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学校日和2  作者: めろん
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第48回 ほのぼの日和

「パプリカ皇帝?!」


 休日の静かなお昼過ぎ。

謎の皇帝の名前を叫びながら、プリンはガバーッとベッドから飛び起きた。


「はよォーす」


すると、左側から抑揚のない挨拶が飛んできた。


「……」


なんだ夢か、と胸を撫で下ろしていたプリンは、蒼い瞳をぱちくりさせ、


「……熱でもあるのか?」


と、自分に挨拶をしてきたポトフに尋ねた。


「失礼だなテメェ」


元気なく言い返したポトフは、自分のベッドに座って何かを読んでいる。


「む? ミントは?」


そんなポトフに目を向けた時に、ふと気が付いたことを小首を傾げながら彼に問うプリン。


「チロルちゃんに拐われたァ」


ポトフは読んでいたものをパタンと閉じ、再び元気のない声で答えた。


「……。そうか」


だから元気がないのか、とか思いながら、プリンは再び横になった。


「って、いやまた寝んのかよ?!」


ガスコーン!!


「ぴぐわ!?」


 ポトフが突っ込みを入れた直後、何やら硬いものの角がプリンの額の中央に直撃した。


「き、貴様いきなり何をする!?」


「うるせェ! 休日を無駄にするなァ!!」


「無駄――睡眠は必要不可欠で絶対的なものだ!!」


「テメェは必要以上に寝過ぎなんだよ!!」


「まだ十四時間しか寝てないではないか!! と言うかさっきこれの角が―…」


何やら休日の過ごし方と睡眠について言い争っている途中で、プリンは先程ポトフが投げてきたものを初めて見た。


「……。チェス盤?」


白と黒の四角が互い違いに並んだ板を見て、プリンが小首を傾げながらその板の名前を呟いた。


「暇だから付き合え」


すると、ポトフが尊大な態度で彼に言い放った。


「……」


ぽかんと小さく口を開け、彼のことをまじまじと見るプリン。


「……なんだよ?」


茶色い瞳を逸らしながら言うポトフ。


「やはり熱があるのか?」


「失礼だなテメェパート2?!」


何やら不思議な突っ込みを入れてきたポトフを見て、プリンはふっと微笑み、


「さっきまで説明書を見てた奴が僕と勝負になると思っているのか?」


と、言った。

どうやらポトフが先程まで読んでいたものは、チェスの説明書だったようだ。


「なっ――う、うるせェ! 俺にかかればテメェなんか秒殺だァ!!」


「それは貴様がどんなに強くてもルール的に無理だ」


「だァらうるせェよ?! テメェの口にプリン詰め込むぞォ!?」


「喜んで」


「喜ぶなァァァァァ!!」


相変わらず、どうにも素直でない二人であった。











カーカー


 青い空が橙色に染まり、カラスが夕日に向かって飛んでいった。


「今日もとっても楽しかったよ、ミントきゅんV」


おサルさん寮の前でにこっと綺麗に笑いながら、チロルは彼に向かってそう言った。


「……さいですか……」


一方、ミントは何故か疲れ果てている模様。


「送ってくれてありがと」


「!」


何やら魂が出てきてしまいそうな彼の口をつま先立ちで塞いだ後、


「えへっ♪ じゃあ、また明日ね、ミントきゅんV」


両頬を赤く染めたチロルはミントに別れの挨拶をし、おサルさん寮の中へと入って言った。


「……」


「……つま先立ち」


「へ? ――うわあ?! ぱ、パセリ!?」


 ぽけーっとミントが突っ立っていると、おサルさん寮の前の銅像の影から、ぬっとパセリが現れた。


「おのれミント=ブライトぉ……チロルちゃんファンクラブ最大の敵ぃぃぃぃ」


のそりのそりとゾンビのように近付いてくるパセリ。


「い、いや、ファンクラブって、もう解散したんでしょう……?」


それに合わせて一歩ずつ下がるミント。


「俺の中では永久不滅、って言うか」


パセリはそう言った後、じいっとミントの唇を見つめた。


「?」


「……チロルちゃんの唇」


そして呟いた。


「は、はい?」


ぞわっと香る、嫌な予感。

それは、次の瞬間、的中することになった。


「俺によこせえええ!!」


「いや何言ってんのさこの変態いいいいいいい?!」


とんでもないことを叫びながら迫り来るパセリから、ミントは大絶叫しながら逃げ出した。


「待てええええええ!!」


「誰が待つかあああ?!」


「唇よこせええええ!!」


「変態変態変態いいいいい!!」


などと、何やら誤解を招きそうなことを叫びながらウサギさん寮の前までやって来たミントとパセリ。


「!」


すると、ミントのライトグリーンの瞳に、味方二人が映った。


「ミントを泣かせるヤツはァ」


「許さない」


味方二人――ポトフとプリンは、同時にバッとパセリに右手を向け、


「キラキラァ!!」


「神風!!」


と叫び、二人の最大魔法を彼にお見舞いした。


「ああありがとう二人とも!!」


「……照れる」


「あっはっはっ! 気にすんなってェ♪ それより、夕食にしようぜェ、ミントォ?」


「うん!」


「ふふふ、では出発だ」


うぎゃああぁあああぁああと、壮絶な悲鳴をあげてぶっ飛んでいったパセリを綺麗にスルーし、ミントとプリンとポトフの三人は、仲良く夕食を取りに食堂へと向かうのであった。

今回は、ある休日のお話。ほのぼの……でしたでしょうか?(弱気

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