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学校日和2  作者: めろん
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第67回 汚名返上日和

「? 何、これー?」


 きらきらと光る小さな十字架のついたピアスをつまみ上げ、


「私、ピアスホール空けてないよー?」


と言いながら、ココアは小首を傾げた。


「ううん。それはね、"しあわせのおまもり"なの。持ってるだけでもいいんだよ?」


ルームメイトにしてココアの友達の彼女、ブドウは、


「どうか、ココアとココアの好きな人が、しあわせになりますように」


顔の前で両手を組み、目を瞑ってお祈りをした。


「あ、ありがとー……え、えと、おまもりー?」


若干顔を赤くしたココアが確認するようにブドウに聞き返すと、


「うん、私の家の教会で作ってるおまもり♪ デート頑張ってね、ココア!」


彼女はふわりと笑ってココアを応援した。


「う、うん! ありがと、ブドウ!」


それを大切に握り締めて、ココアは待ち合わせ場所へと走っていった。


≫≫≫


 今日一日の授業がすべて終わり、生徒たちで賑わう食堂にて。


「……」


彼の左耳に光る十字架ピアスを、ココアはぽけーっと眺めていた。


「?」


こちらを見つめているココアに気が付いたポトフは、ふっと口を綻ばせ、


「……そんなに俺、かっこいい?」


流し目。


「寒くなってきたね、プリン」


「うむ。もう秋だからな」


ゆえに、体感温度、急降下。

ミントとプリンはほのぼのと笑いながら、夜空の向こうに目を向けた。


「ふああ?! ななな、何言ってんのよこのナルシストー!?」


「あは、可愛い♪ ココアちゃん、口の端にケチャップついてるぜェ?」


「寄るな! 自分で取れる!!」


麗しい笑みを浮かべて近付いたポトフを右手で制し、左手でごしごしと素早くケチャップを拭う、顔が赤いココア。


「あ、あれ。流れ星だよ、プリン」


「うむ。流れ星だな、ミント」


未だ現実から逃避し続けているミントとプリン。


「折角取ってあげようと思ったのにィ」


「いらんと言っておろう!!」


「口でV」


「オーウ! 何ーも聞ーこえーマセーン!!」


ポトフの言葉に言語崩壊を起こすココア。


「……大丈夫、ココア?」


「アイムゥヲッケー!」


「ふむ。重症だな」


「かっこよすぎるって、罪だよなァ……」


「そして貴様は愁傷だな」


心配するミントと、テンションが妙に高いココアと、自分のかっこよさに罪を覚えるポトフと、突っ込みが出来るようになってきたプリン。


「はあ……まあ、ラヴラヴなさるのも結構ですけど」


ミントは呆れたように溜め息をついた後、


「ほれなら、どーひてはんはにたらひてたのひゃ?」


ココアに両頬を思い切り引っ張られながら、ふやふやと何か喋った。


「どォしてあんなにタラシてたのさって……」


それを見事に聞き取ってみせたポトフは、


「よし、じゃァ、よォく聞いてろよォ? タイトル、"俺物語"」


と言って、目を瞑って語り出した。

タイトルは、"俺物語"。


≫≫≫


「♪」


 その日、服装も髪型もばっちりきめたポトフは、上機嫌で待ち合わせ場所、ウサギさん寮の談話室の入り口付近に立っていた。


「「あ!」」


「はェ?」


すると、


「昨日食堂にいた!」


「きゃ〜! 同じ寮だったなんて〜!!」


「あ、あの! お名前を教えてもらってもよろしいですかぁ?!」


ウサギさん寮の黄色い声軍団が、彼の周りに群がってきた。


「俺? 俺は」


ので、ポトフは可愛らしい彼女たちに麗しい微笑みを向けながら、


「ポトフ。ポトフ=フラント」


自分の名前を名乗り、パキンと指を打ち鳴らした。


「……以後、お見知りおきを♪」


「「きゃー!!」」


手元に現れた薔薇と彼の素敵な笑顔にエキサイトする女子生徒たち。


ガシッ


「?」


と、その時、彼は何者かに右腕を掴まれた。


ぐいっ


「おわ?!」


その後、力いっぱい引っ張られ、


ゴゴゴゴゴ……


ポトフはそのまま寮の外へと引っ張り出された。


「な、何す―…って、ココアちゃん?!」


顔を上げると視界に入った目の前の桜色に、ポトフが驚いたような声を発したところ、


「……てい……」


ココアは彼の右腕を掴んでいた左手を離し、右手を握り締めたまま小さく口を開いた。


「へ?」


その言葉を聞き取ることが出来なかったポトフが小首を傾げると、ココアはキッと振り向いて、


スッパアアアアアアン!!


何かを握り締めていた右手で、思い切り彼の左の頬に平手打ちを見舞わした。


「な――」


「最っっっ低!! あんたなんて、この学校の女子全員と五回くらいデートして最後に全員にふられればいいのよー!!」


何が起きたのか理解出来ていないような茶色の瞳をココアに向けると、彼女は濃い桃色の瞳に涙を浮かべながらそう怒鳴り、そのままどこかへ走り去っていってしまった。


「……こ……ココア、ちゃん……」


その場に残ったものは、ばっちりとココアの手形がついたポトフと、彼女の右手から落ちた十字架ピアス。


「……」


ポトフは、足元に落ちていたそれを無言で拾い上げ、


「分かった」


それをぐっと握り締めて、素で何かを了解した。


≫≫≫


「「・・・」」


 いや、そこで了解しちゃダメだろ、と突っ込みたいところであったが、何やら口を開く元気もないココアとミント。


「ぐー」


プリンに至っては、興味がないのか、序盤の方から寝てしまっている。


「だからあの後、俺はココアちゃんに言われた通りこの学校のほとんどの女の子たちと五回くらいデートしたんだ」


あれは男を磨けというココアちゃんからの課題だったのだ、と、独断と偏見で勝手に思い込んでいたポトフはそうして話を締め括り、


「つゥわけで、俺は断じてタラシじゃねェ」


と、胸を張って言い張った。


「「うん、そうだね。ただのバカだったんだね」」


ので、ココアとミントは口を合わせてそう言った。


「おォ――って、ば、バカァ?!」


「コーラお代わりしてこよっと」


「あ、私もココアお代わりー」


「ちょ、バカって」


「ぐー」


「って、寝てんじゃねェェェ!!」


汚名返上したつもりが、新たな汚名をいただいてしまったポトフであった。

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