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学校日和2  作者: めろん
51/235

第51回 協力日和

カカカッカカカッカカカッ


 青く美しい草木が密生している青の森で、一頭の鹿が全力疾走していた。


「待て待て待てェェェ!」


「ちょっ、速いってポトフううう?!」


理由は、すぐ後ろに、ハンターとそのおまけが迫ってきているから。


ザザッ


追手からいち早く逃れる為に、小高い茂みを飛び越えた鹿は、


「ひにゃあ?!」


ぐにょ


と、たまたまその先にいた猫耳少年、サラダを踏み付けていった。


ガササッ


「逃がすかァァァァ!!」


「うわあ?!」


鹿を追い掛けて、同じように茂みを飛び越えたポトフとミントも、


「ひにゃああ?!」


ぐにょにょ


と、サラダを踏み付けていった。


「……? ――! ちょ、なんか今サラダ踏まなかった!?」


はっとしたミントが、ポトフに向かってそう言うと、


「? サラダ?」


ミントをちらりと見たポトフは、


「……誰だそれ?」


と、首を傾げた。


「えええ!? 三年も同じ寮にいるのに分かんないの?!」


全力疾走しながら突っ込みを入れたミント。


「野郎に興味なァァァァし!!」


「いやでも隣の部屋の人ですよおおお?!」


再びミントを引っ張りながら茂みを飛び越えたポトフと、現代の近所付き合いの現状を思い出させるような突っ込みを入れたミントであった。












ぱしゃぱしゃ


 青の森の中を流れる大きな川で、プリンは枕を洗っていた。


「わ、この森はリンゴも青いんだねー」


そこから少し離れた所で、ココアは青い木になった青いリンゴを見ていた。


「これ、食べられるのかなー?」


と疑問符を浮かべながら、ココアがそのリンゴを摘もうとした時、


ガササッ


「?」


何か物音がしたので、その手を引っ込めてそちらに顔を向けた。


『オッオッ、オットット』


 物音がした方向――プリンの背後に目を向けると、そこには、二本の長い牙を持った、二メートルくらいのオットセイのような魔物がいた。

魔物は一生懸命枕を洗っているプリンの後ろに忍び寄ると、


『セイッ!!』


と、気合いの入った掛け声と共に、プリンの背中に体当たりした。


「ぴわ――!?」


ので、


バッシャーン!!


プリンは川に突き落とされてしまった。


「――はっ! ぷ、プリンー?!」


何か風景を眺めるように、それを傍観していたココアは、はっと我に返ってそちらに駆け寄った。


『オッオッ、オッオッ』


「あ」


すると当然、魔物の前に飛び出してくる形になってしまった。


『『オッオッオッオッ』』


「やー!! 早く上がって来てよプリンー!?」


何やらやる気満々な、しかもいつの間にか増えている魔物を前に、ココアは川に向かってそう叫んだ。


ザバアッ


「『!』」


すると、


「ククク……呼んだか、小娘?」


「!? こむす―…って、ゴマー?!」


川の中から、枕を持っていないプリン、すなわち、ゴマプリンが現れた。


「ご名答。……? おお」


ふっと口だけ笑ってココアにそう言った後、


「狩りがいがあるな。数だけは」


魔物の群に顔を向け、挑発的な笑みを浮かべた。


「って、何挑発して―…」


『『オオオオーッ!!』』


「―…ほら言わんこっちゃないじゃないー!!」


その挑発に乗り、怒濤のようにゴマプリンに襲いかかった魔物を見て、ココアが突っ込みながら慌てていると、


ピタ


「へ?」


魔物の動きがピタリと止まった。


「……これが攻撃?」


ココアが疑問符を浮かべていると、


「笑わせる」


魔物の攻撃――鋭く長い牙を左手でいとも容易く止めてみせたゴマプリンのどす黒い魔力が、ぶわっと一気に高まった。


「そよ―…」


「! だ、ダメだよ、ゴマプリンー!!」


「―…?」


ので、ココアはゴマプリンの魔法を遮って、


「その魔物、"オット"でしょー?! だから、牙を取るだけで、やっつけちゃダメだよー!!」


と、彼に向かって言った。

ココアは、きちんと課題を覚えていたようだ。


「……。この俺に命令するとはな」


バキイッ!!


『オオオオオオオオ!!』


ゴマプリンはそう呟くと、左手に力を込め、魔物、オットの牙をへし折った。


「いい度胸だ」


バキバキバキバキバキ!!


『『オオオオオオ!?』』


続けてバキバキとオットの牙をへし折っていくゴマプリン。


「い、"いい度胸"……?」


不吉な予感がし、知らず知らずのうちに後退りする、顔が青いココア。


「邪魔だ。微風」


ビュワ!!


 すべてのオットの牙をへし折ると、ゴマプリンは用済みなそれらを向こう岸に吹っ飛ばし、すっとココアに右手を向けた。


「ご、ゴマさん……? 何故右のおててがこっちを向いてるんですかー……?」


引きつった笑みを浮かべながら、ココアが後退りしつつ尋ねると、


「姫を地獄へ招待してやろうと思ってな」


ゴマさんは、邪悪な笑みを浮かべてそう答えた。


「い、いやー、遠慮させていただき―…」


「遠慮は無用だ」


彼はココアの言葉を遮り、


「何せ一瞬で済むからな。テレポ―…」


ドカアアアアアアアン!!


彼女を虚無の彼方へ瞬間消滅させようとしたところ、背後から何者かにぶっ飛ばされた。


「っ大丈夫、ココアちゃん?!」


ゴマプリンが先程立っていた所に現れたのは、黒髪眼帯少年。


「! ポトフ!!」


彼、ポトフの登場に、青くなっていたココアの顔が明るくなった。

そんな彼女に、ポトフはにこっと笑ってみせた後、吹っ飛んだゴマプリンをキッと睨みつけ、


「ココアちゃんを"姫"って呼んでいいのは俺だけだァァァァァ!!」


「いやそっちかよ?!」


盛大に吠えたところ、後ろからミントの突っ込みが飛んできた。


「……プリン、枕を持ってないね」


その後、ミントが倒れているプリンがゴマプリンだと確認すると、


「ミント」


「了解。ココア!」


「うん!」


三人は、ばっちり意志疎通してみせた。


「……ククク……いい度胸だ。貴様から先に消してやる」


「上等ォ、やれるもんならやってみろォ!!」


「川から上がってきた時には枕を持ってなかったよー!」


「分かった……って、川で何してたのさ?」


こうして、ポトフはゴマプリンの相手を、ミントとココアは、プリンの枕を探し始めたのであった。

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