


「どーやら属性魔法は属性によって勝手が違うみたいだねー。ってことはー」


魔物をキッと睨みながら、ローブのポケットから杖を取り出したミントは、その先を魔物にすっと向けた。


「! ち、ちょっと待ってオレ、違、ココア―…」


「土偶になっちゃえー!」


それをココアが止めようとしたにも関わらず、ミントは、彼女自身が得意な変身魔法を唱えた。

――結果、


ドカアアアアアアアン!!


大爆発。


「な……なんでー?!」


「ゴホッ……一年の時に見てたでしょ? オレの魔力は扱いにくいんだって」


この魔法で一度も失敗したことがないのにとショックを受ける黒焦げミントと、黒焦げになりつつむせながら理由を述べるココアと、


『ウキャーキャキャキャ! 自爆? 自滅?』


木の上で転げ回る魔物。


「む……こうなったら」


そんな魔物を見て、ポトフはローブのポケットから、


「骨付き肉ゥゥゥV」


を、取り出した。


ぺろり


「あっはっはっ! 美味かったァ♪」


「「……」」


が、それはプリンに三秒でたいらげられてしまった。


「食べてどうする!? 馬鹿か貴様は?!」


「あァ? 仕方ねェだろ、俺は狼男だ!!」


「貴様は人間だろう!!」


「ま、枕……」


「そこで感動するな!!」


どうしようもないプリンに頭を抱えるポトフ。


「はあ……もうしょうがないなぁ……」


賑やかかつ役に立たない彼らに溜め息をつくと、ココアは、


「こっちにカモ〜〜〜ン、おサルさ〜ん♪ 来てくれたら、いいコトしてあげちゃうぞ☆ みた〜いな〜〜〜っV」


両手をグーにして顎の下に持っていき、片足を上げてキャピッとお願いした。


「「……」」


ココアとミントとポトフの間に、冷たい風が吹き抜けていった。


「喜んでェV」


「喜ぶな」


喜んで彼女の元に飛んでいこうとしたプリンを、ゲシッと足で潰すミント。


「ぴわわ?! 僕の体に何をするんだココア!?」


「……お……俺の体で"ぴわ"とか言うな……」


「それはこっちの台詞! 何私の体でチロルみたいな恥ずかしいことしてんのよミントー?!」


「ええ? だってチロルがこれやると大抵のことはまかり通ってたよ? あと、話は変わりますがオレの体でその口調やめてくれません、ココア?」


『ウキャーキャキャキャ! 収集つかない! ぐっだぐだ!』


そんなこんなで、彼らが元に戻るまでに、あと三時間を要したそうな。

以上、ぐだぐだ日和でしたー。

……真面目にぐだぐだで申し訳ない上に面目ないです(泣

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