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学校日和2  作者: めろん
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第39回 水溜まり日和

 青い青い空の下。

緑の草原を走る土色の一本道の上を、ミントは独り歩いていた。


「?」


そのまま少しの間歩いていくと、ミントの前方に突然水溜まりが現れた。

 楕円形のそれは、至って普通の水溜まり。

透明な水は、日の光を受けてきらきらと輝き、静かな水面にミントを映す。


サアア……


ミントがなんとなく水溜まりを眺めていると、ふいに優しい風が吹き抜けていった。

それによって、静止していた水面が弱く波打つ。


「……?」


と、思いきや、水溜まりは突然緑色に濁り出し、ブクブクと音を立てて泡立ち始めた。


「ま、まさかこれは―…」


嫌な予感を感じ取ったミントが口を開くや否や、その液体は、


『ウェルカ無抵抗♪』


と言って、彼に襲いかかってきた。


「うわああああああ?!」


「!?」


ガバーッ!!


 ……という、意味不明な夢を、中庭の木の下で見たミントは、飛び起きると同時に目の前にいた人物に抱きついた。


「? ガバーッ?」


疑問符を浮かべつつ、先程の効果音をリピートして、一時冷静になるミント。


「みんとん、大胆……」


すると、彼に抱きつかれた人物、死神が、頬に朱色を走らせながらそう言った。


「うわあ!? わ、ワタル?! いきなり飛び付いちゃってごめんね!? ってか何さそのバドミントンの略みたいなニックネームは?!」


無意識に抱きついてしまったことに気が付いたミントは、慌てて死神から離れた後、謝り突っ込みをかました。


「フッフッフッ。可愛いだろ? みーんとん♪」


「……いや、可愛いだろって言われても―…」


フッフッフッと不敵に笑う死神に、ミントが若干困っていると、


ドサッ……


という、背後で何かが落下した音がした。


「?」


それを不思議に思った次の瞬間、


「――!」


ミントはハッと目を見開いた。

 いつの間に眠りに落ちてしまったのかは分からないが、此処は中庭で、不特定多数の生徒が普通に通る。

そして、自分は先程死神に抱きついてしまった。

すると、背後で何かが落下した音がした。


(こ……このベタな展開はまさか……)


と思いながら、ミントがギギギと振り向くと、


「ひ、酷い……っ!! 俺とはただの遊びだったんだなァ?!」


予想通りの台詞が飛んできた。


「ご、誤解だよ、チロ―…って、いや、なんでここでポトフなのさ?! これじゃあどっちにしたって誤解を生む展開になっちゃうじゃんか!? って、言ってるそばから何泣きながら走り去ってんのさポトフううううう?!」


が、そこに立っていた人物は予想外の人物だったようで。

ミントは今の状況に対して素早く三連突っ込みを決めた。


「酷いわ、みんとん!! オレ様というものがありながら、他にも男がいたのね!?」


ポトフが走り去っていったと同時に、この展開にするりとのってみせた死神と、


「だから違―…あ、やっぱり修羅場シーンだと思った? って、話をややこしくするなあああああ!!」


寝起きなのに、随分と元気なミントであった。















「♪」


『む〜♪』


「……はわー……」


 その頃、プリンとむぅちゃんとココアは、学校の廊下を歩いていた。


「……というのが"風の歌"だ」


流れる風のように美しい低音の歌の一節を歌い終わると、プリンはココアに顔を向けた。


「やー、凄い凄ーい!! プリンってホントに歌上手いんだねー!?」


『む〜!』


そんな彼に拍手を贈るココアと、彼女の頭の上で短い前足を叩くむぅちゃん。


「……照れる」


ココアとむぅちゃんに褒められた為、持っていた枕で顔を隠すプリン。

なかなかのシャイボーイである。

――しかしそれは、自分の視界を遮る行為。


「っラアアァァァァ!!」


ドカアアアアアアアン!!


「ぴぐわ?!」


「って、プリンー!?」


『む?』


よって、プリンの腰にポトフの飛び蹴りがクリーンヒットした。


「ちょ、ちょっと、いきなり何飛び蹴ってるのよポトフー?!」


『む〜』


ココアが謎の動詞を口にすると、むぅちゃんは彼女の頭から飛び降りた。


「くっ……消えたいのか、貴様っ?!」


いきなり飛び蹴ってきたポトフをキッと睨みつけるプリン。


「うるせェ!! 喧嘩売るぞォ!!」


何故か物凄く機嫌が悪いポトフ。


「押し売りは犯罪だっ!」


そうして、例のごとくズカンバコーンと喧嘩が始まった。


「もー……。ん?」


 それに呆れていると、ココアは、むぅちゃんが廊下をちょこちょこと歩いていることに気が付いた。


ちょこちょこちょこちょこ


「やー、カワイ―…」


言っている途中で、むぅちゃんが水溜まりの前で止まったことに気付き、


「だ、ダメだよー!!」


『ひゅむう!?』


両手で持ち上げて、水溜まりから遠ざけた。


『む〜! む〜!』


「水溜まりの水なんか飲んじゃダメだよー?」


手の中でじたばたと暴れるむぅちゃんにそう言うと、


「って、なんでこんなとこに水溜まりがー!?」


ココアは学校の廊下に水溜まりがある不思議に気が付いた。


「?」


すると、


ブクブクブクブクブクブク


水溜まりが突然緑色に濁り出し、ブクブクと音を立てて泡立ち始めた。


「っきゃあああああ?!」


それを見て、思わず飛び退くココア。


「「っ!? ココア?!」ちゃん?!」


戦場の真ん中にココアが飛び込んできたので、ビタッと動きを止めるプリンとポトフ。

その次の瞬間、


ぶくぶくーっ


と、水溜まりから人が発生した。


「『?!』」


固。


「ゲヘヘ♪ とうちゃーく!」


びっくりしすぎて固まってしまった三人と一匹を無視して、水溜まりから現れた人物、ジャンヌは、取り敢えずその場で倒立した。

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